8月5日の日経新聞を見ると、経済面に「ガイトナー激怒」との囲み記事があった。読んでみて失望した。内容はガイトナーが規制強化案の審議において、更にFEDに権限を与える政府案(サマーズ・ガイトナー案)に対し、各役所のトップが賛同せず、ガイトナーはその「縄張り争い」に怒りを露わにしたとなっている。ただこれでは正義はガイトナーで、それに対して他が小言を言っている様にしか読者は感じないだろう。だがその理解では今の米国を客観的に捉えた事にはならない。まず個人的分析では、彼等が政府案に異論を唱えるのは少なくとも縄張り争いからではない。彼等はその案では変化が期待できないか、場合によって悪化すると国益に照らして心配している。
まず今の米国はオバマ人気を利用した彼の後ろにいる人々が実は利益を享受している状態である事を日本も知るべきだろう。ブッシュ政権と違うのは彼等はチェイニーとハリバートンの様な単純明快な関係を好まないだけだ。無論オバマは全体が見えているが今は何もできない。そしてガイトナーとバーナンケは民間で働いた経験が無い事が恐らくアダとなっているのではないか。そもそもグリーンスパンはFEDの前には民間で働いた経験があった。だがバーナンケは大学卒業直後の26歳からFEDに参加するまで学者一本。またガイトナーは官僚になる為に生れてきた環境で育ち、大学卒業後にキッシンジャーの元で3年間修業してからはそのまま官僚一筋の人生である。
FED議長はともかく、財務長官職にガイトナーの様な「純粋培養型官僚」が就任した事は米国の近代史からは実は異例。そのせいか、ここまでの経過を見てもこの二人には民間なら必ず経験する「私利私欲の汚れ」が少ない事が逆に自分の考えが正しいと思い込んでいる危険性を感じる。そしてこの二人を上手に利用したWSは再び勝ち組となった。そんな中で現在政権下で金融を管轄する様々の機関で多くの人が辞め始めたという(CNBC)。今回各役所の反発はその様な声も反映しているはずで、この政権の限界に失望した人々が辞め始めたのではないかと個人的には考えている。
いずれにしても日経がこの程度の認識でソレを国民に広めてもらっては困る。これでは90年代フレッシュなクリントン政権が発した「見かけのスマート」さに惑わされ、気がつくと国益上はとんでもない失敗をしてしまった当時の国策の二の舞になる可能性を感じる。・・。
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