2010年7月10日土曜日

責任感と国家の信用 (顧客向けレターから)

以前、映画一本の出演で優に10億を稼げるニコラスケイジがフォークロージャー(住宅の競売)をする話を紹介した。今日のNYTIMESの記事。「金持ち程、住宅ローンを投げ捨てる。」は、そんな金持ちが最も住宅ローンに対して無責任である実態が紹介されている。

彼等からすればフォークロジャーは「損切り」の感覚。自己破産とは違い、支払い能力がまだあるにもかかわらず、将来のインベストの為に資金を確保しておくことも可能だ。まあ昨日グリーンスパンも認めたように、今の米国の住宅市場は政府のサポートの上に存在する。そこではずるい奴が勝つ。よって真面目な人はこの国にもう住むべきではないということだろう。

ところでそんな米国をしり目にカナダの経済は強い。いくら米国の一人負けの様相とはいえ、地続きのカナダがそこまで活況なら、多少は米国も恩恵を受けるかもしれない。つまり米国の株式市場もドル安とのコンビで上昇相場を演出できるかもしれないと言う事だ。そのサンプルが昨年の復活劇。2009年3月、まずオバマ政権が方針を変え、5月には中国が復調した。

その中国とドル安を材料に米国の株式が上昇を開始したのはこの7月からだった。そんな中で本日はカナダとオーストラリアの経済の堅調さ、そして最悪期を脱した?欧州に、韓国の利上げの話まで聞こえてきた。これは昨年のシナリオの再現を画策していると思えなくもない。

この他力本願のシナリオが今年も上手くいくかどうかは判らない。ただもし自分が債券プレーヤーなら、米債の金利は絶対に上がらないと安心するより、この国の本質を知るがゆえ、寧ろ、自分で金利を上げられなくなった今の米債にしがみつく危険性をそろそろ感じるだろう。

現実的にみれば米国債の優位性は過去の栄光による流動性だけ。ただそれよりも、前述の金持ちの無責任な態度が最後はこの国の信用に与える影響は大きいだろう。その逆説的な例は身近にある。

成長論では否定されるが、見方を変えれば国民の責任感と、国家の信用が機能した結果が日本の国債市場だと考える。日本人の預金量が多いのは経済学だけの結果ではない。普通の日本人なら借金を踏み倒して平気な人はいない。だから皆で預金をした。ただこの国も昔はそうだった、だから米債は王者になったのだ。だが今ソレを言う人は誰もいない・・。





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