2010年11月23日火曜日

名誉の背景

映画「ブラックホークダウン」では、後にメダルオブオナーを受ける二人のデルタフォースが、墜落した2機目のブラックホークの乗員を救出に向かうシーンがある。空からでは乗員の生死は不明。1000人を超える市民が襲いかかる中、躊躇する司令官に対し、彼等は志願して降り立った。たった二人で瀕死の仲間を守る彼ら。しかし手持ちの弾丸が尽き、終にモガディシュー市民の容赦ない弾丸は彼らを貫いた・・。

ピューリッザー賞を取ったMボーデンのドキュメンタリーを、限りなく現実に近く再現したこの映画でも、この二人の戦死のシーンは映画の山場だ。そして、この二人がベトナム戦争後途絶えていたメダルオブオナーの対象になった事は、偶然にも米国赴任の飛行機の中でこの戦いを特集したタイム誌に衝撃を受けた筆者としては、その後のアフガン イラク戦争を通して米軍の現実を探るインセンテイブになった。

ただ本日、その流れからすればあまりにも奇異なシーンに遭遇した。奇異なシーンとは、ベトナム戦争以後では初めてとなる生きたままメダルオブオナーの勲章を受けた兵士が、本日CNBCに登場したのだ。

サルバトーレギンタ軍曹は終始強張った表情のまま「自分以外にも埋もれたヒーローは大勢いる」と主張した。

ギンタ軍曹の名誉を傷つける意図は全くない。だが今回の彼の授与と、ソマリアで戦死した冒頭の二人。またアフガンイラク戦争で戦死した直近の3人のメダルオブオナーでは相違点がある。まずは授与までの時間。その場で戦死した5人の受賞者は、授与が決定されるまでにそれほどの時間がかからなかった。だがギンタ軍曹は美談から2年が経ての突然の受賞。これには本人が一番驚いた様子が彼自身の言葉の端々に出ていた。

オバマ大統領から直接メダルを授与された際のスピーチでも、「自分のストーリーは誰かが偶々ワシントンまで伝えただけで、もっと多くの勇気ある行動は埋もれたままだ・・」と主張していた様に、強張った笑顔の裏で本人はこの名誉を消化しきれていない様子が出ていた。

似た様なシーンはクリントイーストウッドの「父親たちの星条旗」やHBOの「パシフィック」の中のシーンにもある。そこで描かれたのは、本人の気持ちとは別に、国内事情で米国という国家がヒーローを必要とした当時の時代背景である。

ずばり、彼の受賞が美談から2年後に唐突になされた背景には同様の思惑を個人的には感じる。だがなぜCNBCにまで出るのか。ギンタ軍曹は軍や政権の命令に従っているだけだろう。だが彼と、彼の怒りにも近い真実の主張の横でへつらうCNBCのレギュラー陣の組み合わせはあまりにも奇異だった・・。




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