2010年11月19日金曜日

カジノ屋の決断

その昔地方で証券営業をしていた頃、好んで新規開拓をしたのがパチンコ店だった。オーナーの多くは日本人ではなく、同僚の多くが怖がって近寄らなかったが、ホテルの仕事で人には慣れていた自分としては怖いとは思わなかった。そしてその地区で最大手のチェーン店を展開する韓国系のオーナー兄弟に対峙する事が出来た。兄弟は帰化はしていなかったものの、地元では既に名士として認められ、名門「和合」のメンバーでもあった。 結果的にこの兄弟からは30億程度の資金導入に成功した。残念ながら儲けさす事ができなかったため付き合いは繋がらなかった。だが彼等はからはある重要な事を教わった。それは「パチンコ屋はパチンコをしない」だった。こちらでこの鉄則を思い出すのはドナルドトランプ氏を見る時だ。昨日はCNBCが彼の特集を組み、そして本日再びCNBCに出た彼は、噂の政治家への転身が本気である事を認めた。 そもそも多くの日本人は彼の本質を知らないかもしれない。トランプ氏はあの風貌と派手なパフォーマンスから、一代で富を築いた「山師」の様に思われがちだ。だが、本当は「斉藤道三」ではなく「織田信長」である。つまり二代目。彼には不動産で成功した父親がいた。後を継いだ彼は、80年代の不動産ブームに一旦は頂点に上るものの、90年代の初頭は大苦境に陥る。 この話は前もしたが、モデルで後継者であもる娘のイバナがドキュメンタリー番組で告白したのは、父親が外では絶対に見せなかった苦悩。彼女が9歳の頃、莫大借金と離婚問題を同時に抱えたトランプ氏は、自宅の5番街のトランプタワーの土台に居座るホームレスを見て、「彼は少なくとも今の僕より8000億は金持ちだ。なぜならトランプタワーに座っている」と漏らしたという。 父親が何を言っているのか判らなかった彼女が、当時のトランプ氏のバランスシートが8000億の債務超過だった事実を知ったのはずいぶん後になってからだという。そして苦境を乗り切った彼は再び輝いた。だが彼はそんな中で「軌跡は二度起こらない」事を知っていた。そこが「桶狭間」をその後の戦で絶対にしなかった信長と似ている。つまり、カジノ経営者の彼にカジノ感覚は存在しないのである。 そして、筆者が「パチンコ屋はパチンコをしない。」の言葉を思い出した頃、彼はビジネスモデルを転換した。自社ビルを次々に売却、一方で他人の資産にはトランプの名前をどんどん貸し、ビジネスをバランスシートからFEE(手数料)に変えた。そしてNBCでは超ヒットシリーズに育ったAPPRENTICEシリーズを始めたのである。 そして今、APPRENTICEシリーズはドイツでも始まった。地味なドイツとトランプ氏の派手さの組み合わせは番組に奇妙な雰囲気を醸し出していた。ここでも彼には莫大がFEEが入る。だが、彼は金融危機で下落した商業不動産には全く興味がないという。もし彼が正しいなら、この国は厳しい事になる。だがその近未来の米国への危機感からだろうか、彼は本気にで大統領選への可能性を探っている。恐らく、カジノ経営の全てを知っている彼からすれば、これ以上米国という国家がカジノ化していく様を黙ってみている事が出来なくなったのだろう・・。

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