年初に寄稿した「4thターニング」では、先進国は「94年の基点」に戻る潮流にあるとしたが、一足先に確認できたのが米国の国富。FEDが発表した米国の国富の推移を観ると、2010年末の米国の国富(庶民の家計)は、ピークから37%減の1992年のレベルまで低下していた。一方株は2010年から20%程度戻ったレベル。だが住宅は回復していないどころかさらに下がっている。ならば米国の一般庶民の家計実態は欧州となんら変わらない。しかし米国は国家として物事が進む。ここが米国が米国たる所以である。
レーガン時代の「DONT WORRY BE HAPPY」のコンセプトは、日本では聖徳太子が残した「和を持って尊しとなす」と同じ社会の基盤。ただソレを支える政治システムも4年一度は必ず大きな波が来る。ソレが今なのはいうまでもないが、今朝はロムニーを応援するドナルドトランプ氏が、「オバマはサウジ国王と結託、選挙まではオイルを安くするが、選挙が終わればサウジに好きなだけ価格を上げてもいいと裏で約束している。だから選挙が終われば、(オバマが勝てば)米国庶民300㌦のオイルを味わうことになる・・と」主張していた。(cnbc)
ソレを聞いたジムロジャースは、価格が300㌦は賛成だが、サウジとの裏話などありえないと一蹴したのが笑えるが、まあトランプ氏もそんなことは承知で言っている。以前も紹介したように、彼は一度も共和党員として活動した実績がないどころか、救済政策であるチャプター11を過去4回も申請し、戦略的破産を駆使して蓄財したビジネスマンである。彼に清貧の美学や儒教をベースとした一般常識は通用しない。
ただ米国は過去が何であれ、未来に役立つ人間なら重視する合理性を実践できる数少ない国だ。破産法もノンリコースもこの国ではモノが動く所以の根幹。ただしそうはいってもこれまでは中間層が存在し、また同じ米国人として共通のテーマがあった(冷戦や対テロ)。ところが、米国の大統領選挙を内側から観察するのは5回目だが、今回ほど「人を殺さない内戦」の様な醜さを感じたことはない。それほど醜い。もし今の日本にこの醜さが伝わらないなら、それはオバマとロムニーの二人の候補者が、一般的には優秀といわれる教養を身に着けているからだろう。
だが担いでいる取り巻きは違う。トランプ氏まず自分の番組の価値を高めるため?共和党の大統領候者として話題をふりまき、さらに共和党を代弁するスプレッド(税金や規制、さらに人種的あるいは価値観)を無くすオバマ政権が継続する可能性をあらゆる手段で阻止しようとしている。ならば紹介した今の米国の国富が92年のレベルであるという時限爆弾はいつどう破裂するのか。この危険性をはらむ大統領選挙と比べ、日本の自民党と民主党の違いはまだまだ平和的。そして、モノが進まないヨーロッパの根回しは、あくまでも欧州的な答えの出し方としては違和感はない・・。
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