2010年7月16日金曜日

輸出の優等生

報道からは日本の梅雨は最早ジメジメなど言う代物ではなく、大型台風に匹敵するすざましい脅威であること感じる。それが温暖化によるものかの議論はどうでもよく、日本は日本列島大改造に匹敵する根本的な対応を迫られているのではないか。

ところで、NHKが流した濁流で横転した大型トラックと同じ光景が今日のシカゴにあった。「ミシガン通り」とよばれる目抜き通りはミシガン湖から1ブロック内側を南北に突き抜ける。そこにジョンハンコックなどの新旧の名だたる建物を従え、その美しさはシカゴ一だ。だが今朝のミシガン通りには、タクシーやトラックがひっくり返り、瓦礫の山はあちらこちらの状態。一体何があったのかというと、それは「トランスフォーマー3」の撮影の準備だった。

90年代の前半、ミシガン通り沿いの高層アパートに住んでいた頃、自分の部屋からブルースウイリス(マーキュリーライジング)やキアヌリーブス(チェーンリアクション)が真下で撮影をしているのを眺めた。そして最近は「バットマン」や「ウォンテッド」の大型のアクション映画の撮影でシカゴは舞台となった。その都度交通は遮断され、市民はそれなりの不便を強いられる。だがこの不便から得られる収益は大きい。

例えば撮影が長期に及んだバットマンや、冒頭で紹介したトランスフォーマー3の場合はわずか3日の撮影でシカゴ市は30億円の収益を得る。30億円と言えば文芸作品なら1作の製作費が丸々賄える金額。その金額を制作会社は市に支払う。ソレでも儲かるのがハリウッドの超娯楽大作映画である。

超娯楽大作と言えば、製作費が最低でも100億以上の作品を言う。近年はそんな作品が毎年10作前後制作され、その内数本は配給収益がメガヒットとなる500億を超える。そしてメイドインUSAの全ての「商品」で、海外でも確実に売れると計算できるモノ、は実はこのハリウッド映画しかないというのがエコノミスト誌の皮肉だ。つまりハリウッド映画は米国の輸出の優等生なのである。

そんな中で今の米国の金融市場は、政権の掲げる輸出型経済への転換を囃し、ドル安は株高につながると思われている。だが、ハリウッド映画のほかに、他国の消費者が他にどんなメイドインUSAを欲しがるのか。私にはせいぜいアップルの商品しか思いつかない。そして、エクソンやGEなど、米国を代表するグローバル企業はドル安の恩恵を受けると言われる一方、彼らは自身はできるだけ米国には税金を落とさないスキームにご執心。ならばドル安がもたらす恩恵とは本当はいか程のものだろうか。


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