2010年10月14日木曜日

メルトアップの世界 (MELT-UP)

チリの鉱山事故。予定よりも早く地面を掘れたのは、裏に米国の技術があったという。そんな理由もあり、本日、次々にヒーローが返ってくる現場には星条旗が掲げられていた。

この様子を伝えた米国のメデイアは、最も「成功した失敗例」として今も語り継がれるアポロ13号の事故を例にとり、救出を成功に導いた米国の技術と精神を称えていた。だが、個人的にはアポロ13号というよりも、映画「アルマゲドン」の方が近い印象だった

アルマゲドンは98年の映画である。アポロ13号の事故が95年にトムハンクス主演で映画化された実話だったのに対して「アルマゲンドン」は空想だった。そして映画がつくられた年は3年しか違わない。だがこの3年の違い大きかった。

98年の頃、この国はドットコムバブルの頂点を迎えつつあった。そんな中で大統領は不倫、それも権威ある大統領執務室での破廉恥行為が世界に知れ渡った。そして何よりも驚いたのは、景気が良かった事が背景だったのだろう、米国民は前代未聞の不祥事を越した大統領のビルクリントンを許してしまった。

この瞬間、恐らく今が米国の頂点ではないかと感じた。98年の頃の米国は既にミッションを失っており、国民は消費という豊かさを実感出来れば全てが許される時代が始まろうとしていた。

そして「アルマゲドン」を見た人は知っているだろう、冷戦が終わり、米国のミッションが完了した時代に再び米国が輝くために必要なシナリオ、それがあの映画だった。

彗星が地球を襲う。このままでは地球は滅亡。そこでNASAは普段は油田を掘削するのが本業のドリルの名手(ブルースウイルス主演)を訓練し、シャトルで巨大彗星まで運ぶ。彼に託されたのは、彗星の地表に穴をあけ、そこに原子爆弾を投下して彗星が地球に衝突する前に爆破するという計画だった。

映画の結末を知らない人は観た方がよい。この映画で協調された演出は、先進国が技術の粋を集めて苦難に立ち向かい、アラブもイランも米国のヒーローを褒めたたえる事だった。そう、それこそが米国の新しいミッションになるはずだった。だが現実は違った。

ドットコムバブル崩壊後の米国はイラク戦争と言う全く違う妄想に走った。そしてその間に野放しなった金融市場では、積み上げれば宇宙にまで届く規模の仮想マネーのバブルに浸った。そしてその全てが崩壊の危機にに瀕したした後、モラルも信義も失ったこの国では面白い言葉が生まれている。ソレはメルトアップ(MELT-UP)。メルトダウンの逆だ。直訳すればごちゃ混ぜにされて浮かぶ言う意味か。

これは、バーナンケFEDの政策によって金融市場のプールに大量のマネーが入る事で、プールの中にあるモノ全てが浮いてしまうイメージを良く現わしている。

そもそもきちっとした重力が働く世界では「メルトダウン」しかないと思っていた。まあ今の時代はこんな言葉も生まれるのだろう。だが地に足がついていない世界の居心地は悪い。個人的にはそんな無重力の世界には行きたくない。



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