2010年7月3日土曜日

GREED IS "NO" GOOD 強欲は正しいの終焉

何を意図しているのか判らないが、今晩CNBCは1987年のアカデミー賞映画、ウォールストリートを流す。この映画ではマイケルダグラス本人も主演男優賞を決めた"GREED IS GOOD"のシーンは圧巻だ。そしてその続編は9月に封切される。オリバーストーン監督のコメントからは、新作ではかなりのウォールストリートへの批判が予想される。ただ今から振り返ると、この映画ほどタイムリーだった映画は珍しい。なぜなら、その後米国は、GREED IS GOOD (強欲は正しい)の時代を突走したからだ。

そんな中で金融危機原因究明委員会はどんな結論を出すのだろう。冷戦後という新時代、人間そのものの規律が緩む中、法制も同じ方向に進んだ。昨日はAIGのカッサーノ氏の言い分を紹介したが、そういえばコロンビア大学教授でノーベル経済学も受賞したボブマンデル教授は、2008年の金融危機の元凶として次の5人を挙げている。ビル クリントン、ベン バーナンケ、ヘンリー ポールソン ハンク グリーンバーグ、それと、ルイス ラニエリである。(元大統領、FRB議長、前財務長官、元AIG会長、元ソロモンブラザース重役)

未確認ながら教授がこの5人を選んだ理由は察しがつく。ポールソンとバーナンケは統治者、グリーンバーグはAIGを何でも飲み込むお化けに変えた独裁者。だがクリントンと最後のラニエリ氏に関してはイメージ湧かないかもしれない。恐らくクリントンは彼の時代にグラスステイーガル法を廃案にした事を言いたいのだろう。だが最後のラニエリ氏を選んだのは理由が判らない。彼は、言わずとしれたあのソロモンのモーゲージを立ち上げた張本人だ。そういえばNHKも金融危機の特集でソロモンのモーゲージ部門を取り上げていたが、個人的には彼の元凶論には同意できない。

ラニエリ氏は高卒でありながら相場観と並はずれた営業力であのソロモンの副会長までなった立志伝中の人。その時代のソロモンを紹介した有名なライアーズポーカーでの印象が強烈だった為か、評判は良くないが、所詮はAIGのカッサーノ氏と同じ立場である。それでもマンデル教授が彼を入れたのは教授がカナダ人である事も関係しているはず。現在カナダの住宅市場はリーマンショック以前の水準を更新している。元々カナダ人は堅実らしいが、カナダでは米国がサブプライムに浸っていた時も最低頭金の40%の条件は変えなかった。このカナダ人の目かすれば、住宅は「商品」にしてはならぬという信念が感じられる。それからすれば、そのモーゲージで画期的な証券を生み出した事は、実は幸福のへの近道では無かったという判断なのであろう。

一方「ライアーズポーカー」の著者であるマイケルルイス氏は、金融危機の検証で別の見方をしている。ルイス氏は、「ウォールストリート」の87年「ライアーズポーカー」の89年の頃に金融に入った我々の世代は皆が知っている一人。だがもう一度触れておくと、本来プリンストンで歴史を学び、芸術の世界を目指した彼は、純粋に金儲けの世界に興味を持ち当時のソロモンに入る。そしてロンドン大学のMBAで経済を学び直した際、王室主催のパーティーで同席したソロモン社員の夫妻の横柄な印象をその後も持ち続けながら、彼はそのソロモンでそこそこ成功した。その後ジャーナリストへ転出し、金融以外にも一昨年のアカデミー賞では複数の受賞を受けたBLIND SIDEなどを書いている。その彼が金融危機の本質に挙げたのは「パートナーシップの終焉」である。

実は銀行と証券が別れていた80年代前半まで、米国の証券会社(投資銀行)はパートナーシップ制度を引いていた。それを最初に「上場会社」に変えたのはソロモンブラザースである。ルイス氏はこの時からそれまでは従業員と一部の投資家の裁量の枠だけで勝負をしていた投資銀行が、TOO BIG TO FAILへの道を歩みだしたとしている。そういえば当時のソロモンの社長のグレンへンド氏はNHK特集にも出ていたが、番組では「我は知らん」という顔かをしていたのが印象深い。

いずれにしてもマイケルダグラスが俳優としてポリシーを曲げてまで続編の主役を引き受けた「ウォールストリートⅡ」の公開が楽しみだ。冒頭のシーンは既に紹介され、主役の彼が刑期を終えて刑務所を出る際、15年前に預けた初期の巨大な携帯電話を受け取るシーンはスートン流。株屋の息子として育ち、自分自身イエール大に入るまでは資本主義の道へ進むのが当然と考えていたというストーン監督がその資本主義の末路どう描くか、今から興味深い。今のこの国の雰囲気からは、その影響が前作以上になる可能性を感じる・・。




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