2010年10月6日水曜日

お金の罪

日銀が再び金融緩和に舵を切った。このように世界の中央銀行が協調してお金をジャブジャブにする中、米系最大手の銀行JPモルガン銀行は一般からゴールドを預かるビジネスを再開した。これを聞いて思い出したのは紙幣の始まりである。今日はその話をしたい

まず、一般的に国家として正式に認めらた紙幣の始まりは17世紀のオランダからと言われている。だがヨーロッパではそれ以前に実質紙幣の流通は始まっていた。その切欠はJPMモルガンが再開した金の預かりビジネスである。強盗が横行していた中世のヨーロッパでは、ゴールドスミスと呼ばれた鍛冶屋が庶民からゴールドや金細工を保管するビジネスを始めていた。そしてその際に発行したのが紙の預かり証である。

そして庶民はモノの交換で金地金を使わず、この預かり証の交換で済ませるようになった。この瞬間が紙幣の誕生である。そしてもっと重要な事は、ゴールドスミスは大変な事に気づいてしまった。それは実際に自分が預かっている金地金や金細工よりも多い量の預かり証を発行しても誰も気づかないと言う事。この時から鍛冶屋だった彼等は「銀行」と呼ばれるようになったのである。(信用の創造 レバレッジ)

そして数々の小銀行が乱立したが、ソレよりも大きな銀行が一つ存在し、どこでも通用する共通の紙幣を発行した方が便利だと考えるようになった。ただこの頃には本来は紙切れのはずの紙幣が価値を持つ事の本質的な恐ろしさを欧州の統治者は気づいていた。従って国王にとっても紙幣の流通は自身の統治能力を危うくする存在として厳しい管理下に置かれた。

そんな中、英国では希少なゴールドでもなく、また危険な紙幣でもない木片がお金として使われた。木片には単位を示す刻みがあり、流通している木片は元々の木片を半分に割った物だった。残りの半分を国王が管理する事で流通量と正当性を国王つまり国家が管理したのである。(流通している木片国王が保管している木片と対である事で整合性を証明)

ところが、このルールを曲げたのは、ヨーロッパの田舎国家だった英国の運命を変えた男として何度も紹介したヘンリー8世である。ヘンリー8世は木片以外のお金の流通規制を緩めた。ただ本格的に木片が紙幣にとって代わられるのは、それから150年後、英国の中央銀行が設立されてからである。

ただしこの時の英国の中央銀行は、国家期間ではなく、ビルパターソンという個人が経営する民間銀行だった。つまり、国王から認可された個人が紙幣の発行権を手にしたのである。

ここから先の中央銀行の本質、更に米国の歴史とのかかわりの話をすれば長くなり難しい。よってこのブログではしない。ただそれでも触れておきたい点は2点ある。まず中央銀行はあたかも国家機関の様な名称だが、米国の中央銀行と日本の日銀は国有化されていない事実。(前述の英国中央銀行は戦後に国有化された) 

そんな中で日米のメディアは「中央銀行の政治から独立」の記事は書いてきた。では中央銀行はその株主からちゃんと独立していたか。そこに初めて触れたのがニューヨークタイムスである。同紙は2008年、金融危機後、NY連銀の株主がJPモルガンなどの少数ウォール街の金融機関である事実を指摘。そしてそのNY連銀の救済で窮地のウォール街が救われたのは、原資が税金だった事から米国民を愚弄していると非難した。

そんな救済を可能にしたのが、NY連銀総裁は株主のウォール街が相談して決め、ソレをワシントンの理事会が承認するという仕組みである。(理事はバーナンケ議長以下上院が承認)

そもそも米国の中央銀行の正式名称は「FEDERAL RESERVE」。あたかも「国家的」な形容詞だが、その名称は実質連銀の根幹であるNY連銀の初期の株主のウォーバーグが付けた。そして1913年にその連銀設立の法案を遂行したのが当時の最も有力な上院議員だったオルドリッチ。

そのオルドリッチの娘はロックフェラー2世の妻である。その5人の子供の中で、次男はフォード政権下の副大統領のネルソン。また5男は今も健在でJPモルガンの前身であるチェースマンハッタン銀行を治めたデービットロックフェラーである事は有名だろう。

最後に、これらの話は巷にある陰謀説を追認するものではない。私自身は陰謀説に全く興味がない。だが、マネーの歴史でゴールドが果たした役割とその因果は、今世界中の中央銀行が紙幣の増刷に走ることでぶり返えされようとしている。

この結果、ロックフェラーやロスチャイルドが儲かるかどうかは判らない。だが金融商品を扱う金融機関が助かる事は確かだ。そして、金融危機後、本来はその責任から減らなければならない金融機関の影響力や人口が減らず、一方で人類にとってより重要な分野が疲弊する。

こんな政策を米国の中央銀行が主導するなら、この国の輝かしい挑戦の歴史は終わる。そのあとに待っているのは日本化ではなく英国化である。そしてすべての天罰として究極的なインフレが襲った際は誰が責任を取るのか。その時も今の弱者が更に困窮する事だけは間違いない・・。





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