2012年6月22日金曜日

<癌だましい>の凄み


NHKで「癌だましい」という本の紹介があった。作者は癌だった母親を看取った後、自分も末期の食道癌である事が判明した女性。この作品文学賞を取った直後52才で亡くなった。彼女は生前は目立たない人だったらしい。病気になる前から小説は書いていたらしいが、古くからの友人によれば、病気になってから彼女は一変したという。死を宣告されてからむしろ生き生きとし、残された時間をどう使うか、楽しそうに話したという。作品は彼女自身なのか、癌に侵された女性が、残された時間を「食」にかけた壮絶な最後を追う内容。そして友人も、最後を看取った病院関係者も、またこの話を取り上げたNHKのディレクターも、生きる時間を限られた人間が、生きる事の本質に迫ろうとする執念に衝撃を覚えたという・・

寿命が伸びて戦争もない今、自分で自分の時間を区切ることはない。だが昔は寿命は短かかった。あちこちで戦いもあった。人間50年(長くて)。人は心のどこかで生きる時間を悟って生きていたのではないか。長生きはいいとして、いつまで生きるのか判らないと老後が不安だ。お金はもつか。不安になると冷静な判断ができない。金融詐欺は楽勝。だが自分の時間に区切りがあればどうだ。命なら、不安な気持ちで過ごすのはもったいない。作者からはそんなメッセージを感じた。

ところで、ならば政治も時間を明確に区切ったらどうか。日本の衆院任期は5年。だが満了で選挙になったケースはあまりない。これを大統領は4年。下院(日本の衆院)は2年で必ず選挙になる米国から見ると、日本は政治=政局にしか見えない。制度の違いは承知しているが、任期がはっきりしないがために本質とは別のところでエネルギーが向かうのは否めない。そして実力がなく不安な若手は小沢一郎を頼る。すると小沢氏の役割も終わらない・・。

また党が決めた方向にしか投票できないのもおかしい。米国は上院は当然、下院議員も選挙区民の意見を前提にもっと自由に法案を採決している。任期が2年と決まっているから必死。法案へのYES/NOはすべて記録され、改選では必ず対抗馬から突き上げを食らう。この戦いを20年以上乗り越えてきたバーニーフランクとロンポールの金融論は真逆だがさすがである。任期を全うさせることで、選ぶ側にも自己責任を促す。選ぶ人を間違えれば、次の選挙まで待たなければならない。ソレは自己責任。そうすれば投票率も上がるのではないか。いずれにしても、先進国が市場原理が曖昧になった弊害に苦しむ中(救済とモラルの狭間)、今日は己の時間を区切った人間の凄みを知った・・。


担当編集者から一言

表題作は、食道癌にかかった45歳の女性が、一切の積極的治療を受けずに、ただひたすら食べる欲求を持ち続けることで癌と闘う姿を、迫力ある筆致で描いた作品。作者自身、末期の食道癌を患っており、本作で第112回文學界新人賞受賞の一報を受けた後、帰らぬ人となりました。同時収録「癌ふるい」は亡くなる直前まで病院のベッドで校正を続けた受賞第一作。山内さんが最後の力を振り絞って提示した「生き抜く力」を感じて下さい。(KK)

1 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

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