2012年7月31日火曜日

prohibitive favorite  絶対王者たちのつまずき


それにしてもロンドン五輪では本命がふるわない。英語では戦う気が失せるほどの絶対王者を prohibitive favorite   というらしい。すでにサッカーのスペイン、400Mリレーの豪州というprohibitive favorite がメダルを逃した。

そして体操では内村も不調だが、女子ではコマネチの再来と言われた世界王者のウィーバーが予選不調で個人総合への道を断たれたことは米国には衝撃だった。一方水泳の400Mリレーのアメリカは、本命ではなかったものの、体一つリードした米国がアンカーで逆転負けするのはもっともアメリカらしくない展開である。(これでロクテはスーパースターになれない)

さすがロンドン。魔物が住む街の面目躍如だろう。だんだんボルトが負ける気がしてきた・・。

ところで、常勝という意味ではアップルも同じだ。そんななかで本日金融市場ではついにIPHONE5のベールがはがれた。だがIPOHNE4から2年以上たってもあまり外見に差はない。

電話である以上デザインの進化にも限界があると思う。だがソレはアップルには許されないらしい。なぜなら一部の気の早いアナリストは、アップルの時代の終わりの始まりを言い始めた。

アップルは、華麗なイッポンで勝ち続けなければならない日本柔道のような宿命を背負っている・・。

2012年7月30日月曜日

綾を鍛えよ


ryan lochte gold medal



ロンドン五輪は2日が終わり、ナデシコ比べ、盛り上がりに欠けた男子サッカーが躍進、一方金メダルが期待された個人種目はいまのところ惨敗だ。ただこれに違和感はない。日本人として北島の3連覇には期待したが、やはり12年も世界の頂点にいるのは難しい。むしろ実力のピークが過ぎても勝負はできると踏んでここまで調整した北島はさすがだ。一方で実力を発揮できなかったと報道される女子柔道。個人種目で直接相手と組み合う柔道は、圧倒的な差がないなら、平時の実力より「勝負の綾」を鍛えるのが、五輪の実力であることをまたも見せ付けられた。

では勝負の綾をどうやって鍛えるのか、この点日本の選手は不利だ。なぜなら平和の日本では4年に一度の五輪は盛り上がりすぎる。有望な選手への過剰なメディアのカバーが避けられない。そこで選手は悪態をつくわけにもいかず、まじめで若い選手ほど本番で雰囲気に呑まれるのだろう。まあコレも実力。ただ女子柔道はソレ以前に国内を過剰評価したつけを感じる。

一方アメリカの五輪報道で一番驚いたのは、400M個人メドレーでメダルを逃したフェルプスの報道が、金メダルを取ったロクテの数倍あったこと。当日夜の第一声は「アメリカのショック・・」で始まった。コレは日本人にはショック。なぜなら金メダルのロクテもアメリカ人だ。だがNBCのナイトリーニュースは、金メダルのロクテをたたえるより先に、スーパースターの時代が終焉しようとしている衝撃を優先した。

ここにこ米国の本質が出ている。そもそも普通の米国人は、自分が生きる小世界米国は、地球上の国際舞台を支配するのは当前と考えている。そこでは敢えて国威を証明する必要はなく、彼らにとっての最大のスポーツイベントはスーパーボールなどの国内イベント。そんな米国人が五輪で盛り上がるのは米国人スーパースターが活躍すること。つまり個人。これがとにかく金メダルが欲しい日本との最大の違いだろう。米国の五輪のスーパースターは過去2会はフェルプス、その前はマイケルジョンソンだった。

注目されない米国の集団競技はそれはそれで強い。一方でスーパースターはやはりスーパースターだ。ではその中間の日本のトップアスリートたちに日本はどんな「綾を鍛える場」を提供できるのだろう・・。

2012年7月26日木曜日

金融帝国を築いた男(マネー原理プロから)




いろいろな意味で、アメリカに来て一番テーマにした人は、サンデイワイル元CITIグループ会長だった。この人を直接観ることは無かったが、彼の側近が直接の上司だったこともあり、この人のことは詳しいつもりだった。だが今日は青天の霹靂。既に金融界に対する影響力はないとは言え、CNBCで「米国はグラススチィーガル法を復活させるべき・・」と語るワイル元会長からは、あのギラギラした迫力は完全に消え去っていた。まるで別人だった。そして90年代からの米国金融の大きな潮流が変ろうとしていることが、改めて...感じられた・・。

これにはCNBCの二人のホストも目が点だった。彼らはジャーナリストとして会長の豪腕を見てきた立場だ。映画にもなったメールボーイ(ベアスターン)からの大出世。90年代途中からGS買収を試み、それが無理だと判ると矛先をソロモンに変えた。既にその頃からグラススティーガル法の廃止に向け、議会工作を金融界を代表して推し進めた。そして正式にはまだ法律が廃止されていないにもかかわらず、リード会長を説き伏せてのCITIバンクとの大合併。この豪腕を前に、グラスステイーガル廃止を最終的にサインする立場だった当時のクリントン大統領、そして議会から見解を求められたグリーンスパン議長も異論を挟む余地はなかった・・。

この頃の会長にとって、金融大帝国構築(CITIグループ)に向かってゴロゴロと巨大が塊が突き進む過程で道端の石ころだったのが日興証券の買収だった。彼の桁違い野望の迫力は、チマチマとした日本のビジネス慣習しかしらない自分には衝撃だった。しかし実際にその組織を内面から眺めると、会長の野望のスピードに末端組織は全く追いついていない現状を目の当たりにした。恐らく、アレキサンダー大王やチンギスハーンの大行軍の末尾の兵隊も同じ心境だったのではないか・・。

ルービン元財務長官を抱き込み、単独会長就任にむけ、社外取締役工作の鍵を握るアームストロングATT会長を味方につけるため、自社のソロモンのアナリストにATT社の評価を水増しするように命令したとされるのはこの頃だ。ワイル会長の「一緒に引退し、後継者は社外から用いる」との約束を信じたCITIバンクのリード会長は、社外取締役会の決議で敗北した。ここ至る過程では、ジェイミーダイモンの人気を恐れる旧CITIバンクの役員をなだめるため、かわいがったジェイミーを切るという非情な決断。ワイル会長のCITIグループ単独会長の野望はここに完成した・・。

しかし帝国の崩壊は早かった。メリルリンチに端を発したアナリストの不正疑惑が、自社のソロモンまで波及した。同社通信アナリストのグラブマンは元ATT社員。ATTに冷遇されたことを根に持ち、ソロモンのアナリストに転職してからは、ライバルだったワールドコムを常に過剰評価していた実態が、同社の倒産で明らかになってしまった。彼は自分の罪を軽くしようと、ワイル会長からATT評価でプレッシャーを受けたことを、証拠を含めてNY司法長官のスパイザーに渡した。スパイザーはワイル会長に引退を迫った・・。

会長が引退してCITIは大きく変ったといわれる。ちょうどその直前に自分もCITIを辞めていたが、ワイル会長が健在のころは、同社は自己ポジションを膨らませる事は無かった。外からみれば、2004年からのサブプライムブームの中では、たとえワイル会長でもトレンドに巻き込まれただろうという観かたもある。だが自分はソレを信じない。なぜなら上司を通し、部下がワイル会長をどれほど恐れていたかを実感しているからだ。

後を受けた社内弁護士出身のプリンス会長は、現場にすべてを任してしまった。結果的にこの人選が、潮流変化での巨艦の舵取りで手遅れを招いたのだろう。

リーマンショックの直前、市場でのCITI株崩落の引き金を引いたのはメレディスウイットニー。今CNBCではワイル会長とメレデイスは二人並んで座っている。良くも悪くもこれがアメリカである。一方で、米国の金融は逆戻りするとの予想は正しい事に確信をもった・・


2012年7月25日水曜日

病気の巧妙



「怪我の功名」は聞いたことがあるが、添付写真の女性は「病気の巧妙」のような人だ。彼女は、先週の乱射事件に巻き込まれ、体に4発の銃弾を受けた。3発は急所を外れたものの、一発は鼻から後頭部に向けてめり込んだ状態だったという。普通なら致命傷。ところが、病気?が彼女を救った。彼女は脳に体液が溜まるという珍しい先天性異常の持ち主だった。弾丸はちょうどその部分に入り込み、重要な脳組織を傷つけることはなかったという・・.

2012年7月21日土曜日

悲劇と奇跡の狭間


学生時代、シドニーの映画館で封切したばかりのランボー2を観た(85年)。その時だった。突然一番後ろ観客席の男が立ちがあり、おもちゃのマシンガンをぶっ放した。さすがに驚いた。日本ではありえない行儀の悪さに一瞬戸惑った。だが次の瞬間、一緒に盛り上がる観客を見て、ついに外国に来た嬉しさの方がこみ上げてきた・・。

コロラドの惨劇では、観客は最初封切日の出し物だと思ったという。今日の米国はこの話題で覆われた。オバマもロムニーも予定外の出来事に対して無難に立ち回っていた。


個人的にこのニュースで一番驚いたのは、70人以上が撃たれ、死者が12人で済んだこと。亡くなった方にとっては本当に悲劇。しかしその裏では59人が怪我で済んだのは驚くべき奇跡。これは銃社会米国の適応力なのか。そして米国はこのような事件の報道では被害者も加害者にも容赦しない。顔を隠すインタビューなどない。悲しみも怒りも顔を出して表現する。


一方チャンネルを換えて日本のニュースを観ると、大津での自殺に続き、別のいじめを取り上げていた。いろんな人がインタビューに答えていた。だが登場した親の殆どが顔を出していなかった。顔を出し堂々と批判できない社会からいじめが無くなることはないだろう。なぜならそれがいじめ社会の本質だからだ・・。


それにしても、添付した写真の女性ジェシカさんの悲劇は神の存在を疑うに足る。ジェシカさんは、6月トロントで起きた乱射事件(7人が死亡)でその場に居合わせて危うく難を逃れた彼女はこんな気持ちをツィっターに残している。


'I say all the time that every moment we have to live our life is a blessing,' she wrote. 'So often I have found myself taking it for granted. Every hug from a family member.'Every laugh we share with friends. Even the times of solitude are all blessings. Every second of every day is a gift. I know I truly understand how blessed I am for each second I am given.'

彼女はこんなすばらしいことに気づいた。なのになぜだろう。コロラドでMEDIAの仕事を始めた彼女は希望に満ちていた。だが今回銃弾は彼女の命を奪っていった・・

2012年7月20日金曜日

資本主義の原点 (真マネー原理プロから)


マックスウエーバーのプロテスタンティズムの倫理と資本主義の『精神』が、カソリック諸国(南欧)より、オランダ 英国 アメリカで資本主義が発展したのは、規律を重んじ、消費より貯蓄を重んじたプロテスタント(カルバニスト)達が個の富の蓄積をめざすことで、結果的に資本主義の本質が体現された、という解釈でよいなら、今ほど彼が天才であると感じることはない。

なぜなら、事実として米国でプロテスタントの宗教観が後退した今、中間層のいない資本主義がここまで弱点を晒すと、逆説的に彼の考えが正しい事を証明するからだ。それはマックスウエーバーが(資本主義の)成功の象徴として触れた、ベンジャミンフランクリンの13の徳が今この国でどうなっかた確かめれば確認できる。(マックスウエーバーは、1770年代のBフランクリンの教えから、20世紀に入った米国が英国を抜いて世界一の産業大国に発展したのを確認している)


  1. 節制 飽くほど食うなかれ。酔うまで飲むなかれ
  2. 沈黙 自他に益なきことを語るなかれ。駄弁を弄するなかれ。
  3. 規律 物はすべて所を定めて置くべし。仕事はすべて時を定めてなすべし。
  4. 決断 なすべきをなさんと決心すべし。決心したることは必ず実行すべし。
  5. 節約 自他に益なきことに金銭を費やすなかれ。すなわち、浪費するなかれ
  6. 勤勉 時間を空費するなかれ。つねに何か益あることに従うべし。無用の行いはすべて断つべし。
  7. 誠実 詐りを用いて人を害するなかれ。心事は無邪気に公正に保つべし。口に出だすこともまた然るべし。
  8. 正義 他人の利益を傷つけ、あるいは与うべきを与えずして人に損害を及ぼすべからず。
  9. 中庸 極端を避くべし。たとえ不法を受け、憤りに値すと思うとも、激怒を慎むべし。
  10. 清潔 身体、衣服、住居に不潔を黙認すべからず。
  11. 平静 小事、日常茶飯事、または避けがたき出来事に平静を失うなかれ。
  12. 純潔 性交はもっぱら健康ないし子孫のためにのみ行い、これにふけりて頭脳を鈍らせ、身体を弱め、または自他の平安ないし信用を傷つけるがごときことあるべからず
  13. 謙譲 イエスおよびソクラテスに見習うべし。



今の米国では倹約は悪。なぜならそれでは来週市場が注目するGDPを落とす。また訴訟合戦や過度のメデイアの演出、更には麻薬の容認と性行為の多様化など、赤字した部分はコアの価値観として殆ど失われてしまったものだ。ただコレが進化なら資本主義も進化するという考え方が成り立つ。その場合は新しいパラダイムが始まるはず。さもなくば終わりが先に来る。いったいどちらを準備したらいいのだろうか。

2012年7月17日火曜日

平和の祭典の前後

日本はなぜこんなにオリンピックが好きか。一言で言うと平和だからだろう。日頃平和に安住する国民が4年に一度スポーツでナショナリズムを体現する。これは刺激だ。また日本では金メダルが同等に扱われる。つまり「君が代」が世界に向けて流れることに価値を感じている。だが国家の存亡をかけて実際に戦争をしている国、またサッカーが戦争の役割である国。或いは米国のように1896年の近代五輪(アテネ)よりも早くベースボールとフットボールのプロの試合が始まった国では日本ほどの盛り上がりはない。

ただそんな話とは無縁にオリンピックを日本人として堪能したい。それは同じ。だが終わったら、(ちょうどその頃終戦記念日)日本ではもう少し現実的に平和の意味を考えてほしい。オスプレイの配置。原発の今後。あまりにも日本国民は直情的だ。前にも言ったが、自分の力で国防を担うと宣言しない日本がなぜ米国のオスプレイ配置に文句を言う。広島長崎の悲劇を経験した日本が悲劇ばかりを主張し、なぜどのように両市が汚染を克服したかを話さないのか。コレは日本だけが知る成功体験だ。広島長崎がいまだに汚染されていると思っている外国人はそれなりにいる。

結局政治は何を基準に政策を打つのか。俗に言う平和ボケの中、一般からのアンケートでは正論は得られない事もある。リスク管理と危機管理の混同。危機が国家なのか人命なのか。その選択を迫られ場合の優先順位の覚悟を国民に促すのも政治の使命だ。この力技をするのは誰か。避けていては無責任。ただし国民に選ばれなければ政治家は無力。よってある程度メデイアの援護が必要だ。

週末、役所広司が演じた「山本五十六」を観た。この映画のいいところは徹底的にMEDIAを叩いていること。一方的に東条とその周りの成功体験者による判断ミスにせず、当時の世論構成ではメデイアの役割も大きかったこと下品なまでに誇張しているのがいい。日本人は一度失敗すると次は全てを否定する。映画のエンデイングでは、メディアとして戦争を煽った香川照之が、戦争に負けると今度は米国の民主主義を盲信する今の日本を予兆させる役を上手く演じていた。少しでも長く平和を維持したいなら盲信ではなく準備。ロンドン五輪が終わったら、そろそろ前向きな準備を始めよう・・。

2012年7月13日金曜日

ダストボウル 怒りの葡萄(真マネー原理プロから)





日本の雨がアメリカに欲しい・・。最近周りの穀物の専門家からは、1933年から米国中西部を襲った大砂塵(DUST BOWL)の話が聞こえてくる。この世紀の大災害は、リンカーンが施行した移住促進法で、多くの開拓民が中西部に移民したことに起因する。

本来は乾燥地帯。牧草程度しか生えなかったこの地域を穀倉地帯に変えようとした試みで、草がカバーしていた土地は耕されて土がむき出しになった。そこを何十年も連作したらどうなるか。

パサパサになった表面は、干ばつと中西部の強風で大砂塵を生み出した。これによりテキサスからオクラホマの農民は壊滅的な打撃を受け、その多くが経済難民になった・・。

歴史は繰り返すというが、行き過ぎた金融緩和と1920年代の共和党政権下のモラル低下が大恐慌の引き金を引いたとして、実は都会よりも地方でもっと悲惨なことが起こった。

その反動として、戦後から起こった米国の富の再分配は(所得税90%)は、この大天災が大きく影響したといわれている。

そしてこのDUST BOWLがこの国に何を引き起こしたかは、スタインベックの「怒りの葡萄」が参考になる。経済難民となった農民が目指したカリフォルニアでは、資本家と銀行が彼らを餌食にした。

1940年、あのジョンフォードが、ジョンウエインではなく、ヘンリーフォンダと組んで撮ったこの映画は、今見てもアメリカ映画では珍しいイタリアンプロレタリアートの香りがする。

リーマンショックから4年、大統領選を控え、天変地異の危険性と今の社会現象を考える上で、現代の金融マンにも必見だろう・・。

2012年7月12日木曜日

ロンドン五輪の日本の金メダルは8個



ロンドンで日本の金メダルは8個。メダル総数は26・・

これは米国の証券会社ゴールドマンサックスの予想。ゴールドマンがスポーツイラストレートを差し置いてずいぶんと大胆な予想を出した。ただこれはスポーツの専門家が精査した予想ではない。北京五輪の結果にその後の各国の経済成長を加味したモデルからの予想らしい。

経済力(国力)とオリンピックのメダルの獲得数がある程度比例するのは実証済み。ただ一見では、金融市場でぼろぼろに言われるラテン系欧州が過大評価だ。

その一方でドイツが過小評価。また日本に比べ韓国の評価がいい。これは、第二次世界大戦後の構図を引きずっている?まあ日本にかんしては、正直こんなものかと思ってしまう。


2012年7月11日水曜日

おめでとう バーニー



昨日で米国の金融改革法案(ドットフランク法)は誕生から2年が経った。写真はその法案の生みの親、バーニーフランク議員の結婚式の様子。今年で72歳、既に議員引退を表明している彼は、47歳の大工さんと週末に結婚式をあげた。

正式に同性愛結婚を認めている州はまだ少数。当然米国の議会史上正式に同性愛結婚をした議員は彼が最初。彼のことは何度も取り上げたが、彼ほどの大物政治家が、特異な性的嗜好を隠さないのがいろんな意味でアメリカである。

バーニーはリーマンショックの時、下院の金融委員会の議長だった。この役割は凄まじく大きい。議会が不祥事を追求する際の証人喚問や、公聴会のさじ加減は、彼がすべて握った。

また当時は彼個人に対する批判もあった。中には問題の中枢だった住宅公社ファニーメイの重役と特殊な関係だったとするものもあった。それでも救済法案(TARP)を通し、その後は上院の金融委員長だったクリスドット議員との連盟で膨大な金融改革法案を成立させたバーニーの力技はさすがだった。

さて、その金融改革法案も本格的に施行するにはいまだ手探りの状態が続いている。そんななか、JPモルガンの損失や、バークレイズのユーロダラー金利をめぐる不正など、相変わらず金融をめぐる不祥事が続いている。

一方で日本では再び証券会社のインサイダー事件が大きく取り上げられている。個人的にバブルの末期1988年に日本で証券マンになり、その崩壊と同時に米国に来て、93年からは米国のバブルの構築からリーマンショックまで全部見た。

ここで主観的に日米の今の違いを言うと、バブル構築は日米ともに金融期間と当局の合作だが、バブル崩壊後の両者の関係は全く違う。米国では表向きは金融危機の元凶となった金融機関に厳しく対処したことになっているが、当局は実際は彼らの手足を縛ることはしなかった。一方日本はバブル崩壊から20年が過ぎても当局は金融に厳しいままだ。

これは日本だから可能なのだろう。日本は金融が派手なことをしなくてもやっていける貿易立国。だが米国は金融資産をインフレにしなければ全員が死滅するキリギリス国家。だから金融を縛るさじ加減が違うのは自然だ。

ただこのままずっとその方向でいいのかは疑問。米国では金融機関の縛りがもう少し必要だろう。一方日本では金融のリスクテイクにもう少しゆとりがあってもいいのではないか。そのためにはやはり銀行と証券の区分け必要かもしれない。

いざとなれば救済が必要な銀行はあくまでも銀行。当局はそれでよい。一方で証券はリスクをとってナンボの世界。よって失敗は救うべきではないが、区切りをつけた後は再び協力して市場を盛り立てる幅は米国の25%ぐらいあってちょうどいいはずだ。(日本のGDPは米国の半分、更に金融のGDPはその半分と想定して・・)

昨今の野村の関係者の不祥事は可視出来ないが、それでも日本の証券のリーダーたる野村の復活は国益にかなう。野村が早く区切りをつけて、出直すことを個人的には期待している・・。

2012年7月10日火曜日

ポーカーをしないポーカーフェイス


ポーカー選手権の決勝が始まった。決勝に先駆けて、金持ちやスポンサー資金を持参した40人によるバトルがあった。そこでには若手ヘッジファンドマネージャーとして最も影響力があるとされるデービットアイホーンが参加した。3位だった。彼以外にも、ヘッジファンドとポーカープレーヤーの重複は多い。ポールアイカーン ジムサイモン ケングリフィン スティーブコーエン等、1兆円前後の資産を持つビックプレーヤーがズラリ。そしてポーカーゲームを若手の訓練に取り入れている中小のファンドもかなりある。

一方で今回も参加者に日本人はいなかった(アジア系はいる)。やはり日本人にポーカーは難しいらしい。しかし人前で派手な感情表現をしない日本人はポーカーフェイスともいわれる。ポーカーをしないポーカーフェイス。なんという皮肉。麻雀だけでは世界に勝てない・・。

そういう自分はポーカーも麻雀もやらない。ただ最近はポーカー中継を見るようにしている。気づいたのはポールニューマンのイメージは間違いだった事。彼が「スティング」でやった4カードは現実的ではない(そもそも映画はいかさまの腕が勝負)。今はメジャー大会の多くがテキサスホールデム方式。このルールはより心理戦の様相が強い。

ルールはまず2枚配られ、その時点で続けるか降りるか決める。続いて3枚がオープンで配られる。これをコミュニティーと呼ぶ。この方式ではコミュニティカードはプレーヤー共通。残ったプレーヤーはここで掛け金を増やすか否かの判断をする。ここからが心理戦。そして3枚が配られたあと1枚づつもう2回配られる。勝敗は手持ち2枚とオープンで5枚配られたコミュニティーの合計7枚の中から5枚のハンドを競う。オープンになっている最初の3枚で相手が何を狙っているか。また自分が狙う手は残りの2枚のコミュニティカードでくるか。その判断をする。この時相手の真理を探る勝負が面白い。この醍醐味をYOUTUBEで解説する。
ここではファイル:Playing card diamond 2.svgファイル:Playing card club A.svg を持ったアイビーが(黒人)、ファイル:Playing card club J.svgファイル:Playing card club 5.svgファイル:Playing card diamond 3.svgのオープンカードを見て、12345のストレートを狙った。そして狙い通り4枚目に ファイル:Playing card heart 4.svg手が来た。アイビーは世界最高といわれるプレーヤー。自信もあったのだろう。狙い通りのカードが来たことで1億円のオールインをした。ところが相手の2枚のカードは ファイル:Playing card heart 6.svgファイル:Playing card heart 7.svgだった。相手もストレートを完成していた。そして相手は自分よりビッグナンバーだった。彼はすべて失った・・。
ここでは思い通りフルハウス担ってオールインをしたところ、自分よりよい手になった相手のポーカーフェイスに騙されたケース。
http://www.youtube.com/watch?v=fiNYtI_eWp0
これは昨年の選手権決勝。ともにワンペアも出来ないなか、心理戦に負けたケース・・。


いつかここで日本人が勝つ日が来るだろうか。その時の日本が今よりよい国になっているかどうかはわからないが・・。

2012年7月8日日曜日

空しい貢献

http://youtu.be/LTCwgvwrzOY


鳩山首相の時、米国の要請でアフガニスタン支援に日本は5000億円の資金を提供をした。2年前、米国がその金を使うとした記事をワシントンポストに見つけた。このブログではそのことを触れたが、取り上げた日本のメディアは皆無だった。

震災復興も半ばの今、日本は今回も2500億の約束。それはいいとして、日本に金を出させるために日本で会議を開いているのはみえみえ。また日本は米国の言うとおりアフガンにまた金を出すのが空しい。

国民はコレで増税をするという民主党政権に何も言わないのは不思議だ。もしかしたら、やはり何もみえていないのか・・。 


米国にとってアフガン戦争は11年目だ。いつの間にか米兵の死者も3000人に迫った。ソ連の轍を踏まないため、オバマは2014年に完全撤退を表明した。ただこのまま撤退しては、2003年、「敵はフセインのイラクではなくアフガンだと訴えた「オバマも格好がつかない。

そしてパキスタンもアフガンも表向きは米国に協力。だが先週も米国が訓練したアフガン兵の多くがタリバンに寝返ってしまった。やはり皆が米国が嫌いなのだ。

米国はこの戦争を負けている。そんななか、戦争が無駄ではなかったというパフォーマンスは必須。添付したHBOのドキュメンタリーは、その演出と現実の両面を隠さない・・。

一方で日本は真にアフガンに尽くしている。農業支援の青年がタリバンの銃弾で死んだのは記憶に新しいが、あの中村医師によるペシャワールの会の貢献は頭が下がる思いだ。

この日本の貢献を、日本人自身がもう少し意識したほうがいいのではないか・・。

2012年7月4日水曜日

日本をHangせよ(真マネー原理プロから)

それにしても、オスプレイの配置さえ拒む日本が、ロシアの北方領土占領にいろいろ言っても、実際問題それは客観的には滑稽。これを滑稽と感じない日本には、これから中国 韓国 ロシアがどんどん攻勢をかけてくる事を覚悟しなければならない。

そんななか、代替案も用意せず、プーチンに何かを期待するのもこれまた滑稽。頼みの米国は今回は韓国の日本海の固有名詞改正要求をやんわりかわしたが、このままでは韓国の強い思いが米国を動かすのも時間の問題だろう。

その米国は独立記念日を迎えた。そこで日本が米国に学ぶ事を期待し、ベンジャミンフランクリンの有名な「We must indeed all hang together, or, most assuredly, we shall all hang separately」の檄文を紹介する。

彼は八つ裂きにした蛇の風刺画に「JOIN OR DIE」のタイトルをつけて米国の独立運動を鼓舞した。そしてこの時ベンジャミンフランクリンはHangを逆の意味で使い分けている。

hang togetherは団結するであり、hang separatelyは敗北して一人一人が吊るされるの意味だ。まさにJOIN OR DIE。(訳:団結して本国に立ち向かわなければ、バラバラにされて吊るされるだろう)’

元来日本は団結は得意。だが今の日本では外に向く団結はサッカーと五輪。それは平和国家の日本の理想として、ではそうではない(平和第一ではない)世界の現実にはどう立ち向かうのか。

その答えが米国頼みしかないならオスプレイ配置に文句を言っても仕方ない。(自分は米軍沖縄駐留反対派。念のため)このままでは日本がどちらのHANGになるかはいうまでもない・・。


 レター1 <官僚たちの夏、その2>

ドイツ最高裁が政治の合意を打ち消すかもしれないという。三権分立。もしそうなれば、今がどんな時代かがよくわかる。金融危機後、民主主義と資本主義(自由経済)の両輪は、中間層が消滅していく中で脱輪状態になるとずっといってきた。理由はその事例が戦前にあったからだ(ワイマール)。

人は何も決まらない中で疲弊することにいずれ耐えられなくなる。そうなると民主主義の代弁者の政治家は弱い。民主主義のシステムの中で十分にヒトラーは生まれた。つまり戦後に生まれた我々がラッキーだったのは、民主主義のシステムではなく、実は経済だった。ならば経済が疲弊していく今、その事を改めて感じるはずだ。ではそのときに人間は政治に何を望むのか。よく考えておかないとまた同じミスを犯すかもしれない・・

ただ今はその前段階として、どうやら日欧では官僚経験者が更に力を持ち始めている。先週の欧州会議で結果を出したのは、民意で選ばれた政治家ではないモンティの知略。そしてECBのドラギは、ガイトナーが今日のNYTIEMSで「彼以上の優秀な官僚はいない」と褒めちぎっている。米国はドラギにグリーンスパンのようになってもらいたいと考えている(個人の指導力発揮)。

ただドラギはグリーンスパンやトルシエのように、会議で先に自分の考えを言うことはせず、まずは周りに発言させ、最終的に自分の考えに近づける知略に長けている人らしい(NYTIEMS)。この手法はバーナンケと同じだが、ドラギの顔つきはバーナンケより肝が据わっている。
いずれにしても、選挙で選ばれる政治家が臆病になれば官僚的能力のある人が仕切るのは自然。ただ財務官僚の正論に大事な政治生命まで賭けしてしまった野田さんをみて少し残念。個人的にはあのキャラクターは好きだっただけに、政治生命をかけなければならない重要局面はもっと後に必ず来るという相場観がほしかった・・。


2012年7月2日月曜日

エコノミスト誌のいいなり?

ユーロ2012が終わりいよいよロンドン五輪。今週のエコノミスト誌は「イギリスという国は凋落したが、ロンドンという街は価値を持ち続けている。ニューヨークとロンドンの外国人比率は粗同じだが、ニューヨークの移民は雑居ビルに住み、アメリカでの成功を夢みているのに対し、ロンドンには金を持った優秀な人間が世界を相手にビジネスをするために集まる・・」としている。

ロンドンは専門ではないが、米国に住む日本人から見ても同感。そしてふと浮かんだのは野田首相だった。週末、読売のWEBは、野田首相がここまで増税にこだわるのは、エコノミスト誌が「日本化」を取り上げたことがきっかけだと紹介した。その予感はあった。そこでそのエコノミスト誌の表紙を再び添付した。この号が出た2011年の7月、野田さんは財務大臣だった。

ずばり。金融市場から日本を攻める場合、まじめな野田さんはヘッジファンドにはありがたい。むしろ時より乱暴な一面を見せる安住大臣は嫌だろう。ただ野田さんの考えは正論。達成できたらすごい。だが実際は殆ど場合で正論では動かない。駆け引き。そのいい例が先週は欧州であった。

先週は借金の大きいイタリアが、その借金を人質にとり、ドイツの正論を押し切った。裏にはメルケルが欧州首脳の中で、“政治家ではない”モンティだけは信用していた話がある。(メルケルはモンテイが昔GEやマイクロソフトの米国による欧州支配を食い止めた行政能力を高く評価、今の彼女の経済補佐官には当時モンテイの部下だったドイツ人を採用・・。つまりドイツは老獪なマリオと野獣のマリオ(サッカー)に屈した・・ NYTIMES)

日本は英国からいろいろ学んだという意見があるが、個人的にその印象はない。日本はいまだ善人が正しい判断を下し、悪人は常に悪い事をするが前提だ。ではヘンリー8世をどうするのか。もし野田さんはエコノミスト誌に影響されたなら、その雑誌の国(ロンドン)を繁栄に導いたこの国王の非常識をどのように評価しているか聞いてみたい。