2010年3月20日土曜日

心のバブルの顛末

先週も触れたが米国では日本株の推奨が増えている。中には日本株買い/中国株売りの裁定の推奨まで出た。理由を聞いて判ったのは、西洋先進国が日本と同じ「非成長」を密かに受け入れ始めた中、ここまで上がってしまった米株を今後も買い上がるためには遅れている日本株の水準をも引き上げる必要があるという事。3月末の日本株特有の動きに便乗している可能性もあるが、本質はそういう理由だった。

そして一方中国を売りたい理由も別にある。それは政治スケジュールが関係している。こちらでは健康保険法案の審議が終われば次は金融改革法案、また国際問題では中国との貿易摩擦(通貨問題)が焦点になる。そう、共に選挙戦の材料だ。11月の中間選挙に向け、議員は大手金融機関の暴利と中国の輸出が米国人から仕事を奪っていると叫ぶ事になるだろう。

この様に、市場関係者は中国との貿易摩擦を意識し先に中国株を売りたいのだ。ただその中に中国の市場経済は人類史上最大のバブルに入ったなどと解説する輩がいる。これには賛同できない。確かに中国の資産価格の高騰は危うい水準だ。だが中国当局は既に警戒して利上げを始めているではないか。むしろ米国人市場関係者がこんな事を言うのは自分はバブルとは思っていないという証拠。確かに米国では金融資産以外に価格の上昇はない。だが米国は他国のバブルを心配している場合ではない。なぜなら実体経済が比成長に陥る中、利上げする覚悟がないバーナンケFEDに甘やかされた金融市場は有頂天になっている。その彼らの心(マインド)こそが最大のバブルである。

そしてその様な流動性過多の市場は必ず感覚が麻痺する。今の市場は政治の異常事態への警戒心が希薄である。異常事態とは健康保険法案が山場を迎え、共和党の反撃が常軌を逸したオバマ攻撃になっている事。オバマはハワイ生まれだがハワイでは出生記録の不備が珍しくないという。そのハワイに付け込み、実はオバマはアフリカで生まで大統領になる資格を有しないなどする狂信的な共和党過激派の主張をバージニア州の司法長官までが取り上げている。彼は共和党が反対する健康保険法案が成立した場合を想定してか、仮にオバマが米国生まれでないなら、オバマが署名した法案は正当な国家の法案ではないなどと言い始めた。

世界がオバマ大統領の誕生を歓迎して既に1年。あまりにも馬鹿げている。またこんな争いを晒すのは国家としても本来は恥だ。ただそれだけ健康保険法案の成立がこの国の政治模様に及ぼす影響が大きいという事でもある。そして他方の民主党も非常事態。法案に反対する民主党議員には、民主党本部から11月の中間選挙で別の候補を立てるとの脅しまで出ている。こちらはこちらで法案を通すためは手段を選ばない。その一端がオバマのアジア歴訪の中止。予定日から1週間を切っての歴訪中止は通常の外交儀礼ではありえない。これは米国がいくら超大国でも、相手国の感情からすればかなりのダメージ。民主党本部とオバマ政権はその代償として同僚の民主党議員に法案への賛成を求めている。

この様に今米国では健康保険法案を巡り大変な事態が起こっている。だが心がバブルに犯された金融市場は反応がなく、またその金融市場か反応しないためか日本のメディアでこの法案審議の重要性を正確に報道しているところもない様子。まあ恐らくは日曜日に法案が成立、月曜が87年のブラックマンデイの再現になればやっとその時に気付くという事だろう。

そして忘れていたがいずれにしても今の米国で普天間が話題になる可能性はゼロ。だから日本政府は米国を意識して普天間問題に拙速な判断を下す必要はない。むしろこの米国の混乱を利用して交渉を優位に進めるべきである・・。


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