2009年8月1日土曜日

「今日の視点」の始まり

ここに掲載する話はほとんどが私が金融機関の顧客に送っている「今日の視点」というコメントからの抜粋である。ここでは一般向けに砕いた表現にしているが、今日はそのコメントを書き始めた切欠を紹介する。

2001年11月「KEEP ROLLING AMERICA(アメリカは死なない)」このキャッチフレーズを用いてジェネラルモータースが発表したゼロ金利プロモーションは衝撃的だった。そしてその言葉の響きは斬新だった。また同時期に別のキャッチフレーズも米国を鼓舞した。「LET’S ROLL」(さあいくぞ)、これはテロで墜落した飛行機の乗客が、「座して死を待つ」より僅かな可能性に賭けてテロリストに反撃を挑むその瞬間に発した言葉である。そう、まだテロ後の重苦しい雰囲気が漂っていた2001年の初冬、米国を復活へ導いたのはこの二つの言葉だった。

そもそも日米を比較しても、巧みなキャッチフレーズを生み出す能力は日本人が上。しかし日本人のキャッチフレーズはどこかシニカルで技巧的。それに比べこの二つの言葉には米国の前向きなエネルギーが満ち溢れていた。実は「今日の視点」を始めたのがこの言葉は流行った頃。当時はまだ米系大手に籍を置いていたが、既に「船」を下りて個として勝負する覚悟を決めていた。その準備のつもりで始めたのが自分の視点でコメントを書く事だった。そしてこの二つのキャッチフレーズから予想される米国の復活の可能性が記念すべき最初のテーマとなった。

実は本日の話題「CASH FOR CLUNKER」から8年前のその時を思い出した。(直訳はポンコツを捨て現金を手にしよう:政府が発動した新車購入補助制度)そして今、政府はこのプログラムの思わぬヒットに戸惑い気味だ。だがここまでの救済策の中で、庶民を対象とした一連のプログラムは殆ど評価を得られていない。例えばフォークロジャー(競売)阻止のプログラムでは銀行は政府の意図した行動に出ていない。むしろ政府から銀行に卸された救済資金は別なところで回され、決算を良く見せて高額報酬の復活の正当性に利用されている。

また新健康保険制度は中身があまりにも複雑な為に理解されない段階で政治的に死にかけているのはご存じの通り。そんな中で庶民から評価が得られたのがこの新車購入プログラムである。政府もそして議会もこのチャンスを逃す手はない。またエコノミストはこれで年間300万台の販売の増加が見込めると期待を寄せている。その意味ではこのプログラムが2001年のGMのKEEP ROLLING AMERICA の代わりになる可能性は否定しないし私自身もそれなりの効果は確信している。だが2001年にこの国に感じた感動を今は感じない。あの時と比べてもこの国は変わってしまった。それが残念なだけだ・・。



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