2010年11月15日月曜日

本当の次のテーマ <資本主義の二大潮流>

下に添付したのは、米国で中間選挙が終わり、APECやG20などの国際会議を前にした11月9日付けの顧客レター<次のテーマ>である。だが、昨日のコラム<韓国の裏切り>でも示したように、ここでの韓国に対する自分の考えは間違っていた。そして、日曜日のNHK特集(灼熱アジア)を見て、本当の新しいテーマが何かが見えてきた。


<次のテーマ>11・09 顧客レター

中間選挙とQEに飽きた金融市場は次のテーマを探している。だが候補の?欧州危機セカンドバージョン(アイルランドの財政難)のインパクトは迫力に欠け、このまま年末年始の休みモードに突入しても驚かない。そんな中、各国がFED批判を公然と始めたG20は本来はもう少し面白くなってもよいはずだ。だが仕切るのが韓国では米国を窮地に陥れる役割は演じ切れないだろう。韓国は中国型の国家主導資本主義も厭わない一方早々に対米で完全自由貿易に賛同した国。こんな矛盾が可能なのは言ってしまえば韓国が小国だからだ。まあ尖閣と円高で思考が止まったかのような日本からすればうらやましい限りだが、G20 はバトンがフランスに渡る次からが鉄火場になろう。既にサルコジは全ての前例とタブーを超えて新しい通貨の枠組みを造ると豪語している。経済の実力では完全にドイツに敗北したフランス。この国は知る限りカール大帝とナポレオンの時代を除いては全く戦争で強かった実績がない。だがどんな時でも勝ち組に席があるしたたかさは実力以上に己を重要に見せるタイミングの取り方が絶妙だからだろう。サルコジもその伝統は知っている様だ。


ところで米国は中間選挙が終わり共和党が次の作戦を練っているところ。全体感は、勝った勢いで財政問題に強硬に出て失敗した94年の反省から慎重である。そして彼等の懸案はやはりTEA PARTYの処遇だ。選挙の結果TEA PARTYを自認する下院議員は60人前後、上院でも2人が入った。だが上院選はビルクリントンの予想は正しく、TEA PARTYは結果的に共和党の足を引っ張った。なぜなら予備選で現職議員や実績のある穏健派を打ち破ったTEA PARTYの候補は民主党の逆襲に敗れたからだ。(ネバタとデラウエア)。そしての最たる結果がアラスカ。アラスカはTEA PARTYを引っ張るサラぺイリンの地元。ここでは現職だった共和党の女性候補者が予備選でTEA PARTY候補に敗れた。だが本選で彼女は無党派でそれもWRITEIN候補者として立候補しどうやら最大の得票を得てしまった。(WRITEIN候補者とは、投票用紙の名前がなく、投票者は自分が推す候補者の名前を書く・・)

この現象からも共和党のリーダー(ベイナー下院議長 カンター下院多数派総務 マコーネル上院少数派総務)は選挙には勝ったがソレが全て共和党への信認になるとは考えていない。そして金融市場が注目するは下院の金融委員会の議長ポスト。ここは2006年からバーニーフランクが仕切った最重要ポストである。60人のTEA PARTY議員の6割はFED廃業に賛成だが、さすがにロンポールが議長になる事はなく有力なのはバッカス氏。だがTARPに賛成した彼に対して反対する意見も多く対抗馬としてカリフォルニアのロイス議員が挙がっている。実は共和党内でのこの勢力争いは2012年の大統領戦に向けて最も注目に値するところ。

そもそも東海岸の一部共和党やバッカス氏などは民主党よりも親ウォール街である。だが彼等は共和党の主流ではない。近代の大統領選ではこの地区から立候補した共和党の候補者は予備選さえ勝ち抜けない。(一番典型的なのはネルソンロックフェラーと前回のロムニーだろう。そして、東海岸出身の共和党大統領はセオドアルーズベルトまで遡るが、彼はサウスダコタ色が強い)つまり、これから米国が本当に共和党色を望むなら、その時は奇異なサラぺイリンでも、ウォール街の番人でもない、別の誰かが共和党を率いているはずである・・。

そして本当の次のテーマとは何か。それは今日の顧客レターで示そう。

< 資本主義の二大潮流 >11・15顧客レター

さて、2年を待たずオバマ政権の首席補佐官を辞し、昨日地元のシカゴで市長選への挑戦を正式に表明しただったラム マニュエル。そこで彼は精いっぱい力説した・・。「僕の政策は必ず有権者全員の利益に繋がる。だが、その前に今の困難を克服する為、全員が負担をシェアしなければならない・・」。後半の部分を言えずCAHNGEとYES WE CANだけが独り歩きしてしまったオバマ政権。凋落する今のオバマ政権の惨状はそのしっぺ返しである。政権中枢でその失敗を目の当たりにしたマニュエル。だが、彼のストレートフォワード(剛直さ)地元のシカゴで受け入れられるかどうか、その保証はない。

そして外交で傷ついたオバマを癒した日本。その日本では、土曜日と日曜日にNHKが秀作ドキュメンタリーを流した。灼熱アジアシリーズだ。土曜日は2億の中流層が、金利の概念がないイスラム金融から、お金がなくてもモノが買えるクレジットに戸惑いながらも市場金融に目覚め始めたインドネシアでの攻防。みずほコーポレート銀行と三井物産の日本勢に地元の銀行や英国資本が絡らむ。そして日曜日は、既に80兆円産業の中国の環境ビジネスに楔を打った韓国勢と、その分野で優れた技術を持ちながら韓国に後れをた日本の違いが何かを示す秀作だった。

いずれにしても、このドキュメンタリーを米国から見た感想は「羨ましい」である。感じるのは実物経済が真に灼熱のアジアのエネルギーと、モルヒネを打ちながらの末期の金融ゲームに興じる米国のあまりの違い。そして今の世界経済には純粋な資本主義は既に存在ぜず、中国圏を中心にシンガポールや韓国などが脇を固める「STATE CAPTALISM」と、衰退した先進国の「SOCIO-CAPITALISM」が混在している。

ならばその中で日本はどうするのか。シリーズはまさにこの問題を提示していた。そして答えは既に見えた。それは、日本政府の援助なしに孤軍奮闘した大阪の中小企業の社長が番組の最後で得たヒント、また三井物産本社から現地企業の社長に派遣された若手社員が語った自信の中にある。彼は、宗教的にも中立、そして国際情勢で敵を造らない日本はインドネシアでのビジネスでチャンスはどんどん広がると確信していた。ベトナムも然り、日本の中立性はやはり武器だ。だが問題は日本人がソレを使いこなす覚悟だろう・・。


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