2014年6月27日金曜日

レター抜粋 ボラ低下の正体 心地よい経験値のねじれ

  6・26  レターより

           

          


100年前の今日、第一次世界大戦と、その後の大戦争(第二次世界大戦)の引き金になったサラエボ事件が起きた。添付写真は 暗殺される直前のオーストリア皇太子夫妻。

この二つの戦争で、1億人の人が死んだとされる。当時の世界人口は20億弱。正直よくもこんな馬鹿なことをしたのものだ。ただし大戦の死者はキリスト教文化圏とアジアに集中している。この戦争に懲りた人々は、しばらくはそんなことはしないだろう。

一方で世界大戦の大虐殺に巻き込まれなった中東は、今人が簡単に死んでいる。彼らも避けられない人間の愚かさの過程・・。

人口動態上、先進国はこの大戦を経験したGIジェネレーションが消えつつある。今中心はその子供たち。だがジェネレーションと世相の変化を歴史的に検証した4THターニングでは、悲惨を経験したGIの孫の世代になると、人間は再びおかしなことをするかもしれない特徴をもつという。

ソレをわかった上で、政治経済の舵取りをどうするか。戦争があろうがなかろうが、政治経済はいつもある。政治経済のヘッドラインが生み出す市場のボラは、受け止める側の経験と想像力が決める。

今の市場参加者は、ここの経験値にかなりのばらつきがある。ただしこのばらつきは、結果的にボラ上昇を抑えるゴールデイーロック状態を生んでいる。3月のウクライナ・ロシア問題で暴落したロシア株は、昨日で完全に戻してしまった・・。

そんな中、個人的に一番のワイルドカードだと感じるのはマザーネイチャー。いくら過去を学んで未来を見据えても、人間はその正体を知るには小さすぎる・・


< 6・9 レター ICEの時代のはじまり >


                   
       ニューヨーク証券取引所の新しい会長になったトム フォレイ氏
              
           
             ICE会長 ジェフ スプリッシャー氏


日本では経団連会長の交代が話題だが、世界では全く違うレベルの変化が起こっている。

添付写真の若い男性はトム フォレイ氏。若干38歳。彼は長い歴史をもち、世界の資本主義を支えてきたNY証券取引所のトップになった。

一方年配の男性は、ジェフ スプリッシャー58歳。今やそのNY証券取引、ユーロネクストなどのを傘下に持つICEIntercontinental Exchange Group)の創業者兼CEO である。

伝統的にメンバーによって有機的に運営されていきた旧来の取引所が、GS等の巨大金融機関が後ろに控えるにグローバルクリアリングハウスの下で、完全にInstitutionalizedされてから十分時間が経った。そこでNYSEの代表も、相場をフロアーで経験した兵や、丁稚から9・11で活躍した
グラッソーなどを経て、ついにMBA型の若い世代になった。

そこで、14年前に始まったICEが、オーナーとしてどうやってここまでの存在になったのか整理したい。始まりはレーガンブシュ時代。90年代初頭の電力自由化である。

この法律改正で発送電分離が州によって自由化され、野心的な投資家が電力産業に参加した。
起訴されたまま亡くなったエンロンのレイ会長は、レーガン・ブッシュを巻き込んで自由化の実現させた中心人物。ウイスコンシン出身のスプリッシャー氏もそんなレイ会長の後を追うビジネスマンだった。

彼は90年代後半にただ同然でICEの原型となるアトランタの電力会社を買収。そこからエンロンとの激しい競争が始まった。

最初はエンロンが圧倒したが、テキサスから西海岸にかけてのエンロンに対し、アトランタから東海岸に強いICEには、GSとモルガンスタンレーというWSが後ろについた。

このあたりは、南北戦争後に現在の原型ができた、都会の金融主体の民主党と、農村の保守感覚とテキサスの軍事 エネルギーのビッグビジネスの共和党の構図に似ている。

個人的にはこのことと、エンロン崩壊は無関係かどうか疑問だが、ライバルのエンロンが消滅したことで、ICEは一気にその地位を固めた。そして、既存のCBOT・CMEに一気に迫ってきた。

一方世界中の取引所が株式会社化され上場されたことで、取引所同士の熾烈なM&A合戦が展開されたご存知の通り。

中心的存在のはずのNY証券取引所が、欧州政治のよこやりで合併に失敗すると、金融危機後の株式出来高の低下もあり、株価は低迷した。

旧来の株の出来高に頼るNYSEの株価は20ドルそこそこだったのに対し、エネルギーと商品を、WSの資本とグローバルネットワークを使いながらデリバテイブに特化したICEの株価は優に100ドルを超えていた。

ICE創業者のスプリッシャー氏は、GSやモルガンスタンレーのパペットという人もいるが、彼はエンロンとの競争でワシントンのFEDを味方につけたあたりは只者ではない。

いずれにしても、株価世界経済をEQUITYの力で発展させてきた中心のNYSEが、そのEQUITYの力の差で新興に飲み込まれた。

本来HFTの問題は、このような時代の変化の中で語られる事案。さらには、現物株の出来高の長期低下傾向の裏で、ETFやVIX先物などデリバティブのボリューム増加している。

それが今の金融市場のVOLA低下の要因なら、(個人的にはそう考える)
ICEの時代の到来は、債券関係者にも無関係ではない・・。








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