NHKの朝のニュースでは、今週末にNHKスペシャルとして「マネー資本主義、暴走はなぜ止められなかった」という番組を放送する事を紹介していた。最近のNHK特集は秀逸なモノが増えてきた印象だが、このドキュメントの完成度が今から注目される。一方その主人公の米国市場には今不思議な浮揚感が漂っている。 ただ市場に浮揚感はあっても経済の回復は程遠い状態だ。昨日も来客があり、何十年に渡りシカゴでトップクラスの人気を誇るレストランに行った。シカゴ在住13年でここで食事をする機会は30回はあったはず、だが昨日はどんな時でも混んでいたこのレストランの空席の多さに驚いた。いずれにしても市場と経済の乖離は今に始まった事ではない。しかし、この乖離を錯覚とするなら、この錯覚の扱いが今の政権の最大の課題になっている。それはこの錯覚をそのままにするのか、あるいはバブル再構成という失敗をしないために国民に覚醒を促すのかである。その場合はデレバレッジは再び加速し、SAVINGレートは一層改善する事になる。
そもそも今回の市場の好転は暗黒ムードが漂った3月初旬にサマーズが中心となり、政権のモードを粛清から楽観へ切り替えたところから始まった。しかし一方で一昨日のスピーチでもオバマは繰り返し「この危機を乗り切った後も米国は以前の金融が経済の4割りを占め、その金融が無謀な賭けをする事で株価を維持する経済には絶対に戻らない」と明言している。しかし現実はGDPの4割を占めた金融が回復しないと何も始まらなかった。だからサマーズが微調整を進言したのだろう。そしてその成果は出た。ただ今の政権は矛盾を抱えたまま。この後その加減をどちらに持って行くのか。それを見極める一つがストレステストだ。そもそもストレステストはその具体性が明らかにされないまま市場はこの話を材料にしてきた。そして課題が明らかにされなかった以上結果がさじ加減でも不思議はない。即ちストレステストとは合否の話ではなく政権の方向性の話である。ただその方性性を決める政権は一枚岩だろうか。ここまでの観察からは、景気回復を実現するためにはもう一度金融中心のバブル復活も止むを得ずと考えるサマーズ一派と、目先の株がどうなろうとも一旦は金融の役割を正す事に重点を置きたいガイトナーとオバマには隔たりを感じる。
さて2006年3月に米国はM3の発表を止めた事は当時その3カ月後に視点で指摘した。今ではここがバブル頂点への最後のシグナルだったの事は多くの人が指摘している。そもそも米国のM3 はFEDが発表を止めた時点で$10 trillion 強だった。そして民間のデータによれば今の想定M3は約$15trillion 。しかしその中身は金融危機を境にFEDの紙幣印刷による部分の寄与が圧倒的となり、逆に資産効果の原動力としてのM3-M2の割合は減少の一途のままである。逆に言えばここまで増えたM2に金融危機以前のリスクアペタイトが復活したらどうなるか。繰り返すが、バブル崩壊を更なる規模のバブルで復活させるシナリオとオバマ自身が主張する「以前の姿には戻らない」という理想は共存できない。よってこの後はTEA PARTYに代表される保守派の反政府運動と本来オバマ支持者の市民が金融至上経済の歪の実態を知る事による金融への反発など、国内の民衆運動の盛り上がりや、既にSEA CHANGEを認めて後戻りするつもりはない海外勢のプレッシャーが米政権がどちらの決断を促すか。その見極めが最大の課題である。
(参考)
http://www.shadowstats.com/charts_republish#m3
• M0: The total of all physical currency, plus accounts at the central bank that can be exchanged for physical currency.
• M1: The total of all physical currency part of bank reserves + the amount in demand accounts ("checking" or "current" accounts).
• M2: M1 + most savings accounts, money market accounts, retail money market mutual funds,and small denomination time deposits (certificates of deposit of under $100,000).
• M3: M2 + all other CDs (large time deposits, institutional money market mutual fund balances), deposits of eurodollars and repurchase agreements
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