2008年11月4日火曜日

生殺与奪の権限

実質大半が脳死状態に落ちた米国金融機関に対する救済策。どの銀行に資金を入れ、どこには入れないか。その判断は財務省が任命した救済策の担当者にゆだねられる。即ちこの担当者にはその「生殺与奪の権限」が与えあられた事になる。本日のNYTIMESには中心となる5人のメンバーのプロファイルが載っていた。ただ先週彼らが行った第一弾の資金注入は議会の間で評判が悪い。例えばバーニーフランク。彼は紛糾した法案設立の過程で政府と議会の間を奔走、ポールソンを助けた。しかし不良債権の買い取り案が突然資金注入案に変更した際、財務省は金融機関のボナースパッケージに手をつけなかったことに憤慨して今は救済案の第二弾には反対票を投じる事を示唆している。要するに米国は金融危機に落ちた過程での脆弱さもさることながら、この危機から立ち直るプロセスにおいてもかつて我々の世代ががハリウッド映画を通して信じてきた「正義の味方、不死身のヒーロー」といった米国の象徴は何処にも感じられないのである。

その失望感を前提に先日報道されたNHK特集の日本とアメリカの第二弾をみると、NHKの報道の意図は全く理解不能である。ワシントンの日本大使館のスタッフが次の政権に備えてオバマ/マケインのアジア(日本担当スタッフ)から情報を得るために奔走する。そこで次々にぶつけられるのが日本の役割に対する未来の政権スタッフによる脅しにも近い強要である。特に共和党政権下のスタッフは中国の台頭を引き合いに出して日本は国際社会から忘れ去られると何度も強調していた。一方民主党の未来のスタッフは、オバマが世界に対する米国の態度を改める事を示唆している事に合わせ、米国の力の低下を素直に認めて日米関係強化を紳士的にアプローチしている。

そこで気になったのはNHKの報道がオバマ・マケインどちらの政権になっても日本は米国に強調しないと大変な事になると圧力をかけるような内容になっている点だ。ただ冒頭の金融機関の救済案の顛末からも、今の米国は日本が盲目的に追随しなければならない絶対性は既に無いという見地を日本は持っているだろうか。持っているのは米国である。だから彼は必至なのだ。共和党はこれまで通り単純なアプローチで直言し民主党は柔らかいが老獪である。いずれにしても今の米国は日本が戦争で負けたあの米国ではない。今の米国は日本に対して「生殺与奪の権限」の剛腕はもっていない。ただ現状の国際政治の相対性からも日米関係が軸である事にだれも異論はない。しかし米国に脅される時代は明らかに終わった。幸いNHKの報道の仕方とは裏腹に、大使館の外務省スタッフの発言には冷静に日本の国益と米国との距離を測る意図が十分感じられた。

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