2010年11月7日日曜日

ロスト (漂流国家)

これも中間選挙の結果からだろうか。沈黙を破り、露出を始めたG.W.ブッシュ。NBCの看板キャスターマットラウアーのインタビューに応じた彼は、ラウアーから「貴方は金融危機を引き起こしたウォール街の金融機関を酔っ払い運転と批判した。ならばなぜぞのウォール街から車のKEYを取り上げなかったのか。」と迫られた。直には答えられないブッシュ・・。絞り出した答えは、「規制が緩すぎた、その上で間違った判断があった・・。」との弁。

ならば彼は今回の共和党の選挙メッセージと逆のこと言っている事になる。なぜなら勝利した共和党は、再び規制緩和を公約にしているからだ。いずれにしても、小さな責任は追及しやすいが、大きな責任は追及できない民主主義の限界が出ていて面白い。そして、本来ならそんな矛盾の追求はメディアの役割だ。だが今の時代、米国ではWポストなどのメデイアは政権の広告塔になってしまった。その意味で話題のWIKILEAKの創設者の「既存のメデイアは真実を伝える力を失った」という主張は正しく、結果、イラク戦争の秘密映像や尖閣の映像がネットに流れるのも世の中の自然な流れだ。

そして今、この新しい時代に対する各政権の対応は、今のその国の実力を物語っている。まず米国では正義は何処かへ行ってしまった。オバマでさえWIKILEAKによる無責任な情報公開は人命(米兵)を危険にさらすなどと言っている。ではWIKILEAKIが伝えたあの映像(米軍の誤射で死ぬイラク市民)で殺された人の人命はどうなるのか。そして映像に沈黙する米国社会。庶民は自分の生活が苦しくそんな事を考える余裕がない。そして金持ちの興味はどうしたら金融危機の前の時代に戻れるか、それだけである。その証拠が今回の選挙結果だ。

その点中国は元々国家は黒を白と言ってきた国。事実などどうでもよく、今回の衝突映像の露出に対しても、日本政府の慌てぶりに比べ、中国政府の反応は過激ではない。そしてその「中国型」国家主導経済は韓国をも刺激し、話題のミャンマーの軍事政権は当然ながら、米国にとって最重要国家のパキスタンも中国にべったりである。この様に世界は米国型スタンダードから乖離を始めているのは明らか。そしてそれは米国自身が嘗ての信念であった正義と市場原理という資本主義の原則を実行できなくなっている現実からも決定的である。

そんな中でいったい日本は何をしているのだろう。世界の潮流の変化からすれば取るに足らない小さな責任の所在で政治家は迷走。そしてその現象面だけを追いかけ国民に対し本質の解説をしない既存のメデイアのレベルは目を覆うばかり。

グローバルスタンダードが終わり、各国が独自に舵を切り始める中で明らかに日本は「ロスト」の状態である。世界の潮流の先を読み、敢えてリスクを取って国家を誘導する政治家は見当たらない。そしてこの状況に憂いを感じる人たちの中には盛んに米国の陰謀説を唱える人がいる。だがそれも違う。米国に17年も住んでいれば判る。米国にとって日本は陰謀など必要のない国。全ては日本自身の問題である。






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