2010年7月24日土曜日

先送りの代償と目的優先の代償

本日金融市場にはいろんな話題があった。そして、結果として本日ほど米国と他の国の違いが鮮明になった日も珍しい。まず、5月のギリシャ発の欧州危機の際、悪影響を恐れた財務長官のガイトナーは、欧州の銀行にも米国が断行した「ストレステスト」と言われる金融機関の耐久力検査を行う事を各国に求めた。

そして要請を受けた欧州は、各国がそれぞれの国の銀行の体力検査を実施、本日がその結果発表の日だった。ところが、結果はテストそのものが米国からは物笑いものになってしまった。なぜなら、本来はストレスへの耐久力を図るべきこのテストで、敢えてそのストレスをかけなかったのである。

具体的には、そもそもギリシャ危機で話題になったのはソブリンと言われる欧州各国の国債の信用リスク。欧州の銀行はこの国債を大量に持ち合っている。だがこのテストでは、その商品に関しての厳密な評価は免除されたのである。つまりこれは、重い膵臓癌の患者の開腹手術をしたものの、膵臓には手をつけず、胃と腸を検査してそのまま閉じてしまった様なもの。そして胃腸は健康でした・・とのお墨付きをもらったに等しい。

これに比べると、米国のストレステストは患部を直接触ったとは言える。だが米国とてブラックジャックの様な手術はできなかった。そして輸血として大量の資金を注入した。それがFEDによる数々の救済とTARPと言われる70兆円の銀行への公的資金注入である。そして本日ニューヨークタイムスが報道したCITIなどのTARPを受けた金融機関の報酬のデタラメさは想像を絶する。何と救済を受けた銀行で、総額で2000億の不正な報酬が救済の最中に支払われたというのだ。

つまり米国はストレステストを敢行したものの、セットのはずの救済の細部では正義のかけらもなかった。それに比べれば、まだ欧州の方が個々の金融関係者に対して後の対応は厳しかった。

整理すると、状況に応じ、素早く目的を達成するためには何を優先させるか。その判断にも合理性を優先する米国と、社会の調和を尊重し、米国型の合理性だけの判断基準は受け入れられない欧州との文化の違いだろう。だがどう考えてもこの国の救済された金融関係者の巨額報酬はおかしい。

まあこの国では犯罪者でも、より大きな犯罪者を捕まえる目的で許される事がある。ソレは金賢姫元死刑囚を不快に感じる日本人には理解しがたい現状だろう。いずれにしてもこの国は目的を達成するためには何でもする。つまり、経済も、座してデフレを待つ・・という事は無い。




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