2012年3月16日金曜日

金融力と年金


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金融危機から4年でSPは1400を付けた。このペースなら最高値更新、SP1700説も不可能ではない。これは株を上げるが目的になったFEDの結果。このFEDの決断は、過去にとらわれない合理性と、もう一つは国民に苦境を耐える貯金がなく、こうするしかなかったという事情の結果である。ならば中途半端に貯蓄があるがゆえに原則を捨てきれない日本も、蓄えがなくなれば野に撃って出るしかない。もし日本がソレを望むなら、貯金がある間にでも、米国に習って金融の力を使うことだろう。(筆者はソレを望むべきとは考えないが)

ジェイミーダイモンのJPモルガンは、ウォール街の大手で金融危機でも唯一赤字にならなかったプライドがある。にもかかわらず政権に助けてもらいながら、高給を維持するためにリスクを取ろうとする他の金融機関と同じに扱われ、更にドットフランク法でがんじがらめにされるのが許せなかったのだろう。だからFEDの顔に泥を塗っても一発ガツンとやりたかった。その結果がSPの1400である。これも金融の力の結果だ。

ただJPモルガンとてFEDのチープマネーで傷を癒した。つまり金融のベネフィットを最大限に使った。そこは農業やメーカーではありえない。ここで増配し、株を買い戻せば、CEOとしてのジェイミーダイモンの報酬も爆発的になる。だがこの出費で体力を消耗し、そこに再び危機が襲ったらどうなるのか。昨日はTARPの救済を検証したニールボロフスキー氏 が、「銀行の増配は時期尚早」と警告を発したが、同じく慎重派の代表である債券投資家は今ポジションの下落に直面している。

このように、相場では世の中に慎重なファンドマネージャーが相場に勝てる補償はない。だがそれを素人が見抜くのは無理。 素人は肩書、まじめさ、時に勢いにに乗せらてしまう。そこは日興証券の営業マンとして、野村の兵(つわもの)を相手に同じ土俵で戦ったのでよくわかる。我々の時代の成績優秀の営業マンが、一流のファンドマネージャーになることは稀だ(ゼロとは言わないが)。だが悲しいかな、素人は営業成績一番という実績を勘違する。そのケースがAIJだ。

米国でも、慎重でまじめな人は、アナリストとして成功しても、実際のDEALではナイーブさが足を引っ張る事が多い。2003年の不祥事で独立系アナリストとしてSワイル会長率いるCITIのモラルを糾弾したサリークライチェク女史は一躍ヒロインになった。その後ワイル会長に請われてCITIの重役に転身した。しかし、急落するCITIで実績を残せず、知名度でバンカメでも重役でになったものの、失意のうちに業界を去った。(それでもCITIとバンカメで50ミリオンは稼いだ)。

また昨日のニューヨークタイムスに、顧客を餌食するゴールドマンの社風を暴露する公開辞表を書いたグレッグスミス氏は、セールスとしては50万ドルしか稼げなかった。ただ彼の辞表は、会社を蔑むというより、昔のゴールドマンに戻るように勧告している内容だった。つまり彼はGS思いのまじめな人だった。

このような有象無象の世界に放り出された日本の年金は赤子同然。まじめな金融マンを頼るだけではだめ。かといって運用がうまいグレーな人に金を預けるわけにはいかない。そうこうしている間に、日本の年金が欧米の金融ギャングが再び起こす次の危機に巻き込まれるのは時間の問題だ。

今日のクローズアップ現代では、年金運用に失敗した年金基金が、国から提供された部分の穴埋めに、基金を構成する中小企業に欠損金の負担を強制する構図が紹介されていた。中小企業の中には、本業とは無関係の欠損金の負担に耐えられす、廃業に追い込まれるところも出ている。

この話は酷い。運用に疎い中小企業の基金に支金を出し、運用を担当する投資顧問の観察を手抜きにした上で、欠損金の返却を強要する国にも大きな責任がある。

いずれにしても、これからはまじめでそこそこのファンドに金が集中する予感。さもなくば年金そのものをあきらめるべき。戦前はどこの国でも軍人を除けば年金は稀だった。つまり、年金の騒動は、究極的にはいまだ資本主義を掲げながら、人間そのものの新陳代謝を受け入れられない、成長が終わった先進国の戦後世代のジレンマを映し出している・・。