米中は仲良しか否か。この命題に日本はこれから振り回される。振り回されるのは仕方がないとして、日本が知らなければならないのは、表面的には水と油の米中は、実はよく似ていることではないか。
先週は中央銀行のバーナンケ議長が、市場が期待する更なる金融緩和策の弊害を懸念する意見に対し、弊害は「コストオブべネフィット」と言う表現をした。これは中央銀行がどんどん紙幣をプリントすれば、弊害(コスト)もあるが、それは全体の効用(ベネフィット)からすれば仕方がないという判断である。
だがこの政策は既に中間層以下に没落してしまった人には辛い。この層に入ってしまうと株や債券などの金融商品の価格が上がってもあまり意味はない。それよりも日々の暮らしに直結するガソリンや牛乳の値段が上がる事が問題である。
だが米国の中央銀行は、金持ちをこれ以上疲弊させないためには、庶民の生活コストが上る事は仕方がないという判断を下したのである。
この発言で聞いて思い出したのは、改革開放前夜の中国のリーダー鄧小平の言葉。彼は「先に豊かになれる者から金持ちになれ」と、共産主義体制を残したまま、中国経済の方針を大転換をスローガンに掲げた。
鄧小平はその結果起こるであろう国家の矛盾や不平等といった弊害(コスト)は、中国が長い眠り覚める効果(ベネフィット)を考慮すれば仕方がないと割り切った。そしてこの割り切りが今の中国の発展の原点にある。
この様に、弊害を恐れず、思い切った割り切りができるのが中国と米国の共通点。日本や欧州が長く続く皇室や王族に価値を感じるのに対し、元来中国と米国は同じものが継続する事に必要以上の価値を認めない。
4000年の歴史はあるが、新しい王朝が古い王朝を倒した中国。一方初代大統領ワシントンが8年で辞めた慣例に従い、民主主義の制度の中で最長8年で政権が交代し続ける米国。いわば市場原理であるこの新陳代謝の体現者として米中は似たモノ同士である。
そして、経済においては共産主義体制を維持しながら市場原理を導入した中国と、資本主義を掲げて発展したものの、今は救済を優先し、経済面では事実上市場原理を止めてしまった米国は、両極からスタートしながら今は殆ど同じ地点に立っている。
このように、実は今の世界に明確なスタンダード(標準)はない。 ならば日本も米中のどちらにも遠慮せず、自分たちが一番重要と考える価値観を追及するのみ。
まあそれが何か、日本人自身が判らないでは話にならないが・・。国家戦略とは、まずはソレを決めてからの話である
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