2010年10月31日日曜日

顧客レター抜粋(特別号)

 <ロストボール> 11/03

決戦は終わった。民主党のナンシーぺローシ議員に代わり新しい下院議長になるBOEHNER(ベイナー議員)はこれまでの強面が一変、圧勝の感激で泣いていた。これからしても今回の共和党は、ギングリッチが率いた94年の共和党よりもソフトだ。私自身覚えている。94年、上下両院を取り返した共和党は勢いがあった。翌年にはクリントン政権に医療費や教育費等も含め、問答無用の財政削減を迫った。そしてのらりくらりのクリントン政権に業を煮やしたギングリッチは強硬策に出た。暫定予算を認めない事で公共サービスに直結する政府機関を2度に渡りシャットダウンしたのだ。これには国民も怒った。

そもそも94年~95年はクリントンの最初の不倫と、ヒラリーの先物業者レフコを使った不正蓄財事件が発生。何よりもSAVING&LOANを舞台にしたホワイトウォーター事件では、現職大統領の側近が不可解な死を遂げ(自殺扱い)、クリントン自身がアーカンソーでの弁護士資格をはく奪されるというスキャンダルの極致だった。それにも関わらず景気回復の波に支えられたクリントン政権は、ギングリッチの強硬策に対する国民の反発も手伝い長期政権への軌道に乗ったのである。

そういえば、ゴルフのティーショットを右の池に入れてしまったアマチュアは、次は必ず左の林にOBをするものだと予想したのはバフェットである。三打目となる今回の選挙は、もう一度右の池に入れるか思いきや、上院は民主党が死守した事でボールはなんとか右のラフに納まった印象だ。これは民主党にとって実は上出来である。なぜならクリントン政権の最初の2年もオバマ政権と同じく上下両院を民主党が押さえてのスタートだったが、クリントンは公約だった健康保険法案を成立させる事が出来なかった。その点でオバマ政権は金融危機でTARP法案、そして起死回生の健康保険法案、更には金融改革法案の3大重要法案を全て成立させた。ならばこの中間選挙ではこの反動がもっと出てもはおかしくなかった。それを民主党上院は踏みとどまった。

いずれにしてもこれでクリントンの院政は確定した。なぜならオバマ政権と民主党は、94と95年の危機を乗り切ったクリントン政権をお手本にするしかないからだ。クリントンは更に調子に乗るだろう。だが米国人がしならない根本的な事実がある。ソレは90年代と違い、この国の自律成長は既に終わっていると言う事だ。今の共和党はこの事実を認めていない。

この選挙結果を受け早速PIMCOのエリアリアンが同様の不安を述べているが(下の英文)、ギングリッチの代わり、TEA PARTYという波乱要因お抱えた共和党が94年と同じ間違いを犯せば、三打目のショットはラフの中で「ロストボール」となろう。暫定球を打たず、その場所まで行ってからのロストボール宣言は、ペナルティーとしては最悪である・・。

(ワシントンポストのエルアリアン氏の寄稿)
With the two chambers of Congress split between Democrats and Republicans, the conventional wisdom likely to be repeated over the next few weeks is that political gridlock is good for the economy. While often true, that is not the case today. Such thinking is based on the view that political gridlock inhibits or paralyzes economically unproductive government actions. With government out of the way, it follows that the private sector can allocate capital to the most productive uses. But this view is most applicable to a private sector that is in good shape - businesses and households with robust balance sheets, positive cash flow and access to credit. In such a world, the path of least resistance translates into higher economic growth and jobs. Today, many large companies and rich households are in a good position to move forward. They have the means to spend and hire. Yet they lack the willingness to do either, as illustrated by massive cash holdings and widespread efforts to reduce risk in balance sheets and investment portfolios. Many of these companies and households explain the divergence between their will and their wallet by pointing to regulatory and tax uncertainty, the absence of a clear macroeconomic vision, and the notion that the Obama administration is "anti-business." They have a point in complaining about what economists call unhelpful "regime uncertainty." Moreover, many believe that political gridlock is preferable to what they perceive as misguided government activism of the past two years. Yet this ignores a glaring reality. For too many segments of our society, the ability to spend and hire is constrained not by questions of willingness but, rather, by stubbornly high unemployment, annihilative debts and, in some cases, concerns about losing one's home. As a whole, the United States is still overcoming the legacy of years of over-leverage and misplaced confidence that consumption can be financed by borrowing rather than earnings. The resulting debt overhangs act as strong headwinds to growth and employment generation. This world speaks to a different characterization of private-sector activity - rather than able and willing to move forward unhindered if the government simply gets out of the way, this is a private sector that faces too many headwinds. In these circumstances, high economic growth and job creation require not only that the private sector moves forward but also that it attains critical mass, or what Larry Summers, the departing head of the National Economic Council, called "escape velocity." While certain sectors of the economy are in control of their destinies, the private sector as a whole is not in a position to do this. It needs help to overcome the consequences of the "great age" of leverage, debt and credit entitlement, and the related surge in structural unemployment. The urgency to do so increases in the rapidly evolving global economy, as United States sheds a bit more of its economic and political edge to other countries daily. Simply put, these realities make it necessary for Washington to resist two years of gridlock and policy paralysis. Democrats and Republicans must meet in the middle to implement policies to deal with debt overhangs and structural rigidities. The economy needs political courage that transcends expediency in favor of long-term solutions on issues including housing reform, medium-term budget rules, pro-growth tax reforms, investments in physical and technological infrastructure, job retraining, greater support for education and scientific research, and better nets to protect the most vulnerable segments of society. Success requires an element of policy experimentation as well as confidence that mid-course policy corrections will be identified and undertaken on a timely basis. And such efforts must be wrapped in an encompassing economic vision that acts as a magnet of conversion nationally, counters growing international frictions and facilitates much-needed global economic coordination. This is not an easy list. It will be difficult to translate today's political extremes into a common vision, analysis and narrative. Yet the longer it takes to do this, the greater the effort needed to restore our tradition of unmatched economic dynamism, buoyant job creation and global leadership.

Mohamed A. El-Erian is chief executive and co-chief investment officer of the investment management firm Pimco and author of the 2008 book "When Markets Collide."




ブログの読者の皆様に、ブログ改良の暫定処置として、ブログを更新しない間の顧客レターを以下に紹介します。

<初代財務長官の役割>10/21

アレキサンダーハミルトン。映画「ウォールストリート2」のシーンで、リーマンの倒壊前夜、ブランクファインやジェイミーダイモン(ゴールドマンとJPモルガンの会長)などWSのトップが、ポールソンとガイトナー(当時の財務長官とNY連銀総裁)を交えた緊急会議を持つシーンがある。そのシーンで監督のオリバーストーンは、壁に飾られた肖像画をさりげなく映す。それが米国の初代財務長官アレキサンダーハミルトンである。

ハミルトンは現在流通する米国紙幣の中で10ドルの顔という重要な役割。(100ドル:Bフランクリン、50ドル:Uグラント 20ドル:A ジャクソン 10ドル:A ハミルトン 5ドル:Aリンカーン 2ドル:Tジェファーソン 1ドル:Jワシントン)。米国紙幣の顔の殆どが歴代の大統領の中、大統領になっていないが紙幣に選ばれたのは、米国の国是を決めたBフランクリンとこのハミルトンだけである。

この事実からも、彼が米国史でどれほど評価されているかがよくわかる。だが、現在の共和党保守からすれば彼は諸悪の根源でもある。なぜなら、ジョージワシントン、ベンジャミンフランクリン、トマスジェファーソン ジェームスマディセンなど、日本の小学生でも知っている建国の父が反対する中で彼は初期の中央銀行を強引に造ったからだ。

ハミルトンが後見役のワシントンさえ敵に回しても紙幣の流動性の重要性を強調した背景を、現在ロンポールを支える保守派集団は、米国憲法の骨子作成やモンロー主義などの彼の優れた先見性を認めつつ、大局において彼の小賢しさは米国が引き続き欧州の支配を受ける切欠になったとしている。そして今のガイトナー財務長官を見ていると、彼はハミルトンの良い面と悪い面のせいぜい100分の一程度を演じている様に思える・・。

<戦場での殺人罪>10/22

今米国にとって最も大事な国の一つであるパキスタン。アフガン戦争の最前線でもあるそこで、米軍とパキスタン国家の亀裂は日に日に深刻になっている。そんな中でパキスタン軍の一部隊が非武装の住民を虐殺した事が判明、戦時中の同盟関係にありながら、米軍はその部隊への協力と資金援助を止めるという異例に事態に発展している。

チャンプリンではないが、そもそも戦争でヒーローと殺人者をどう区別するのかは疑問だ。その証拠に米軍はイラクとアフガンで誤爆を繰り返しながら、TVゲームの様な爆撃の操作を担当した米兵の起訴の話は全く聞かない。そんな中、昨日は殺人罪で起訴されていた民間の戦争請負企業、ブラックウォーターの社員が無罪放免になった。理由はFBIが何度もイラクへ足を運び現地調査をしたが、殺人罪を立証する確定的証拠が集まらなかったと言うモノ。

被告は初めから殺人を認めていたが、正当防衛を主張していた。今年のアカデミー賞映画「ハートロッカー」では、主人行が所属する正式部隊と、「ブラックウオーター」とおぼしき民間戦争業者が共同で戦う場面がある。やっている事は変わらない。映画は米兵の苦悩と「雇われたゴロツキ」のブラックウォーターの違いをうまく演出していた。そして戦死すれば見舞金から何もかもが国家のルールで丁重に迎えられる正式兵と、ゴロツキを同じ戦場に送り、勝手な都合で使い分けているのは米国自身だ。ならば、正式な軍法がないブラックウォーターを前線での殺人罪で裁くなど、最初から矛盾している。

矛盾だらけの戦争。それはイラクもアフガンも変わらない。元々フセインの頃のイラクも、9・11以前のパキスタンとアフガンにも戦争はあった。だがそこに米国入り、新たな矛盾が生まれた。昨日ホワイトハウスは来年1月のオバマのパキスタン訪問を発表した。アフガンに強くコミットしているオバマの初めてのパキスタン訪問。それだけ米国にとってパキスタンは重要であるというメッセージだろう。だが、この訪問で関係が好転するとは思えない。寧ろ、オバマを2004年から注目してきた立場として警告したい。この訪問は辞めた方が良い・・。

<自明の理>10/24

仕事なので一日中見ているが、今は当前のごとく支配されているCNBC(金融/市場専門番組)からの情報は、20年前はなかった。その時代、金融機関のトレーデイングルームでさえロイターのテロップが流れるだけ。皆が情報に飢え、そのスピードを競った。だからインサイダーに価値があった。それが87年の映画ウォール街の時代。そういえば今の相場ではインサイダーと言う言葉も死語に近い。なぜなら、1秒間に何千回ものトレードが可能になったハイフリークエンシーのシステムトレードが全体の7割を占め、また相場の方向性は、国家が救済方針を打ち出してからは本当は迷う必要などない(つまり社会主義政策)。 政府の言う通りやればよいのだ。では現代において情報は一体何を競っているのか・・。

そんな中、今日の膨大なヘッドラインで個人的に注目したのは、デトロイトで行方不明になていた銀行家が、処刑スタイルで頭を打ち抜かれ、その死体が湖に浮かんでいた話。この記事を見て思い出したのは、60年代後半西ドイツを震撼させたドイツ赤軍。切欠はベトナム戦争を批判する西ドイツの学生が、ニクソンの訪独に反発して起こしたデモだった。この動きに感化された当時のドイツの若者がテロ組織を造り、日本赤軍に習ってレッドアーミーを名乗った。そして、中東紛争にも加わりながら、本国では銀行家や経団連会長を次々に誘拐して暗殺した。

再び世界経済の優等生に躍り出たドイツ。だが彼等にもそれほど遠くない昔にこんな歴史があった。そして今、この米国を見て感じるのは若者の変化だ。昨日添付したYOUTUBE。2030年に中国の属国と化した米国を笑止する北京の中国人大学生の授業風景。このYOUTUBEを横でトレードをしている20~30代の米国人に紹介しても、彼等の反応は恐ろしく冷めていた。

日本の草食男子の国家への興味がどの程度か知らないが、米国の若者も国家への興味を失いつつあるのではないか。若者の国家への興味が失われる時が、成長のエネルギー衰退の始まりであり、代わって安直な金融ゲーム経済が支配するなら、先進国の衰退は自明の理である。この様に、この国もデフレの呪縛に入っているが、ただソレは日本人が勝手に思い込んでいる平和的縮小均衡の現象ではない・・。



<高級炊飯器> 10/25

これが世紀末なのか、或いは明るい未来への転換点なのか、中年の自分には判らない。今日のワシントンポストは、日米それぞれの今の本質が現象としても色濃く出ている記事がある。まず日本に関しては、所謂「草食男子」の給料がついに同世代の女性の給料を単月で下回った話。草食男子は最初のデートでは「女性を求めない・・」らしいが、給料が相手を下回ってはそれも自然だろう。また自分の趣味を超える消費に興味を示さず、30歳までの免許取得人口が極端に落ち込んでいる事も紹介されている。そして極めつきは、34歳までの男性に、1000ドル(8万円)があったら何を買うかといくつかの選択肢から選んでもらったところ、60%以上の回答が高給炊飯器に集中したという・・。

一方米国につての記事は企業献金の内訳。献金リストを見ると、政府の金融危機の救済プログラムだったTARPを受けた企業の献金先は殆どが共和党だった。中でも最大の受給者は、中間選挙の結果、ナンシーぺローシ議員に代わって下院議長になる事がほぼ確実のオハイオ出身のボーナー議員。だが彼はTARP法案を最初否決した共和党下院の中枢である。その法案否決で700ドルの下落をしたダウ平均。今でも覚えている。会見に現れたボーナー議員は2000ページの法案を掴み、「こんなモノを1日で判断できるわけがない」と言って床に投げ捨てるパフォーマンスをみせた。その彼がなんとTARP救済企業からは今は最も献金を受けている。

逆に、TARPが下院で否決されると「明日の市場が怖い」と、政治家として情けない反応を見せたのが上院トップのリード議員。彼は非常事態であるが故に、異例だが、上院がTARP法案を草案する事を民主党の同僚で上院の金融委員長だったドット議員に申し入れた。結果上院がTARP原案を創り、その修正案を下院が後からしぶしぶ承認した。(ボーナー議員を含め、共和党議員は2度目の採決でも殆どが反対)ところが今TARP企業はTARPに最後まで反対したボーナー議員に今最大の献金を落とし、一方で法案成立の最大の立役者だったドット議員はスキャンダルから早々に引退を強いられ、またリード議員は政治生命を掛けた激戦を強いられている・・。

この醜い展開は小沢一郎の小事で大騒ぎする日本人には想像がつかないだろう。あまり話題にならなかったが、昨年末、オバマは大企業の政治家への献金に限度をかけようとした。ところが、最高裁はソレを認めない判決をだした。その確執が一般教書演説でのオバマによる最高裁批判と言う異例のコメントの背景となったが、民主党とオバマ政権はこんな形でTARPのしっぺ返しを食らうとは思っていなかったはず。(この記事は政権の意向を受けている)

いずれにしても、元来この国では純粋なNOBLE OBLEGATION (ノブレスオブリージュ)のカルチャーはない。また金持ちもビルゲイツやバフェットまでになってやっと寄付をする程度である。本当の米国を知らず、延々と水戸黄門が40年続く日本人には判らないだろうが、米国の民主主義とは実は不完全でダーティーである。だがその不完全さを容認し、社会のボラテイリティーを受け入れる事で長期的には自浄作用を維持してきた。だがこの献金で共和党が萎えてしまうなら、その自浄作用も終わりだろう・・。

< 家畜禁止対象物 > 10/26

金融危機を経て、米国の銀行はJPモルガン、シテイー、バンクオブアメリカが今後もtoo big to fail(大きくてつぶせない)の権利を得たかのように考えられてきた。だが、どうやら昨今のバンカメ騒動はバンカメをその安全圏からはじき出す可能性を感じさせる。大株主のジョンポールソンがBAに対し弱気になった話が伝わると、巷ではBA売り/CITI買いの裁定があちこちで聞かれた。幸い今日の株価は小動き。だがもしBAが10ドルの大台を割ると、一気にその話題に火が付くのではないか。一方で金融銘柄とは別に堅調なのはCOACH ティファニーなどの高級ブランド。米国が消費シーズンを迎える事もあるが、やはりターゲットは中国だ。

この様に世界の消費センターとなりつつある中国の北京では、20年前には見られなかった動物が今は普通に街中で見る事が出来ると言う。昨日ニューヨークタイムス紙は、北京の富裕層の間では、ペットとして犬を飼う人が急速に増えている現象を紹介している。先ごろも北京郊外で30台のベンツを持つ女性実業家が、一匹の犬に5000万円を払ったという。バブル末期に三重県にいたが、当時、松坂牛では和田金と勢力を二分する「柿安」が、5000万で最高級の松坂牛を仕入れた。そもそも商品として売れる牛に5000万円払うのと、ペットの犬に5000万円払うのとは意味が違うが、この程度の散財は今の中国では驚くに値しないのだろう。

だが、20年前の北京では、街中で見かける生きている犬といえば軍が飼っている軍犬だけだったという。それ以外は食卓様の順番待ちが裏にいるだけ。事実北京市は、数年前まで衛星上犬を鶏や羊と同様に市民が飼ってはいけない動物に指定していた。つまり犬は食べるモノだったのである。その犬を政府は数年前に「家畜禁止対象」から外した。そして、恐らく子供の頃は犬肉を食べていたはずの女性実業家は、今はペットとして犬に60万ドルを払う。

世界に金持ちは数多いる。だがこれ程簡単に価値感を変えられるのは中国人だけだろう。動物愛護国の貴婦人が聞けば眉をひそめる様な話だが、ここが中国人の凄みでもある。ただその中国でも完全に世界に対しての覇権を失うまで、つまり西太后のころまでは犬はペットだったという。そして覇権を取り戻しつつある今の中国では金を持った人から犬を散歩に連れ出す様になった。まあその時に身につけている指輪がティファニーになるのはそう遠くない話である・・。

<性悪説の谷間> 10/27

日本のニュースで、少しだけ痴ほう症が始まった老人に、証券会社やリフォーム業者、或いは親戚や子供までが詐欺まがい手口で金をむしり取りにくる現状をやっていた。これではモラルで米国を非難できないと思いきや、介護が必要な老人が人に迷惑をかけたくないとの信念で、公的な支援さえ受けず、敢えて清貧の中で死を選ぶ話が続いて流れた。

人付き合いが下手で頑固、しかし安易に人に甘えない・・。そんな昔の米国人男性を演じ今は監督としてそんな時代への郷愁を描くのがクリントイースウッドである。だが彼が嘆く今の米国には、映画で何を訴えても最早どうにもならない癌がある。それは言うまでもなく住宅市場。この癌は甘やかされたこの国のベービーブーマーにはあまりにも重荷である。

崩壊寸前の米国の住宅市場の象徴はフォークロジャーとショートセール。フォークロージャーは強制競売として、ショートセールは住宅ローンの支払いが出来なくなった人が、ローン残高を下回る価格でも、新たに購入者を見つけた場合、銀行の了承のもと売却を行うケースを言う。どちらでも場合も銀行は損は免れない。

昨今の中古住宅販売では、このフォークロージャーとショートセールが増加したおかげで全体数字は底割れを免れている。ところがNYTIMESの記事では、銀行の中でも特にBAとGMACはこのショートセールに応じなくなっている。理由は、2009年の会計ルールの変更で即時償却の対象から外れたフォークロージャーを優先したいことと、ショートセールでは前のオーナーが超低価格で別人に売却したところ、実はその別人が親戚で、安く買えた「利益」をキックバックしていたなどとの犯罪行為が露見し始めたからだという。

いずれにしても救済政策が当たり前になった先進国の末路はどこも悲しいモノだ。特に中国と同様、性悪説が前提の米国は醜い。そんな中で衰退する先進国日本の性善説はどうなるだろうか。直接触れ合うと性善説は性悪説に勝てない。つまり日本は勃興中の性悪説国家の中国にも、没落中の性悪説の米国にもこのままでは餌食にされるだけだ。ならば最後は神頼みか。個人的には神の存在を信じ、モラルを維持したいと考えている・・。

<成長の原点> 11/28

本日10月28日は米国及びNYのシンボル、「自由の女神」の完成記念日である。ご存じの様に女神像はフランスが米国の独立を祝い贈ったプレゼント。だが運ばれた当初、分解された女神像はニューヨーク市の資金不足から建設のメドが立たず長く放置されていた。そこで別の6都市が自由の女神を引き取りたいと申し出た。その危機感から当時の最大の新聞だったニューヨークワールドを買収したピューリッザー(ピューリッザー賞)が全国に寄付を呼び掛けた。そして集まった資金でニューヨークは自由の女神を組み立てられたのである。

考えてみれば当時のフランスは太っ腹だ。それほど永遠の宿敵である英国の弱体化が嬉しかったのだろうか。ただその独立戦争で米国は英国に完勝したわけではない。戦争の司令官のジョージワシントンはナポレオンや信長の様な戦上手ではなく、米国は緒戦で負け続けた。だが、彼はフランスの参戦で流れが変わるまで粘り強く戦い、何よりも英兵のような訓練を受けていない米国の農民兵を諦めさせなかった。ここがワシントンの真骨頂である。

建国の父ながら国のグラウンドデザインには関わらなかったワシントンが初代大統領になったのは、ジョンアダムスやジェファーソンなどの学識派がその威厳をワシントンの中に認めたかである。そしてこの資質は今日の大統領選挙でも必ず問われる。

この様に、米国の独立戦争とは、13州合わせても当時200万人前後の人口だった植民地が、10倍の2000万人の人口を持っていた大英帝国に挑んだ事が本質である。日本の世界史の授業ではアメリカが英国から独立した背景は勉強する。だがこの本質を知っている人は少ないのではないか。そして当時のフランスはその価値を認めたからこそ100年後にこれ程の贈り物をしたのだろう。この様な経緯を経て1886年に女神像の組立ては完了した。オリジナルは鋼色。それが25年で緑青色になり、その頃には女神を見上げながら新天地に入植した欧州からの移民は1500万前後になっていた。

独立が成長の原点だった歴史からすると、今の米国は変わってしまった。まあ日本にはとっくの昔にこんなロマンはなく、現代人はアイドルが主役を務めるようになった大河ドラマを楽しみ、あとは戦争をひたすら否定するのみ。 中間選挙後の米国はどの道を行くのだろうか・・。

<TEA PARTY ON FED> 11/29

下は昨日のロイターの記事の抜粋。TEA PARTY候補者がFEDの金融政策に対して何を言うか。これまで話題にならなかった事について興味深い記事だ。また、当初上院金融委員長のクリスドットが主張したNYFEDの総裁は大統領が任命し議会が承認する、つまり理事と同じする案は先の改革法案では骨抜きにされた事が判った(赤線)。ところで、2日の選挙ではTEA PARTY候補者が勝てるかどうかはまだ判らない。たとえ全員が勝ったとしても、新しい議会勢力の15%程度にすぎない。だが、大なり小なり共和党は同じコンセプトである。選挙後、下院の銀行委員長はバーニーから共和党の誰かに代わる。ロンポールもその資格は十分有するが、共和党もさすがに世の中がひっくり返る事はしない。恐らくアラバマのバッカス議員だろう。このポストがバーニーからバッカスに移るだけでもダウは1000ドル下がっても驚かない。・・

http://www.msnbc.msn.com/id/39895240/ns/business/

< TEA PARTYの真贋>
日本のニュースでも米国の中間選挙の報道が盛んだ。中でもTEA PARTYについてはNHKも詳細に報道していた。ただその本質に関しての報道はどれも不正確。TEA PARTYはここで何度も紹介しているCNBCの債券リポーターリックサンテリが生みの親である。2009年、彼がCNBCの番組の中でオバマ大統領を名指し、「大統領よ聞いているか!我々は自分の収入を超えて豪華な家を建てた隣人の尻拭いをするために税金を払っているのではない」と噛みついた事に端を発する。その際リックは報道人にあるまじきヤケクソになって「俺達はTEA PARTYを開く」と叫んだ。それにその日の午後、ホワイトハウスが反応してしまった。今となってはこのホワイトハウスの反応が民主党にとって大失敗だった。一報道関係者の過激な発言に慌てた政権を見て、共和党は反撃の手掛かりをつかんだのである。

選挙ではキャッチフレーズのは重要だ。まず議員を引退しながらも細々と共和党の盛り返し運動を続けていたデイックアーミーが自分の団体の活動に「TEA PARTY」を名付た。次にサラぺイリンも自分の資質への批判をかわす意味も含めて賛同し始めた。そしてケネデイー議員の死後、その予備選でTEA PARTYの本家であるマサチューセッツの上院選でTEA PARTYを語った無名の共和党の新人が民主党の候補者を破った事で決定的なうねりとなった。

この様に、「TEA PARTY」は、反撃の手掛を模索していた共和党の選挙関係者に、オバマ政権自身が自ら弱点をさらす事で生まれた現象である。言い換えればTEA PARTYは選挙の道具であって、その原則は選挙が終わればどうなるかわからない代物である。見たところ、TEA PARTYを叫ぶ新人の中で、何があってもTEA PARTYの原則を守りそうなのはロンポールの息子だけだ。事実TEA PARTYが目の敵にする健康保険法案は、そのケネデイーの議席を引き継いだその共和党の新人が妥協した事で廃案の淵から復活したのである・・。



ただそうはいっても直に原則を翻しては政治生命は終わる。よって宴のあと共和党が勝つ事で株が下がる時が来よう。そしてその時が本当のTEA PARTYの真贋が試される時である・・。











2 件のコメント:

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