2010年3月12日金曜日

JPからCITIへ

ここでは本業である米国金融市場の具体的な話、即ち相場の現象面については殆ど触れない。それは無料で公開するブログと、マックのコーヒーが無料というデフレ社会日本においても、米国の政治経済と金融市場との具体的な関連をえぐる私の情報に手数料を払う顧客への情報と差別化をはかるためだ。だが先日、うかつにもここで「ソフトな老獪」とのタイトルで、米国政府が様々な理由で近々保有するCITI株を上げようとしていると紹介してしまった。そしてその3/5日から今日で5日目。今週に入ってCITI株は高騰。なんと昨日と本日はニューヨーク証券取引所の全取引の25%がCITI株の出来高だった。そこでせっかくなのでその背景の一つをブログの読者にも紹介する。

まず2008年の金融危機発生から今日まで、四半期ベースで一度も赤字を出さなかったウォール街の大手金融機関が一つだけある。それはJPモルガンだ。そのトップのダイモン会長の名声は最早説明する必要はない。だが実は先週からCNBC(金融市場専門番組)では名声の主役がそのダイモン氏からCITIのパンデイット会長に代わったのである。その現象はニューヨークタイムズ紙でも同様。同紙はここにきてダイモン氏の手腕を「地味すぎる」と批判的な記事を掲載し (9日版) 、逆にCITIのスリム化にメドを付けたパンデイット会長を異常なまでに評価していた。これは金融危機当時、メディアはパンデイット会長を無能者扱いした事実からすれば豹変である。ただメディアとは所詮こんなもの。そして今週に入ってのCITI株の沸騰が示す通りソレがそのまま出るのが株式市場である。しかしデフレ懸念が米国でも漂う中、銀行経営の本番はこれから。ならば危機の最中もJPモルガンを赤字にしなかったダイモン会長が更に評価されてもよいはず。ところが実際は逆の現象が起こったのだ。それはなぜか。

そもそもこの国ではデフレは受け入れられない構造がある(借金だけで現預金がない)。だから今はあの金融危機は何かのアクシデントで、構造的、普遍的な原因があったわけではないという結論に片付けようとしている。実はこの成長前提主義が今回の金融銘柄の高騰の地盤だが、中でも危機の象徴だったCITI株を復活させる事で政府はCITI救済の正当性を国民に訴える事ができる、そしてその勢いをそのまま3月18日をめどに山場を迎えた最大のテーマである健康保険法案の成立に結び付ける意図があったのだ。だがそのCITI株も16日で転換日を迎える。(政府がそのあとは自由に優先株を売れる)ではそのあとCITI株を買い上げた流動性はどこに向かうのか。おまけ情報だが、どうやら次のターゲットは日本である。その理由はあえて触れない。ただ昨日からCNBCでは盛んに日本株の推奨が始まっている事を紹介しておく。

この様にFEDのスタンス変化や欧州情勢などのマクロ経済の限界を超えられない中では次々に新しいテーマを探すしかないのが株の宿命。またそれがインデックスが伸びない中での出遅れ循環物色相場の特徴である。そして循環が一巡したあと回復が本物ならインデックスは再び上がるだろう。だが偽物ならそこから下落が始まる。いずれしても物色の標的がデフレ国家の日本株まで来たなら、それは循環の最終段階である・・。

(ご参考)なお、この情報は値上がり保証するものではありません。



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