2009年8月29日土曜日

気のりのしない革命

海賊のドレークを擁し、エリザベス一世がスペインの無敵艦隊を破ってからヨーロッパの勢力図と英国の歴史が変わったのは周知の通り。その後七つの海を支配した英国は19世に世界の工場とも言われた。だが米国にその座を奪われてからは金融国家として生きる道を選んだ。そして今、中国が迫りくる中で米国も英国と同じ道程に入ったと考えれば今ここで起こっている現象は自然だ。その証拠に今日のワシントンポストには金融危機前と比べ、今は大銀行の支配力が格段に増している事が紹介されている。

具体的には危機以前は米国には単一の銀行がの国家全体の預金の10%以上を保有してはならないという厳格な規制があった。だが今はJP モルガン、バンカメ、ウエルズファーゴの3社の預金高はそれぞれ米国の総預金量の10%以上であり、また地銀と比べた彼らの調達コストの優位性は危機以前の8BPから今は25BPに拡大した。(低い金利で資金調達が可能)

この現象は危機を切欠にしたコンソリデーション(淘汰)の結果と考えれば当然だ。そもそも金融の世界ではその過剰な流動性を原因とした危機が一旦起ると結果的に混乱を起こした張本人が焼け太る事になるのを昔の米国は知っていた。だからその繰り返しで大陸の支配を強めた金融カルテルを見ながら、黎明期の米国には英国の辿った道程は通らないという覚悟があった。そしてその建国の父が残した伝統は中央銀行が発足した後も受け継がれ、少なくとも近年までは機能していた。

しかし100年以上を経て金融があまりにも巨大になりここまでグローバルに繋がると、そのシステムリスクという脅しを掲げられては金融批判を旗頭に登場したオバマもなす術はなかった。それが今の米国の現状である。そして今、(恐らく本人は無意識に)このまま米国が英国化すると考える人にとっては今の株価の戻りは当然と感じられるはずだ。だが素人が値動きだで米国が復活したと考えるなら、そこにはラスベガスと変わらないリスクがある。

ところで今日のWSJには日本の選挙の特集がある。そしてその書き出しは日本はRELUCTANT REVOLUTION(気乗りしない革命)に直面している言うもの。だが、そもそもRELUCTANT(気乗りしない)かどうかは日本人が決める事で米国人が決める事ではない。こんなところにも米国は現象を科学的、論理的に分析する手法にはたけていても歴史の中の意味として考える事は出来ない事が窺える・・。




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