2009年11月18日水曜日

困難への挑戦 (リーマン予想)

住宅ローンの支払いに苦しむ一庶民としては、昨日NBCが紹介した売れっ子俳優のフォークロジャー(競売)には憤慨する。その俳優とはニコラスケイジ。言うまでもなく彼は一作の出演料が10億円を優に超える売れっ子俳優の一人。本来彼とフォークロージャーは全く結びつかない。事実彼のスケジュールには2010年迄の出演作が5本あるという。だが彼は友人に管理を任せて投資をした住宅ローンの支払いを拒否。結局その豪邸は5億円の負債を残しフォークロージャーになった。普通ならば彼にも債務は残るはず。だが彼は有力な弁護士を通して失敗の責任は全て友人にあるとの責任逃れの主張しているという。

この様に危機後の救済天国を経て多くが安易な道を求め始めたのは事実。言い換えると皆がゾンビになってしまった後はまともな人間がゾンビだ。そしてその風潮の根幹であるFEDのバーナンケの発言からは、FEDが世界金融の中枢として厳粛な「バイブル」だった時代への回帰は遠のいたと言わざるを得ない。「バイブル」への回帰どころか昨日の彼の発言内容は市場を盛り上げるを事を常に前提する証券会社の関係者の様な有様。ただ考えてみればFED自身が巨大プレーヤーとして市場に直接参加し、そしてその決算に対しても責任が問われる時代になった事を考えれば当然かもしれない。ただそれでは行司やレフリーまでもが同じ金網の中でバトルロイヤルを繰り広げている構造。ただ其処には傷つき血だらけになったケンシュロウーはいない。いるのはミッキーマウスとその仲間たちである。

さてこの様に原理原則が無くなり、快楽へ回帰を成長の善として皆が受けいれる時代になった今、昨晩のNHK特集はそんな時代に一石を投じる意味で秀逸だった。そしてその内容は「リーマン予想」。ただこれはあのリーマンブラザースが自分の崩壊を予想した話ではない。150年前にドイツに登場した天才数学者のリーマン氏が残した数学史上最大で最難関と言われる定説(リーマン予想)の証明にボロボロになるまで挑戦し、そして破れ去って行った数学者達の執念のドキュメンタリーであった。

観逃した人のために簡単に紹介すると、リーマン予想とは「素数からゼータ関数を使って算出したゼロ値は素数自体に法則性が見当たらないにもかかわらず一定の法則で同じ直線状に現れるのではないか」という数学者リーマンの予想。この予想に対してノーベル賞やフィールズ賞を取った歴代の学者がその真理を解き明かすために心骨を注いできたという。だがその魔性の魅力に有名なナッシュ博士は病み、(ノーベル賞学者。彼がリーマン予想に挑戦し精神を病んだ話はラッセルクロウ主演で映画になった。BEAUTIFUL MIND)また最後に登場したフランスの著名な現役数学者のドブランジェ氏は過去3回リーマン予想の証明に失敗。結果それまでに築きあげた名声を汚した。だが80歳近くなった今も全てを捧げて研究に没頭している姿をNHKは追っていた。

そして番組は現在「物理学」と「数学」がこの素数の分析で結びつき、「リーマン予想」を解く事が宇宙物理の解明、即ち万物の原理の解明に最も近づくとの見解で一致している事を紹介して終わる。番組からは「数学」からは程遠い世界に住む自分も「1とソレ自身でしか割り切れない」「素数」の継続の魅力は感じる事が出来る。それは多々あるチャート分析法の中で私自身唯一用いるのがフィボナチである事と無関係ではない。ただボロボロになるまで挑戦する学者達をみて、なぜ彼等はヘッジファンドのルネッサンス(ジム サイモン)のところで研究を続けないのかと下世話な感覚に陥った。ヘッジファンドなら最新のアルゴリズムを生み出す高給アルバイトをしながらいくらでも研究に没頭できるはず。もしかしたら、リーマン予想に嵌った学者達には現在の金融の行きつく先が既に見えているのかもしれない・・。


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