2010年10月1日金曜日

水とお金の話

本日9月30日は、米国のある有名な建造物の完成記念日である。それは世界最大規模のダム。フーバーダムである。そのフーバーダムの建設が始まった頃の話から入ると、今のバーナンケFEDが非難する30年代のFEDは、株の暴落後、銀行を助けなかった。結果、1930年には600の銀行が倒産。連鎖は続き、33年には28の州で一つの銀行も営業していない状態になった。

こうなると仕事どころではない。30年まで400万人前後だった失業者は32年には1200万人に膨れ上がり、最終的には3400万人が全く収入の充てがないという状況に陥いった。当時の米国の人口は1億2千万人。今の日本と粗同じである。ならばこの数字がどういう状況か、日本人にも判りやすいだろう。

そしてその時代に始まったのがフーバーダムの建設。建設は政府が資金を出し、請け負ったのはフランククロウと言う民間人だった。着工の31年、クロウの元には5万人の失業者が集まった。ただ政府から許された工事期間は6年だった。クロウの報酬はダムから上がる利益の2.5%強、だが6年で工事が完了しない場合、期間が延びれば延びるほど彼は政府にぺナルティーを払う契約になっていた。そして数々の試練を乗り越え、ダムは1935年の本日9月30日に完成した・・。

ダムの記念日にちなんでこの話をした理由はいくつかある。まず共和党のフーバー大統領は、ダム建設を自分の代に起きた株の暴落、更には迫りくる大不況の対策として始めた事は間違いない。ただ引き継いだルーズベルトのニューデイール政策と比べ、このプロジェクトには共和党らしい特徴がある。まずは競争と市場の原理を徹底的に活かした事。

フランククロウはそれまでにもダム建設の実績はあったが、これだけの規模のプロジェクトは初めてだった。利益2.5%のヘアカットは魅力的とはいえ、史上最大のダム建設を6年で終わらせるのは賭けだったはず。そこで彼は集まった5万人から意欲のある5000人をまず選ぶ。そして彼等に掘削のスピードを競わせた。

次は史上初のコンクリートでのダム建設となった工事方法。彼は大量のコンクリートを手道のクレーンで上から流し込む当時としては画期的な作業法方を編み出したのである。この様に契約に対する責任感やイノベーションが本来は市場原理の真骨頂だ。結果、工事期間は予定より2年も早い4年で完了、クロウは契約に加え4億円を特別ボーナスとして政府から受け取った。そしてこのダムはカリフォルニをフルーツの宝庫に変え、砂漠だったラスべガスに人を集めたである。

ところで、今のベイビーブーマーの米国人は、大恐慌の前のバブルを引き起こした共和党政権を非難する。フーバーの評価はブッシュ並みに低い。だがこのフーバーダム建設はその需要と、何よりも国民にやる気と夢を与えたのは事実だ。一方のルーズベルトのニューディール政策。救済中心政策は結果を出せなかった。そして最後は戦争の破壊がこの国の経済を救ったのである。

さて、バーナンケFEDの金融救済とオバマ政権の景気刺激策、この組み合わせが30年と比べ、どこか同じでどこが違うのか、本日記念日を迎えたフーバーダムは丁度良いサンプルである。だがそのフーバーダムに関し本日CNBCは不気味な報道をした。盤石だったはずのコロラド川の水脈が細り、ダムの貯水量が最低を更新しているのである。

このダムの規模は日本にある2500のダム全部の貯水量である250億トンを上回る400億トン。また280億トンの琵琶湖よりも大きい。ならばこの規模の水がゆっくり減り始めた現象をどう考えるべきか。

個人的には市場原理を曲げ、本来死滅させるべきものを残したバーナンケFEDは、宇宙の原理と言う市場原理で必ずしっぺ返しを食らうと考えているが、フーバーダムの水位はその予兆かもしれない。そしてその結果、インフレと神の怒りの両方から、アリゾナでは「お金で水が買えない」時代がきても驚かない。


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