2009年4月25日土曜日

三国志の終り(A.F.からA.C.へ)

本日フォードが決算を発表した。赤字幅はアナリストの予想を下回ったが、まだまだ大幅赤字だ。しかしゴールドマンが同社株を推奨した様に、国内の自動車販売には改善の兆しが見えない中でフォードは勝ち組として投資家の注目を集めている。その理由は簡単、競争相手が消えるから。市場支配は衰えたとはいえまだ全米で走る車の半数はBIG3の車。フォード車の性能が格段上というわけではないが、クライスラーとGMは破産が控えている。要するに米国の自動車三国志が遂に終焉を迎える発想である。

ただこの発想の後ろに控えるのは自動車の耐久消費財の王様として普遍性である。昨日のコメントで究極のグリーンは車にのらない事としたが、本当に皆がそのグリーンになれば世界の産業は崩壊する。そこで一つの本を紹介したい。題名はBrave New World この本が書かれたのは1931年。大恐慌初期である。作者はALDOUS HUXLEYというオックスフォード大出身の英国人。西暦2540年の未来の人間社会を描き、当時その物質批判的内容から世界中で発禁になったというこの本の注目は、作者が紀元後を表す年号をA.D.を使わずA.F.という興味深い独自の年号を使用した事。このA.F.とはAFTER FORDの意味である。

元来車はヨーロッパで高級消費財として生まれた。そう言えば今でも英国のメーカーは高級志向を崩していない。その車という商品を一般人でも購入できる大衆消費財に変えた発明はT型フォードからという話は有名だ。即ち車には二つの誕生日があると言う事だろう。一つはヨーロッパで貴族の特権として生まれた日。そしてもう一つは車が大衆に降臨した日。それはヘンリーフォードから始まり、米国人の価値観と生活習慣を「消費が豊さの証明」という現在までの経済発展に繋がるロジックが確立された起源だったと考えられる。そしてこの英国人作者はその本質を当時すでに見抜いていた。それをA.F.なる独自の視点で表現した先見性には驚嘆せざるを得ない。

いずれにしても米国は現政権の特徴の理想主義の結果として多くの面で矛盾を抱えたまま走る。グリーンはその典型だ。私には消費とグリーンの両立はまだ机上の空論。消費へのインセンテイブなしにどうやって米国は立ち直るのか全く想像できない。ただA.F.の時代に先進国にモノは溢れた。今は本当に必要なモノは殆どの人が持っている。買い換え需要のコントロールで企業は時間を稼いだが、それにも限界があって金融桃源郷へ走った結果が今の姿だ。ただ一つはっきりしているのはこれからも消費が世界経済を牽引するなら、その時代は中国の時代という事。ALDOUS HUXLEY氏ならそれをA.C. (AFTER CHINA RAISE)とでもするのだろうか。

最後に、魏呉蜀の「三国志」は結局は短命の晋を経て「五胡十六国時代」の混迷に繋がっていく。個人的にはフォードの未来はゴールマンの予想ほど楽観してはいない・・。




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