2012年3月28日水曜日

3月の熱狂、日産センチュリー証券コラムからの引用



                             
アメリカ新素描               3月25日作成

                  < 3月の熱狂
 
 毎年3月に米国を熱くするのは大学バスケットのトーナメントです。こちらではこの熱狂を「March madness (3月の熱狂)」と呼んでいます。主催するNCAA(全米大学体育協会)には、今年このイベントを独占放送するCBSからの放映権やチケット販売などで720億円が入ると言われています。

 米国では、マイケルジョーダンが登場する前のプロバスケット(NBA)は、人気で大学のUCLAにかなわない時代が続きました。そして90年代以降は、先行した野球の悪影響で、プロでは組合によるストが頻発しました。結果選手の給料は高騰しましたがNBAは構造的な赤字体質になってしまいました。そして今年もストライキでシーズンが短縮される悪循環になっています。

 筆者がこの「3月の熱狂」を日本に紹介するのによく用いたのが夏の甲子園でした。日本人は高校野球が大好きです。ただ日本では甲子園はNHKが独占放映しています。これほどの人気番組をNHKが放送してしまうことは、米国の常識からは大きな(広告)ビジネスチャンスを無駄にしていることになります。ただそれに違和感を感じないのが我々日本人です。       

       
                 
              < 帰ってきたタイガーウッズSUNDAY >
 
 
 

 ところで、今日はタイガーウッズが2年半ぶりにPGAツアーで勝利を収めました。NHKもタイガーの勝利を伝えていましたが、久しぶりに、日曜日の午後に赤黒のコントラスト(赤いシャツと黒いパンツ)が緑の芝生の上でオーラを放っていました。ただ「ショットが好調だった」との解説は少し違います。好調だったのはパットでした。

 今日のタイガーは、パットに自信を持っている雰囲気が漂っていました。その自信が、そこに至るショットにも余裕を与えていました。そういえば、スキャンダルからツアーに復帰したタイガーはずっとショットが乱れていました。その時はスキャンダルの影響だと思いましたが、実はスキャンダルの少し前からタイガーのパットは乱れがありました。

 ゴルフは相場やビジネスに通じるところが多々あると思います。その証拠にゴルフで実績を残したジャック二クラウスやアーノルドパーマー、そしてグレッグノーマンは、企業家としても大成功しています。この比率は他のスポーツとは比較になりません。
 そしてゴルフや相場では着地点から逆算が重要と言われます。その理屈は皆が知っています。しかしこの原則をどうやって実践していくか。それはあのタイガーでさえ難しいのです。

 その点で我々は前述の3人の共通点を誤解しているかもしれません。彼らはトーナメントを勝った回数が他の選手に比べて圧倒的に多いわけですが、実は惜しいところで優勝をの逃した回数も23流の選手に比べて圧倒的に多いのです。筆者は、彼らがビジネスで成功している最大の理由は、勝った経験より、寧ろ、おしいところで負けた経験からではないかと考えています。

 同じ意味で、今日のタイガーには失敗から何かを学んだ雰囲気がありました。それを感じたのが3日目(土曜日)の後半でした。この時でタイガーは3打差で首位に立っていました。そこで小さなアクシデントがおこりました。

 
 前のホールで2位の選手がバーディーをとり、2打差になった後のタイガーの一打目は、民家の庭にぶち込むOBでした。タイガーがバックスウィングから切り替えに入る瞬間、ギャラリーの中の女性が大声を出してしまったのです。集中を邪魔されたタイガーのミスショットでした。ただこの直後、筆者はタイガーが昔とは違うことを発見しました。

 そもそも絶頂期のタイガーは気性が激しい方でした。優勝した大会でもショットを邪魔された後は怒りをあらわにしていました。しかし今回のタイガーは違いました。ミスショットの直後、ギャラリーの方向を睨みましたが、次の瞬間には次のショットの準備に入っていました。この間彼は口をぎゅっと閉じていました。           

              
             < 克己心 >

 
  昨年癌で亡くなった杉原プロが「ゴルフは良いショットをしても変なところに行ってしまうことがある。だがそこから頑張るのがゴルフだ」だと言っていました。
 ゴルフは相場のマネジメントと通じるモノがあるといいましたが、一番大切なことはこの杉原プロの言葉だと思います。ただそのためには失敗から克己心を磨く必要があります。それは成功経験より、失敗から学ぶと言うことではないでしょうか。
 金融危機の前、タイガーの絶頂期は米株の絶頂期と重なっていました。ではタイガーが復活すれば相場も元に戻るのでしょうか。それは金融市場が失敗から学ぶかどうかにかかっているでしょう。                       

                                     以上
(注  克己心について)
自制(力)〉 self-control; self-restraint; self-denial (self-control や self-restraint が「外からの刺激や誘惑を無視できる能力」を意味するのに対して, self-denial は, 自分のやりたいこともあえてしない, という積極的な意味をもつ); 〈忍耐(力)〉 《形式》 stoicism.

克己心 the spirit of self-denial [self-control]