2010年10月31日日曜日

顧客レター抜粋(特別号)

 <ロストボール> 11/03

決戦は終わった。民主党のナンシーぺローシ議員に代わり新しい下院議長になるBOEHNER(ベイナー議員)はこれまでの強面が一変、圧勝の感激で泣いていた。これからしても今回の共和党は、ギングリッチが率いた94年の共和党よりもソフトだ。私自身覚えている。94年、上下両院を取り返した共和党は勢いがあった。翌年にはクリントン政権に医療費や教育費等も含め、問答無用の財政削減を迫った。そしてのらりくらりのクリントン政権に業を煮やしたギングリッチは強硬策に出た。暫定予算を認めない事で公共サービスに直結する政府機関を2度に渡りシャットダウンしたのだ。これには国民も怒った。

そもそも94年~95年はクリントンの最初の不倫と、ヒラリーの先物業者レフコを使った不正蓄財事件が発生。何よりもSAVING&LOANを舞台にしたホワイトウォーター事件では、現職大統領の側近が不可解な死を遂げ(自殺扱い)、クリントン自身がアーカンソーでの弁護士資格をはく奪されるというスキャンダルの極致だった。それにも関わらず景気回復の波に支えられたクリントン政権は、ギングリッチの強硬策に対する国民の反発も手伝い長期政権への軌道に乗ったのである。

そういえば、ゴルフのティーショットを右の池に入れてしまったアマチュアは、次は必ず左の林にOBをするものだと予想したのはバフェットである。三打目となる今回の選挙は、もう一度右の池に入れるか思いきや、上院は民主党が死守した事でボールはなんとか右のラフに納まった印象だ。これは民主党にとって実は上出来である。なぜならクリントン政権の最初の2年もオバマ政権と同じく上下両院を民主党が押さえてのスタートだったが、クリントンは公約だった健康保険法案を成立させる事が出来なかった。その点でオバマ政権は金融危機でTARP法案、そして起死回生の健康保険法案、更には金融改革法案の3大重要法案を全て成立させた。ならばこの中間選挙ではこの反動がもっと出てもはおかしくなかった。それを民主党上院は踏みとどまった。

いずれにしてもこれでクリントンの院政は確定した。なぜならオバマ政権と民主党は、94と95年の危機を乗り切ったクリントン政権をお手本にするしかないからだ。クリントンは更に調子に乗るだろう。だが米国人がしならない根本的な事実がある。ソレは90年代と違い、この国の自律成長は既に終わっていると言う事だ。今の共和党はこの事実を認めていない。

この選挙結果を受け早速PIMCOのエリアリアンが同様の不安を述べているが(下の英文)、ギングリッチの代わり、TEA PARTYという波乱要因お抱えた共和党が94年と同じ間違いを犯せば、三打目のショットはラフの中で「ロストボール」となろう。暫定球を打たず、その場所まで行ってからのロストボール宣言は、ペナルティーとしては最悪である・・。

(ワシントンポストのエルアリアン氏の寄稿)
With the two chambers of Congress split between Democrats and Republicans, the conventional wisdom likely to be repeated over the next few weeks is that political gridlock is good for the economy. While often true, that is not the case today. Such thinking is based on the view that political gridlock inhibits or paralyzes economically unproductive government actions. With government out of the way, it follows that the private sector can allocate capital to the most productive uses. But this view is most applicable to a private sector that is in good shape - businesses and households with robust balance sheets, positive cash flow and access to credit. In such a world, the path of least resistance translates into higher economic growth and jobs. Today, many large companies and rich households are in a good position to move forward. They have the means to spend and hire. Yet they lack the willingness to do either, as illustrated by massive cash holdings and widespread efforts to reduce risk in balance sheets and investment portfolios. Many of these companies and households explain the divergence between their will and their wallet by pointing to regulatory and tax uncertainty, the absence of a clear macroeconomic vision, and the notion that the Obama administration is "anti-business." They have a point in complaining about what economists call unhelpful "regime uncertainty." Moreover, many believe that political gridlock is preferable to what they perceive as misguided government activism of the past two years. Yet this ignores a glaring reality. For too many segments of our society, the ability to spend and hire is constrained not by questions of willingness but, rather, by stubbornly high unemployment, annihilative debts and, in some cases, concerns about losing one's home. As a whole, the United States is still overcoming the legacy of years of over-leverage and misplaced confidence that consumption can be financed by borrowing rather than earnings. The resulting debt overhangs act as strong headwinds to growth and employment generation. This world speaks to a different characterization of private-sector activity - rather than able and willing to move forward unhindered if the government simply gets out of the way, this is a private sector that faces too many headwinds. In these circumstances, high economic growth and job creation require not only that the private sector moves forward but also that it attains critical mass, or what Larry Summers, the departing head of the National Economic Council, called "escape velocity." While certain sectors of the economy are in control of their destinies, the private sector as a whole is not in a position to do this. It needs help to overcome the consequences of the "great age" of leverage, debt and credit entitlement, and the related surge in structural unemployment. The urgency to do so increases in the rapidly evolving global economy, as United States sheds a bit more of its economic and political edge to other countries daily. Simply put, these realities make it necessary for Washington to resist two years of gridlock and policy paralysis. Democrats and Republicans must meet in the middle to implement policies to deal with debt overhangs and structural rigidities. The economy needs political courage that transcends expediency in favor of long-term solutions on issues including housing reform, medium-term budget rules, pro-growth tax reforms, investments in physical and technological infrastructure, job retraining, greater support for education and scientific research, and better nets to protect the most vulnerable segments of society. Success requires an element of policy experimentation as well as confidence that mid-course policy corrections will be identified and undertaken on a timely basis. And such efforts must be wrapped in an encompassing economic vision that acts as a magnet of conversion nationally, counters growing international frictions and facilitates much-needed global economic coordination. This is not an easy list. It will be difficult to translate today's political extremes into a common vision, analysis and narrative. Yet the longer it takes to do this, the greater the effort needed to restore our tradition of unmatched economic dynamism, buoyant job creation and global leadership.

Mohamed A. El-Erian is chief executive and co-chief investment officer of the investment management firm Pimco and author of the 2008 book "When Markets Collide."




ブログの読者の皆様に、ブログ改良の暫定処置として、ブログを更新しない間の顧客レターを以下に紹介します。

<初代財務長官の役割>10/21

アレキサンダーハミルトン。映画「ウォールストリート2」のシーンで、リーマンの倒壊前夜、ブランクファインやジェイミーダイモン(ゴールドマンとJPモルガンの会長)などWSのトップが、ポールソンとガイトナー(当時の財務長官とNY連銀総裁)を交えた緊急会議を持つシーンがある。そのシーンで監督のオリバーストーンは、壁に飾られた肖像画をさりげなく映す。それが米国の初代財務長官アレキサンダーハミルトンである。

ハミルトンは現在流通する米国紙幣の中で10ドルの顔という重要な役割。(100ドル:Bフランクリン、50ドル:Uグラント 20ドル:A ジャクソン 10ドル:A ハミルトン 5ドル:Aリンカーン 2ドル:Tジェファーソン 1ドル:Jワシントン)。米国紙幣の顔の殆どが歴代の大統領の中、大統領になっていないが紙幣に選ばれたのは、米国の国是を決めたBフランクリンとこのハミルトンだけである。

この事実からも、彼が米国史でどれほど評価されているかがよくわかる。だが、現在の共和党保守からすれば彼は諸悪の根源でもある。なぜなら、ジョージワシントン、ベンジャミンフランクリン、トマスジェファーソン ジェームスマディセンなど、日本の小学生でも知っている建国の父が反対する中で彼は初期の中央銀行を強引に造ったからだ。

ハミルトンが後見役のワシントンさえ敵に回しても紙幣の流動性の重要性を強調した背景を、現在ロンポールを支える保守派集団は、米国憲法の骨子作成やモンロー主義などの彼の優れた先見性を認めつつ、大局において彼の小賢しさは米国が引き続き欧州の支配を受ける切欠になったとしている。そして今のガイトナー財務長官を見ていると、彼はハミルトンの良い面と悪い面のせいぜい100分の一程度を演じている様に思える・・。

<戦場での殺人罪>10/22

今米国にとって最も大事な国の一つであるパキスタン。アフガン戦争の最前線でもあるそこで、米軍とパキスタン国家の亀裂は日に日に深刻になっている。そんな中でパキスタン軍の一部隊が非武装の住民を虐殺した事が判明、戦時中の同盟関係にありながら、米軍はその部隊への協力と資金援助を止めるという異例に事態に発展している。

チャンプリンではないが、そもそも戦争でヒーローと殺人者をどう区別するのかは疑問だ。その証拠に米軍はイラクとアフガンで誤爆を繰り返しながら、TVゲームの様な爆撃の操作を担当した米兵の起訴の話は全く聞かない。そんな中、昨日は殺人罪で起訴されていた民間の戦争請負企業、ブラックウォーターの社員が無罪放免になった。理由はFBIが何度もイラクへ足を運び現地調査をしたが、殺人罪を立証する確定的証拠が集まらなかったと言うモノ。

被告は初めから殺人を認めていたが、正当防衛を主張していた。今年のアカデミー賞映画「ハートロッカー」では、主人行が所属する正式部隊と、「ブラックウオーター」とおぼしき民間戦争業者が共同で戦う場面がある。やっている事は変わらない。映画は米兵の苦悩と「雇われたゴロツキ」のブラックウォーターの違いをうまく演出していた。そして戦死すれば見舞金から何もかもが国家のルールで丁重に迎えられる正式兵と、ゴロツキを同じ戦場に送り、勝手な都合で使い分けているのは米国自身だ。ならば、正式な軍法がないブラックウォーターを前線での殺人罪で裁くなど、最初から矛盾している。

矛盾だらけの戦争。それはイラクもアフガンも変わらない。元々フセインの頃のイラクも、9・11以前のパキスタンとアフガンにも戦争はあった。だがそこに米国入り、新たな矛盾が生まれた。昨日ホワイトハウスは来年1月のオバマのパキスタン訪問を発表した。アフガンに強くコミットしているオバマの初めてのパキスタン訪問。それだけ米国にとってパキスタンは重要であるというメッセージだろう。だが、この訪問で関係が好転するとは思えない。寧ろ、オバマを2004年から注目してきた立場として警告したい。この訪問は辞めた方が良い・・。

<自明の理>10/24

仕事なので一日中見ているが、今は当前のごとく支配されているCNBC(金融/市場専門番組)からの情報は、20年前はなかった。その時代、金融機関のトレーデイングルームでさえロイターのテロップが流れるだけ。皆が情報に飢え、そのスピードを競った。だからインサイダーに価値があった。それが87年の映画ウォール街の時代。そういえば今の相場ではインサイダーと言う言葉も死語に近い。なぜなら、1秒間に何千回ものトレードが可能になったハイフリークエンシーのシステムトレードが全体の7割を占め、また相場の方向性は、国家が救済方針を打ち出してからは本当は迷う必要などない(つまり社会主義政策)。 政府の言う通りやればよいのだ。では現代において情報は一体何を競っているのか・・。

そんな中、今日の膨大なヘッドラインで個人的に注目したのは、デトロイトで行方不明になていた銀行家が、処刑スタイルで頭を打ち抜かれ、その死体が湖に浮かんでいた話。この記事を見て思い出したのは、60年代後半西ドイツを震撼させたドイツ赤軍。切欠はベトナム戦争を批判する西ドイツの学生が、ニクソンの訪独に反発して起こしたデモだった。この動きに感化された当時のドイツの若者がテロ組織を造り、日本赤軍に習ってレッドアーミーを名乗った。そして、中東紛争にも加わりながら、本国では銀行家や経団連会長を次々に誘拐して暗殺した。

再び世界経済の優等生に躍り出たドイツ。だが彼等にもそれほど遠くない昔にこんな歴史があった。そして今、この米国を見て感じるのは若者の変化だ。昨日添付したYOUTUBE。2030年に中国の属国と化した米国を笑止する北京の中国人大学生の授業風景。このYOUTUBEを横でトレードをしている20~30代の米国人に紹介しても、彼等の反応は恐ろしく冷めていた。

日本の草食男子の国家への興味がどの程度か知らないが、米国の若者も国家への興味を失いつつあるのではないか。若者の国家への興味が失われる時が、成長のエネルギー衰退の始まりであり、代わって安直な金融ゲーム経済が支配するなら、先進国の衰退は自明の理である。この様に、この国もデフレの呪縛に入っているが、ただソレは日本人が勝手に思い込んでいる平和的縮小均衡の現象ではない・・。



<高級炊飯器> 10/25

これが世紀末なのか、或いは明るい未来への転換点なのか、中年の自分には判らない。今日のワシントンポストは、日米それぞれの今の本質が現象としても色濃く出ている記事がある。まず日本に関しては、所謂「草食男子」の給料がついに同世代の女性の給料を単月で下回った話。草食男子は最初のデートでは「女性を求めない・・」らしいが、給料が相手を下回ってはそれも自然だろう。また自分の趣味を超える消費に興味を示さず、30歳までの免許取得人口が極端に落ち込んでいる事も紹介されている。そして極めつきは、34歳までの男性に、1000ドル(8万円)があったら何を買うかといくつかの選択肢から選んでもらったところ、60%以上の回答が高給炊飯器に集中したという・・。

一方米国につての記事は企業献金の内訳。献金リストを見ると、政府の金融危機の救済プログラムだったTARPを受けた企業の献金先は殆どが共和党だった。中でも最大の受給者は、中間選挙の結果、ナンシーぺローシ議員に代わって下院議長になる事がほぼ確実のオハイオ出身のボーナー議員。だが彼はTARP法案を最初否決した共和党下院の中枢である。その法案否決で700ドルの下落をしたダウ平均。今でも覚えている。会見に現れたボーナー議員は2000ページの法案を掴み、「こんなモノを1日で判断できるわけがない」と言って床に投げ捨てるパフォーマンスをみせた。その彼がなんとTARP救済企業からは今は最も献金を受けている。

逆に、TARPが下院で否決されると「明日の市場が怖い」と、政治家として情けない反応を見せたのが上院トップのリード議員。彼は非常事態であるが故に、異例だが、上院がTARP法案を草案する事を民主党の同僚で上院の金融委員長だったドット議員に申し入れた。結果上院がTARP原案を創り、その修正案を下院が後からしぶしぶ承認した。(ボーナー議員を含め、共和党議員は2度目の採決でも殆どが反対)ところが今TARP企業はTARPに最後まで反対したボーナー議員に今最大の献金を落とし、一方で法案成立の最大の立役者だったドット議員はスキャンダルから早々に引退を強いられ、またリード議員は政治生命を掛けた激戦を強いられている・・。

この醜い展開は小沢一郎の小事で大騒ぎする日本人には想像がつかないだろう。あまり話題にならなかったが、昨年末、オバマは大企業の政治家への献金に限度をかけようとした。ところが、最高裁はソレを認めない判決をだした。その確執が一般教書演説でのオバマによる最高裁批判と言う異例のコメントの背景となったが、民主党とオバマ政権はこんな形でTARPのしっぺ返しを食らうとは思っていなかったはず。(この記事は政権の意向を受けている)

いずれにしても、元来この国では純粋なNOBLE OBLEGATION (ノブレスオブリージュ)のカルチャーはない。また金持ちもビルゲイツやバフェットまでになってやっと寄付をする程度である。本当の米国を知らず、延々と水戸黄門が40年続く日本人には判らないだろうが、米国の民主主義とは実は不完全でダーティーである。だがその不完全さを容認し、社会のボラテイリティーを受け入れる事で長期的には自浄作用を維持してきた。だがこの献金で共和党が萎えてしまうなら、その自浄作用も終わりだろう・・。

< 家畜禁止対象物 > 10/26

金融危機を経て、米国の銀行はJPモルガン、シテイー、バンクオブアメリカが今後もtoo big to fail(大きくてつぶせない)の権利を得たかのように考えられてきた。だが、どうやら昨今のバンカメ騒動はバンカメをその安全圏からはじき出す可能性を感じさせる。大株主のジョンポールソンがBAに対し弱気になった話が伝わると、巷ではBA売り/CITI買いの裁定があちこちで聞かれた。幸い今日の株価は小動き。だがもしBAが10ドルの大台を割ると、一気にその話題に火が付くのではないか。一方で金融銘柄とは別に堅調なのはCOACH ティファニーなどの高級ブランド。米国が消費シーズンを迎える事もあるが、やはりターゲットは中国だ。

この様に世界の消費センターとなりつつある中国の北京では、20年前には見られなかった動物が今は普通に街中で見る事が出来ると言う。昨日ニューヨークタイムス紙は、北京の富裕層の間では、ペットとして犬を飼う人が急速に増えている現象を紹介している。先ごろも北京郊外で30台のベンツを持つ女性実業家が、一匹の犬に5000万円を払ったという。バブル末期に三重県にいたが、当時、松坂牛では和田金と勢力を二分する「柿安」が、5000万で最高級の松坂牛を仕入れた。そもそも商品として売れる牛に5000万円払うのと、ペットの犬に5000万円払うのとは意味が違うが、この程度の散財は今の中国では驚くに値しないのだろう。

だが、20年前の北京では、街中で見かける生きている犬といえば軍が飼っている軍犬だけだったという。それ以外は食卓様の順番待ちが裏にいるだけ。事実北京市は、数年前まで衛星上犬を鶏や羊と同様に市民が飼ってはいけない動物に指定していた。つまり犬は食べるモノだったのである。その犬を政府は数年前に「家畜禁止対象」から外した。そして、恐らく子供の頃は犬肉を食べていたはずの女性実業家は、今はペットとして犬に60万ドルを払う。

世界に金持ちは数多いる。だがこれ程簡単に価値感を変えられるのは中国人だけだろう。動物愛護国の貴婦人が聞けば眉をひそめる様な話だが、ここが中国人の凄みでもある。ただその中国でも完全に世界に対しての覇権を失うまで、つまり西太后のころまでは犬はペットだったという。そして覇権を取り戻しつつある今の中国では金を持った人から犬を散歩に連れ出す様になった。まあその時に身につけている指輪がティファニーになるのはそう遠くない話である・・。

<性悪説の谷間> 10/27

日本のニュースで、少しだけ痴ほう症が始まった老人に、証券会社やリフォーム業者、或いは親戚や子供までが詐欺まがい手口で金をむしり取りにくる現状をやっていた。これではモラルで米国を非難できないと思いきや、介護が必要な老人が人に迷惑をかけたくないとの信念で、公的な支援さえ受けず、敢えて清貧の中で死を選ぶ話が続いて流れた。

人付き合いが下手で頑固、しかし安易に人に甘えない・・。そんな昔の米国人男性を演じ今は監督としてそんな時代への郷愁を描くのがクリントイースウッドである。だが彼が嘆く今の米国には、映画で何を訴えても最早どうにもならない癌がある。それは言うまでもなく住宅市場。この癌は甘やかされたこの国のベービーブーマーにはあまりにも重荷である。

崩壊寸前の米国の住宅市場の象徴はフォークロジャーとショートセール。フォークロージャーは強制競売として、ショートセールは住宅ローンの支払いが出来なくなった人が、ローン残高を下回る価格でも、新たに購入者を見つけた場合、銀行の了承のもと売却を行うケースを言う。どちらでも場合も銀行は損は免れない。

昨今の中古住宅販売では、このフォークロージャーとショートセールが増加したおかげで全体数字は底割れを免れている。ところがNYTIMESの記事では、銀行の中でも特にBAとGMACはこのショートセールに応じなくなっている。理由は、2009年の会計ルールの変更で即時償却の対象から外れたフォークロージャーを優先したいことと、ショートセールでは前のオーナーが超低価格で別人に売却したところ、実はその別人が親戚で、安く買えた「利益」をキックバックしていたなどとの犯罪行為が露見し始めたからだという。

いずれにしても救済政策が当たり前になった先進国の末路はどこも悲しいモノだ。特に中国と同様、性悪説が前提の米国は醜い。そんな中で衰退する先進国日本の性善説はどうなるだろうか。直接触れ合うと性善説は性悪説に勝てない。つまり日本は勃興中の性悪説国家の中国にも、没落中の性悪説の米国にもこのままでは餌食にされるだけだ。ならば最後は神頼みか。個人的には神の存在を信じ、モラルを維持したいと考えている・・。

<成長の原点> 11/28

本日10月28日は米国及びNYのシンボル、「自由の女神」の完成記念日である。ご存じの様に女神像はフランスが米国の独立を祝い贈ったプレゼント。だが運ばれた当初、分解された女神像はニューヨーク市の資金不足から建設のメドが立たず長く放置されていた。そこで別の6都市が自由の女神を引き取りたいと申し出た。その危機感から当時の最大の新聞だったニューヨークワールドを買収したピューリッザー(ピューリッザー賞)が全国に寄付を呼び掛けた。そして集まった資金でニューヨークは自由の女神を組み立てられたのである。

考えてみれば当時のフランスは太っ腹だ。それほど永遠の宿敵である英国の弱体化が嬉しかったのだろうか。ただその独立戦争で米国は英国に完勝したわけではない。戦争の司令官のジョージワシントンはナポレオンや信長の様な戦上手ではなく、米国は緒戦で負け続けた。だが、彼はフランスの参戦で流れが変わるまで粘り強く戦い、何よりも英兵のような訓練を受けていない米国の農民兵を諦めさせなかった。ここがワシントンの真骨頂である。

建国の父ながら国のグラウンドデザインには関わらなかったワシントンが初代大統領になったのは、ジョンアダムスやジェファーソンなどの学識派がその威厳をワシントンの中に認めたかである。そしてこの資質は今日の大統領選挙でも必ず問われる。

この様に、米国の独立戦争とは、13州合わせても当時200万人前後の人口だった植民地が、10倍の2000万人の人口を持っていた大英帝国に挑んだ事が本質である。日本の世界史の授業ではアメリカが英国から独立した背景は勉強する。だがこの本質を知っている人は少ないのではないか。そして当時のフランスはその価値を認めたからこそ100年後にこれ程の贈り物をしたのだろう。この様な経緯を経て1886年に女神像の組立ては完了した。オリジナルは鋼色。それが25年で緑青色になり、その頃には女神を見上げながら新天地に入植した欧州からの移民は1500万前後になっていた。

独立が成長の原点だった歴史からすると、今の米国は変わってしまった。まあ日本にはとっくの昔にこんなロマンはなく、現代人はアイドルが主役を務めるようになった大河ドラマを楽しみ、あとは戦争をひたすら否定するのみ。 中間選挙後の米国はどの道を行くのだろうか・・。

<TEA PARTY ON FED> 11/29

下は昨日のロイターの記事の抜粋。TEA PARTY候補者がFEDの金融政策に対して何を言うか。これまで話題にならなかった事について興味深い記事だ。また、当初上院金融委員長のクリスドットが主張したNYFEDの総裁は大統領が任命し議会が承認する、つまり理事と同じする案は先の改革法案では骨抜きにされた事が判った(赤線)。ところで、2日の選挙ではTEA PARTY候補者が勝てるかどうかはまだ判らない。たとえ全員が勝ったとしても、新しい議会勢力の15%程度にすぎない。だが、大なり小なり共和党は同じコンセプトである。選挙後、下院の銀行委員長はバーニーから共和党の誰かに代わる。ロンポールもその資格は十分有するが、共和党もさすがに世の中がひっくり返る事はしない。恐らくアラバマのバッカス議員だろう。このポストがバーニーからバッカスに移るだけでもダウは1000ドル下がっても驚かない。・・

http://www.msnbc.msn.com/id/39895240/ns/business/

< TEA PARTYの真贋>
日本のニュースでも米国の中間選挙の報道が盛んだ。中でもTEA PARTYについてはNHKも詳細に報道していた。ただその本質に関しての報道はどれも不正確。TEA PARTYはここで何度も紹介しているCNBCの債券リポーターリックサンテリが生みの親である。2009年、彼がCNBCの番組の中でオバマ大統領を名指し、「大統領よ聞いているか!我々は自分の収入を超えて豪華な家を建てた隣人の尻拭いをするために税金を払っているのではない」と噛みついた事に端を発する。その際リックは報道人にあるまじきヤケクソになって「俺達はTEA PARTYを開く」と叫んだ。それにその日の午後、ホワイトハウスが反応してしまった。今となってはこのホワイトハウスの反応が民主党にとって大失敗だった。一報道関係者の過激な発言に慌てた政権を見て、共和党は反撃の手掛かりをつかんだのである。

選挙ではキャッチフレーズのは重要だ。まず議員を引退しながらも細々と共和党の盛り返し運動を続けていたデイックアーミーが自分の団体の活動に「TEA PARTY」を名付た。次にサラぺイリンも自分の資質への批判をかわす意味も含めて賛同し始めた。そしてケネデイー議員の死後、その予備選でTEA PARTYの本家であるマサチューセッツの上院選でTEA PARTYを語った無名の共和党の新人が民主党の候補者を破った事で決定的なうねりとなった。

この様に、「TEA PARTY」は、反撃の手掛を模索していた共和党の選挙関係者に、オバマ政権自身が自ら弱点をさらす事で生まれた現象である。言い換えればTEA PARTYは選挙の道具であって、その原則は選挙が終わればどうなるかわからない代物である。見たところ、TEA PARTYを叫ぶ新人の中で、何があってもTEA PARTYの原則を守りそうなのはロンポールの息子だけだ。事実TEA PARTYが目の敵にする健康保険法案は、そのケネデイーの議席を引き継いだその共和党の新人が妥協した事で廃案の淵から復活したのである・・。



ただそうはいっても直に原則を翻しては政治生命は終わる。よって宴のあと共和党が勝つ事で株が下がる時が来よう。そしてその時が本当のTEA PARTYの真贋が試される時である・・。











2010年10月21日木曜日

<筆者からのお願い>

日頃、このブログに来ていただいてありがとうございます。
今日はこのブログに対してのご意見ご感想を募集します。

ご要望も含め、プロファイルにあるメールアドレス(otakizawa@dttrading.com)
か、このブログに直接に書き込んでいただければ幸いです。

よろしくお願いします。

筆者



2010年10月19日火曜日

米中の共通点

米中は仲良しか否か。この命題に日本はこれから振り回される。振り回されるのは仕方がないとして、日本が知らなければならないのは、表面的には水と油の米中は、実はよく似ていることではないか。

先週は中央銀行のバーナンケ議長が、市場が期待する更なる金融緩和策の弊害を懸念する意見に対し、弊害は「コストオブべネフィット」と言う表現をした。これは中央銀行がどんどん紙幣をプリントすれば、弊害(コスト)もあるが、それは全体の効用(ベネフィット)からすれば仕方がないという判断である。

だがこの政策は既に中間層以下に没落してしまった人には辛い。この層に入ってしまうと株や債券などの金融商品の価格が上がってもあまり意味はない。それよりも日々の暮らしに直結するガソリンや牛乳の値段が上がる事が問題である。

だが米国の中央銀行は、金持ちをこれ以上疲弊させないためには、庶民の生活コストが上る事は仕方がないという判断を下したのである。

この発言で聞いて思い出したのは、改革開放前夜の中国のリーダー鄧小平の言葉。彼は「先に豊かになれる者から金持ちになれ」と、共産主義体制を残したまま、中国経済の方針を大転換をスローガンに掲げた。

鄧小平はその結果起こるであろう国家の矛盾や不平等といった弊害(コスト)は、中国が長い眠り覚める効果(ベネフィット)を考慮すれば仕方がないと割り切った。そしてこの割り切りが今の中国の発展の原点にある。

この様に、弊害を恐れず、思い切った割り切りができるのが中国と米国の共通点。日本や欧州が長く続く皇室や王族に価値を感じるのに対し、元来中国と米国は同じものが継続する事に必要以上の価値を認めない。

4000年の歴史はあるが、新しい王朝が古い王朝を倒した中国。一方初代大統領ワシントンが8年で辞めた慣例に従い、民主主義の制度の中で最長8年で政権が交代し続ける米国。いわば市場原理であるこの新陳代謝の体現者として米中は似たモノ同士である。

そして、経済においては共産主義体制を維持しながら市場原理を導入した中国と、資本主義を掲げて発展したものの、今は救済を優先し、経済面では事実上市場原理を止めてしまった米国は、両極からスタートしながら今は殆ど同じ地点に立っている。

このように、実は今の世界に明確なスタンダード(標準)はない。 ならば日本も米中のどちらにも遠慮せず、自分たちが一番重要と考える価値観を追及するのみ。

まあそれが何か、日本人自身が判らないでは話にならないが・・。国家戦略とは、まずはソレを決めてからの話である




世代交代の市場原理

日曜日、日本からのスポーツニュースは良い教訓になった。ゴルフでは、やっと石川の時代が始まったと思ったら、もう既に別の新しい力の台頭があった。フィギアスケートでも男女ともに浅田真央の次の世代が始まっていた。そんな中でテニスの伊達の活躍をどう考えればよいのか。

伊達は伸び悩む日本選手だけでなく、海外の強豪にも勝っている。従って事テニスに関しては伊達選手をほめるべきか。そして今日こちらでは、タイガーウッズの離婚の代償が100億円と、予想より小さかった事が判明した。

常識からは妥当な金額。だが、タイガーの未来の収入に連動すると言われた慰謝料が噂より小さかったのは、あのタイガーの時代も終わりつつあることの証拠かもしれない。

いずれにしても成長のためには古くなったモノは去らなければならない。この万物の原則を受け入れられないのは先進国のベービーブーマーである。

米国も含め、先進国ではこの世代が物事を決める立場。自己否定はできない以上、彼等の救済を目的にした政策がこれまでの市場原理の常識からいかに歪んでいても批判は続かない。

だが、先進国の老化と新興国のエネルギーの逆行は、先進国が自己都合で処理するスピードを遥かに超えるマグニチュードで進むだろう。その究極の市場原理からは誰も逃れられない。





2010年10月16日土曜日

ミスタープレジデントの院政

中間選挙戦が佳境に入り、苦戦の民主党議員はワラをもつかむ思いだ。中でも注目はネバタ州の上院選。ここでは民主党上院のトップであるハリーリードがティーパーティー(共和党の新保守グループ)の女性と激闘を演じている。そして、先週はリード議員の要請である大物が応援にかけつた。

2006年の中間選挙では、大統領になる前の上院議員だったオバマが、民主党の救世主として応援演説で全米を飛び回った。その効果もあり、2006年、民主党は2004年の大敗北から盛り返した。

そして今回は大統領として忙しいせいもあるが、オバマにはあまり声がかからない。代わりに苦戦の議員から引っ張りだこなのは誰か。それはビルクリントンである。彼は今年70回の応援演説に立ったという(CBS)。これは本来の役割からしてもその数でトップでなければおかしいバイデン副大統領の40回と比べても異常な多さである。

そしてクリントンが壇上に立つ時、必ず叫ばれる呼称が「ミスタープレジデント」現役のオバマが横にいれば絶対に使えないが、今の民主党内にはオバマに対する配慮は少ない。繁栄したクリントン時代を前面に出し、単純な米国民を動かそうとしているのである。

これではっきりした。オバマ政権の残りの2年はビルクリントンの院政時代となる。そして、万が一にもヒラリー時代が始まったら、この国を仕切るのは彼と言う事になる。日本にとってそれはどういう時代か。

気付いている人もいるはず、この30年を振り返っても、大統領の資質や人気に関係なく、米国の大統領が共和党だった時代は日本は元気になる瞬間があった。さほど株価にも関係ない。ただ世界の中で日本存在感が実感できる瞬間があった。ところが、クリントン時代とソノの「お下がり」である今のオバマ政権時代はどうだ。日本は国際情勢で迷子ではないか。

ここで米国在住の視点で日本人に教えなければならない事がある。それはこちらのニュースに毎日触れている立場から見て、今の米国には対日外交の意識が感じられないとう事。つまり、米国にとって日本は特別な外交政策が要らない国になっている事実である。

世界で2番か3番の経済力を持ち、いざとなれば単独で世界で4位クラス(米露中の次)の軍事力を持つ国に対し米国はさほど気を使わなくていい。この状況がいかに米国を助けているか、日本人は知らない。

日本でも著名なオランダ人のカレンウオルフレン氏は3月に中央公論への寄稿の中で、「日本がアメリカを必要としている以上に、アメリカが日本を必要としているという事実に気づいている日本人がほとんどいないことに常に驚かされる。」と述べている。

簡単に言うと、レーガンとブッシュ親子は日本にその重要性を自覚させ、だから一緒に行動しようという圧力をかけてきた。逆に、クリントン政権とオバマ政権は、複雑化する国際情勢の中、日本に己の重要性を気付かせない事で日本を利用して来たと言える。

最後に日本人が知らないオバマ大統領の側面を紹介しよう。彼は毎週土曜日の朝、定例のラジオメッセージを国民に向けて発している。内容は1分程度。今の時代、メディアとしてラジオの牧歌的役割を承知した上で難しい話はしない。だからこそ簡略化されたそのコメントの中に政権の本音が感じられる。

そこでオバマは理数教育の重要性など、民主党の政策に合致し、また国民自身にも前向きな努力を促す話題を選ぶ。そして米国が目標とすべき引き合いに出される国はいつも決まっている。それはドイツ シンガポール 韓国などである。日本の名前は出た事がない

国際競争力で日本は欧米の勝手な尺度で持ち上げらた時代もあれば、今のようにずいぶん低評価になる事もある。だが日本の教育水準はまだ高い。またノーベル賞の話を持ち出すまでもなく、日本の理数系教育の熱意はまだまだ捨てたものではないはずだ。

ではオバマ大統領やスピーチライターは日本の事を知らないのか。そんなことはない。彼らは日本の実体を良く知っている。要は、今の米国の民主党政権は日本を外交政策を必要とする「独立した外国」とは考えていないだけの事である。これはオバマ大統領の個人の問題ではなく、彼を取り巻く民主党の政策の結果とソレを許す日本の外交の問題である。

この日本の外交を最近では「柳腰」と言うらしい。この表現に怒り狂っていた自民党議員がいたが、表現などどうでもよい。感情を露骨にして立場を訴える手法は共和党には効果があるが、老獪な民主党政権に対しては無意味。そんなことより、大事なのは来るビルクリントンが院政時代に日本がどう準備するかである・・。


2010年10月14日木曜日

メルトアップの世界 (MELT-UP)

チリの鉱山事故。予定よりも早く地面を掘れたのは、裏に米国の技術があったという。そんな理由もあり、本日、次々にヒーローが返ってくる現場には星条旗が掲げられていた。

この様子を伝えた米国のメデイアは、最も「成功した失敗例」として今も語り継がれるアポロ13号の事故を例にとり、救出を成功に導いた米国の技術と精神を称えていた。だが、個人的にはアポロ13号というよりも、映画「アルマゲドン」の方が近い印象だった

アルマゲドンは98年の映画である。アポロ13号の事故が95年にトムハンクス主演で映画化された実話だったのに対して「アルマゲンドン」は空想だった。そして映画がつくられた年は3年しか違わない。だがこの3年の違い大きかった。

98年の頃、この国はドットコムバブルの頂点を迎えつつあった。そんな中で大統領は不倫、それも権威ある大統領執務室での破廉恥行為が世界に知れ渡った。そして何よりも驚いたのは、景気が良かった事が背景だったのだろう、米国民は前代未聞の不祥事を越した大統領のビルクリントンを許してしまった。

この瞬間、恐らく今が米国の頂点ではないかと感じた。98年の頃の米国は既にミッションを失っており、国民は消費という豊かさを実感出来れば全てが許される時代が始まろうとしていた。

そして「アルマゲドン」を見た人は知っているだろう、冷戦が終わり、米国のミッションが完了した時代に再び米国が輝くために必要なシナリオ、それがあの映画だった。

彗星が地球を襲う。このままでは地球は滅亡。そこでNASAは普段は油田を掘削するのが本業のドリルの名手(ブルースウイルス主演)を訓練し、シャトルで巨大彗星まで運ぶ。彼に託されたのは、彗星の地表に穴をあけ、そこに原子爆弾を投下して彗星が地球に衝突する前に爆破するという計画だった。

映画の結末を知らない人は観た方がよい。この映画で協調された演出は、先進国が技術の粋を集めて苦難に立ち向かい、アラブもイランも米国のヒーローを褒めたたえる事だった。そう、それこそが米国の新しいミッションになるはずだった。だが現実は違った。

ドットコムバブル崩壊後の米国はイラク戦争と言う全く違う妄想に走った。そしてその間に野放しなった金融市場では、積み上げれば宇宙にまで届く規模の仮想マネーのバブルに浸った。そしてその全てが崩壊の危機にに瀕したした後、モラルも信義も失ったこの国では面白い言葉が生まれている。ソレはメルトアップ(MELT-UP)。メルトダウンの逆だ。直訳すればごちゃ混ぜにされて浮かぶ言う意味か。

これは、バーナンケFEDの政策によって金融市場のプールに大量のマネーが入る事で、プールの中にあるモノ全てが浮いてしまうイメージを良く現わしている。

そもそもきちっとした重力が働く世界では「メルトダウン」しかないと思っていた。まあ今の時代はこんな言葉も生まれるのだろう。だが地に足がついていない世界の居心地は悪い。個人的にはそんな無重力の世界には行きたくない。



2010年10月13日水曜日

平和な国の、平和な人々による、平和な相場

平和な国の日本ではニュースの優先順位が世界基準とは異なる。チリの炭鉱労働者の救出は喜ばしい事実。だが7時のNHKのニュースでの詳細には驚いた。そんな中、こちらで小さく報道されたのが、アフガニスタンで人質になった英国人女性ボランティアが、救出に向かった米国部隊の手りゅう弾で不幸にも亡くなってしまった話。ただこれも大した扱いではない。英国は国内感情に配慮してか、米軍に事情説明を求めている程度だ。そしてこの話を持ち出したのは、当時実は殆ど報道されなかった米英によるある軍事行動について触れておきたいからである。

しばらく前、二人のニューヨークタイムスの記者がアフガンで人質にされた。この二人を救出に向かったのは英国の特殊部隊。救出は成功した。しかし落下傘でタリバンのアジトを急襲する際、英国人兵士の二人が死んだ。死んだのが兵士である以上、米国も英国も殊更大騒ぎをしなかったのは当然。ただここに米英関係と日米関係の本質の大きな違いな存在する。いつまでも世界が平和であると思いこみたい日本。日本人が世界をどう思うと勝手だが、そんな日本を世界がどう思うか。その視点を殆ど報道しない日本のニュース。

さて、相場では中国の準備預金引き上げの話が一番影響している様子。そして今日のWSは日銀の介入を想定し、多くの為替トレーダーが円をショートしている状態との噂だ。日銀が彼等の裏をかけば面白い。だが人を出し抜くのは平和国家でポーカーさえしない日本人は苦手だ。ましてやG7 やG20などを気にしていては話にならない。そもそもG~などは、参加国が増えれば増えるほど何も決まらない事などこちらでは常識である。

ならば日本は日本人の得意な分野を相場に持ち込めば良い。昨日将棋ではトップ女流棋士が遂にコンピュータに負けた。将棋界に挑戦した産学共同のチームはかなりの自信があったらしい。個人的にはこのコンピュータの知能を日銀の介入にも活かす事を提案したい。債券市場では今日も日本が世界に貢献できる部分、つまり米債券買いは堅調だ。これだけでは最後は餌食になるだけである。


2010年10月8日金曜日

ミッション (大義への使命感) Government Sacksの場合

ノーベル賞を受けた根岸教授のコメントを聞いてはっとした。NHKのインタビューで、今の日本の若者に一言と請われ、教授が口にしたのがミッションという言葉。単に勉強や研究を続けるのではなく、ミッションを感じる事の重要性を根岸教授は触れた。

その後でCNBCの特集を観た。タイトルは「ゴールドマンサックスの力と厄」。金融危機後もウォール街最強の金融機関として君臨するGS、だがリポートでは、GSは今や米国では厄の代名詞となっている実態が紹介された。

選挙戦が山場を迎え、選挙資金は喉から手が出るほど欲しい議員もGSからの献金はだれも受けない。なぜならGSから献金を受けただけで庶民を敵に回す事になる。また金融危機のダメージが深刻なクリーブランドでは、行政担当者は廃墟となった地帯を紹介しながらGSの存在は社会の悪とまで言い切った。

ただそんなGSがミッションと共にあった時代がある。それは中興の祖、シドニーワインバーガー氏が君臨した30年代から69年までの40年間である。彼はブルックリンの貧しいユダヤ人家庭に生まれ、高校さえ卒業していない。家計を助けるために13歳から働き、安定した仕事を探して当時ニューヨークで一番高い24階建てのビルに上った。そして最上階から順に入居する全てのテナントに雇ってくれと飛び込みんだという。

そして22階を下り、2階にあった会社でやっと正社員の靴磨きをする用務員補佐として雇われた。それがゴールドマンサックスだった・・。

そこからの彼の出世物語は秀吉に相当する。だがここで紹介したいのは、彼が会長を務めた間、ルーズベルトからアイゼンハワーまでの歴代の大統領からウォール街で一番信頼されたのがワインバーガー氏だった事実。理由は彼にとって国家につくす事は何よりも大切だった信念を大統領が判っていたからだという。

その証拠に、今ではGSを糾弾する急先鋒のニューヨークタイムス紙が、69年にワインバーガー氏が亡くなった日の朝刊では、前日にアームストロング船長が月からアポロで帰還したという大ニュースがありながら、ワインバーガー氏の死を悼む記事をトップにしたという。

そんなGSが米国の厄にまでなってしまったのはなぜだろうか。持論だが、それはGS自身に原因があるとは思わない。GSの社員はいつの時代もウォール街のどこの会社よりも働き、そして基本的には真面目である。原因は米国のミッションが終わったからではないか。

我々が育った時代、米国にはソ連を倒し、世界に資本主義の豊かさと民主主義の明るさを広める大義があった。そしてそのミッションが完了すると、米国に次のミッションは起こらなかった。訪れたのは大義を成し遂げた褒美としての豊かさ。そうクリントンの時代である。

そのころからGSには別の名前がついた。GOVERNMENT SACKS。ルービン財務長官を初め、次々に政権中枢に人材を送り込み、国家経営そのものに連動して利益を生む体制が出来上がったのだ。ただ個人的にはそれ自身も悪だと思わない。問題は、不幸にも米国自身に新しいミッションが見つからなかった事ではないか。

そんな中で世界と米国のスプレッドは縮小、情報もフラット化した。こうなると国家の繁栄を維持するためには米国は無理やりイラクへ侵攻し、また国内には強引に貧富のスプレッドを起こし、そして、なによりも金融は顧客にリスクを転化する事で膨大な利益を維持したのである。おそらく、GSの社員はまじめで優秀であればあるほど全体像を客観的にみる事はなかったはずだ。

最後に、新しいミッションが見つからない以上米国はこのまま矛盾を抱えたままさまよう可能性がある。それは日本とて同じ。明治維新や戦後の混乱期にはミッションなどいらない。なぜならそこには危機があるから。みんなその危機を克服する事に命をかける。

だが、(不幸な事に)今は中途半端に平和で、経済が苦しくなれば簡単にお金をプリントしてしまう時代。そんな時代だからこそ、実はそれぞれがミッションを感じる事が重要なのだろう・・。






2010年10月7日木曜日

狂った果実の時代

ハーバード大学で経済学を教えるジェフリーマイロン教授は、来月に予定されているカリフォルニアでのマリワナ合法化の投票を巡り、どうせなら、全米でLSD コカイン マリワナ等のドラッグ(麻薬類)は全て合法にすべきとのコメントをCATO INSTITUTEのリポートの中で出したという。

理由は、現在米国はドラックの取り締まりに年間3兆円を掛けている。ならばドッラグを合法化する事によって、これらの経費が浮き、更に酒や煙草と同じくドラックに税金を掛ける事で今度は年間4兆円の税収が見込めると言う計算らしい。

教授は、米国では既に取り締まりなど意味がない程のドラックが出回っている。実際は誰でも普通に買える。ならば、合法化で米国の財政は7兆円も改善するならなぜやらないのかという考えだ。これが世界最高権威の学問の府の教授のコメントである。

このブログでは以前、合法と非合法の合間のグレーゾーンで暗躍する山口組を例にとり、彼らを表の経済に出し、(つまり合法化を促す)まじめな邦銀では太刀打ちできないゴールドマンサックスに立ち向かわせた方が賢いとアドバイスした。本気ではなかったが、教授の意見の本質はまさに同じではないか。

まあどう思うかは自由。だがこの話は元々過剰流動性というステロイドでの打ち過ぎで崩壊した経済を、緊縮して立て直す痛みには耐えられないという理由で更なるステロイドを打つと宣言している「元」金融の最高権威のFEDと同じ立場である。

これが今の米国の権威の意見なら、それはそれで今後の米国の本質を象徴するいい話だ。

キリスト教国家でありながら、聖書の教えさえ無視し、快楽によっての成長を是とした米国。仮にこれで成果があったとしても、それは「狂った果実」だろう。

こんな国と今までと同じ感覚で付き合っても、馬鹿を観るのは真面目な自分であることが、何故日本人は判らないのだろうか。






2010年10月6日水曜日

お金の罪

日銀が再び金融緩和に舵を切った。このように世界の中央銀行が協調してお金をジャブジャブにする中、米系最大手の銀行JPモルガン銀行は一般からゴールドを預かるビジネスを再開した。これを聞いて思い出したのは紙幣の始まりである。今日はその話をしたい

まず、一般的に国家として正式に認めらた紙幣の始まりは17世紀のオランダからと言われている。だがヨーロッパではそれ以前に実質紙幣の流通は始まっていた。その切欠はJPMモルガンが再開した金の預かりビジネスである。強盗が横行していた中世のヨーロッパでは、ゴールドスミスと呼ばれた鍛冶屋が庶民からゴールドや金細工を保管するビジネスを始めていた。そしてその際に発行したのが紙の預かり証である。

そして庶民はモノの交換で金地金を使わず、この預かり証の交換で済ませるようになった。この瞬間が紙幣の誕生である。そしてもっと重要な事は、ゴールドスミスは大変な事に気づいてしまった。それは実際に自分が預かっている金地金や金細工よりも多い量の預かり証を発行しても誰も気づかないと言う事。この時から鍛冶屋だった彼等は「銀行」と呼ばれるようになったのである。(信用の創造 レバレッジ)

そして数々の小銀行が乱立したが、ソレよりも大きな銀行が一つ存在し、どこでも通用する共通の紙幣を発行した方が便利だと考えるようになった。ただこの頃には本来は紙切れのはずの紙幣が価値を持つ事の本質的な恐ろしさを欧州の統治者は気づいていた。従って国王にとっても紙幣の流通は自身の統治能力を危うくする存在として厳しい管理下に置かれた。

そんな中、英国では希少なゴールドでもなく、また危険な紙幣でもない木片がお金として使われた。木片には単位を示す刻みがあり、流通している木片は元々の木片を半分に割った物だった。残りの半分を国王が管理する事で流通量と正当性を国王つまり国家が管理したのである。(流通している木片国王が保管している木片と対である事で整合性を証明)

ところが、このルールを曲げたのは、ヨーロッパの田舎国家だった英国の運命を変えた男として何度も紹介したヘンリー8世である。ヘンリー8世は木片以外のお金の流通規制を緩めた。ただ本格的に木片が紙幣にとって代わられるのは、それから150年後、英国の中央銀行が設立されてからである。

ただしこの時の英国の中央銀行は、国家期間ではなく、ビルパターソンという個人が経営する民間銀行だった。つまり、国王から認可された個人が紙幣の発行権を手にしたのである。

ここから先の中央銀行の本質、更に米国の歴史とのかかわりの話をすれば長くなり難しい。よってこのブログではしない。ただそれでも触れておきたい点は2点ある。まず中央銀行はあたかも国家機関の様な名称だが、米国の中央銀行と日本の日銀は国有化されていない事実。(前述の英国中央銀行は戦後に国有化された) 

そんな中で日米のメディアは「中央銀行の政治から独立」の記事は書いてきた。では中央銀行はその株主からちゃんと独立していたか。そこに初めて触れたのがニューヨークタイムスである。同紙は2008年、金融危機後、NY連銀の株主がJPモルガンなどの少数ウォール街の金融機関である事実を指摘。そしてそのNY連銀の救済で窮地のウォール街が救われたのは、原資が税金だった事から米国民を愚弄していると非難した。

そんな救済を可能にしたのが、NY連銀総裁は株主のウォール街が相談して決め、ソレをワシントンの理事会が承認するという仕組みである。(理事はバーナンケ議長以下上院が承認)

そもそも米国の中央銀行の正式名称は「FEDERAL RESERVE」。あたかも「国家的」な形容詞だが、その名称は実質連銀の根幹であるNY連銀の初期の株主のウォーバーグが付けた。そして1913年にその連銀設立の法案を遂行したのが当時の最も有力な上院議員だったオルドリッチ。

そのオルドリッチの娘はロックフェラー2世の妻である。その5人の子供の中で、次男はフォード政権下の副大統領のネルソン。また5男は今も健在でJPモルガンの前身であるチェースマンハッタン銀行を治めたデービットロックフェラーである事は有名だろう。

最後に、これらの話は巷にある陰謀説を追認するものではない。私自身は陰謀説に全く興味がない。だが、マネーの歴史でゴールドが果たした役割とその因果は、今世界中の中央銀行が紙幣の増刷に走ることでぶり返えされようとしている。

この結果、ロックフェラーやロスチャイルドが儲かるかどうかは判らない。だが金融商品を扱う金融機関が助かる事は確かだ。そして、金融危機後、本来はその責任から減らなければならない金融機関の影響力や人口が減らず、一方で人類にとってより重要な分野が疲弊する。

こんな政策を米国の中央銀行が主導するなら、この国の輝かしい挑戦の歴史は終わる。そのあとに待っているのは日本化ではなく英国化である。そしてすべての天罰として究極的なインフレが襲った際は誰が責任を取るのか。その時も今の弱者が更に困窮する事だけは間違いない・・。





2010年10月2日土曜日

バーベル現象とFEDの犠牲者 (顧客レターから)

更にお金がジャブジャブになると言う見込みで、9月は株も債券も買われた。著名なファンドマネージャーのコメントも火を付けたのだろう、結局は株と債券の両方が上がるバーベルトレードの復活である。そして、本日ニューヨーク連銀のダッドレー総裁は、この動きが加速する事は、米国として正しい方向であるとの立場を明確にした。まさに先のFOMCのステートメントにあった通りである。

ところで、バーベル現象は他にもある。ソレは米国という国家がバーベル化している事。金持ちと非金持ち。中間層が貧乏になり、社会がバーベル化してしまった。そんな中、嘗ての中間層も今多くがフードスタンプが頼りだ。だがこれ以上商品の値段が上がれば、フードスタンプだけでは厳しい。そして住宅市場に回復に見込みが立たない以上、彼等は仕事を通してのみ救われる。だがFEDは仕事を造りだせない。だからインフレを煽るというのか。社会がバーベル化しているにもかかわらず、それは本当に正しい金融政策なのか。

ご存知の様に、FEDはFFレートより高い金利を金融機関への準備預金に付けている。つまり自分が損をして金融機関を助けている。危機直後ならまだしも、巨額のボーナスが復活した今なぜこんな事を続けているのか。好意的に考えればまず金融機関を昔の水準まで儲けさす。その後金融機関からの貸出が伸びる事を期待していると言う事。だがこれ程まで政府の規制に逆らった金融機関が儲かる見込みのない貸し出しをするはずがない。ならばFEDは単純に危機の原因を造った過剰利益の追求やそれを正当化するWSの仲間と言う事になる。

下院議員のローンポールと彼等の支持者は昔からFEDの廃止を訴えている。話題のTEA PARTYの人々も、金融に詳しい人はロンポールと同じ立場だ。ロンポールは当選するだろうが、一方で東海岸から面白そうな話が入った。それは、ロンポールの対局に位置するバーニーフランクが苦戦?という情報である。バーニーは今のところ共和党の対抗馬に10%以上の差をつけている。だがその開きは縮小気味らしい。

今年一月、故ケネデイー上院議員の補欠選挙で悪夢を見た民主党。その時も一カ月前まで民主党候補者は17%のリードをしていた。バーニー陣営は慌てていないと言う事だが、先週はビルクリントンまでがバーニーの応援に駆け付けた。バーニーはFEDを頂点とする今の米国の金融システムの議会での守護神。落選まではないとしても、共和党が躍進すればFEDを取り巻く環境も激変する。

いずれにしても、今のFEDの政策は僅かに残っている国内の中間層を更にじり貧に追いこむ。そして、為替相場をみても明らかなように、もう一人の犠牲者は中間層国家の日本である。



2010年10月1日金曜日

水とお金の話

本日9月30日は、米国のある有名な建造物の完成記念日である。それは世界最大規模のダム。フーバーダムである。そのフーバーダムの建設が始まった頃の話から入ると、今のバーナンケFEDが非難する30年代のFEDは、株の暴落後、銀行を助けなかった。結果、1930年には600の銀行が倒産。連鎖は続き、33年には28の州で一つの銀行も営業していない状態になった。

こうなると仕事どころではない。30年まで400万人前後だった失業者は32年には1200万人に膨れ上がり、最終的には3400万人が全く収入の充てがないという状況に陥いった。当時の米国の人口は1億2千万人。今の日本と粗同じである。ならばこの数字がどういう状況か、日本人にも判りやすいだろう。

そしてその時代に始まったのがフーバーダムの建設。建設は政府が資金を出し、請け負ったのはフランククロウと言う民間人だった。着工の31年、クロウの元には5万人の失業者が集まった。ただ政府から許された工事期間は6年だった。クロウの報酬はダムから上がる利益の2.5%強、だが6年で工事が完了しない場合、期間が延びれば延びるほど彼は政府にぺナルティーを払う契約になっていた。そして数々の試練を乗り越え、ダムは1935年の本日9月30日に完成した・・。

ダムの記念日にちなんでこの話をした理由はいくつかある。まず共和党のフーバー大統領は、ダム建設を自分の代に起きた株の暴落、更には迫りくる大不況の対策として始めた事は間違いない。ただ引き継いだルーズベルトのニューデイール政策と比べ、このプロジェクトには共和党らしい特徴がある。まずは競争と市場の原理を徹底的に活かした事。

フランククロウはそれまでにもダム建設の実績はあったが、これだけの規模のプロジェクトは初めてだった。利益2.5%のヘアカットは魅力的とはいえ、史上最大のダム建設を6年で終わらせるのは賭けだったはず。そこで彼は集まった5万人から意欲のある5000人をまず選ぶ。そして彼等に掘削のスピードを競わせた。

次は史上初のコンクリートでのダム建設となった工事方法。彼は大量のコンクリートを手道のクレーンで上から流し込む当時としては画期的な作業法方を編み出したのである。この様に契約に対する責任感やイノベーションが本来は市場原理の真骨頂だ。結果、工事期間は予定より2年も早い4年で完了、クロウは契約に加え4億円を特別ボーナスとして政府から受け取った。そしてこのダムはカリフォルニをフルーツの宝庫に変え、砂漠だったラスべガスに人を集めたである。

ところで、今のベイビーブーマーの米国人は、大恐慌の前のバブルを引き起こした共和党政権を非難する。フーバーの評価はブッシュ並みに低い。だがこのフーバーダム建設はその需要と、何よりも国民にやる気と夢を与えたのは事実だ。一方のルーズベルトのニューディール政策。救済中心政策は結果を出せなかった。そして最後は戦争の破壊がこの国の経済を救ったのである。

さて、バーナンケFEDの金融救済とオバマ政権の景気刺激策、この組み合わせが30年と比べ、どこか同じでどこが違うのか、本日記念日を迎えたフーバーダムは丁度良いサンプルである。だがそのフーバーダムに関し本日CNBCは不気味な報道をした。盤石だったはずのコロラド川の水脈が細り、ダムの貯水量が最低を更新しているのである。

このダムの規模は日本にある2500のダム全部の貯水量である250億トンを上回る400億トン。また280億トンの琵琶湖よりも大きい。ならばこの規模の水がゆっくり減り始めた現象をどう考えるべきか。

個人的には市場原理を曲げ、本来死滅させるべきものを残したバーナンケFEDは、宇宙の原理と言う市場原理で必ずしっぺ返しを食らうと考えているが、フーバーダムの水位はその予兆かもしれない。そしてその結果、インフレと神の怒りの両方から、アリゾナでは「お金で水が買えない」時代がきても驚かない。