2010年7月23日金曜日

三種の神器 (顧客レターから)

昔から米国が超大国であり続ける最低条件は次の三つを考えてきた。①軍事力②食糧生産力③ゴールド・・。①と②は当然の事、ゴールドは万が一にもドルが基軸通貨としての価値を失った場合でも、混沌の中でゴールドを持っている国が勝つと考えたからだ。そして今のところこの3条件で米国は盤石だ。宇宙開発に停滞感があるものの、通常兵器の優位性の解説不要、食糧はグレートプレーンズがある。そしてゴールドは以前ファイナンシャルタイムス誌が紹介したように、埋蔵量まで含めると、世界のゴールドの70%は米国にある。(因みに原油等のエネルギーも、米国は無いわけではない)

だがこのままこのゴールドが高値を維持しているのは米国にとって厄介になった。それを確信したのは昨日のバーナンケの証言だ。正直者の彼は、米国経済が「これまでにない不透明感の中にある」という表現をした。そして、再び危機が襲ったら、FEDにはどんな手段が残されているのかと迫る議員に対し、バーナンケは言葉を濁した。その時の彼の顔は暗く、昨年の頂点と比べて別人だった。

端的に言うと、だからゴールドがここまで上がったのだ。救済で大量のマネーが再び生みだされが、実態経済は思う様に回復しない。だが、大量のマネーが生みだされた事と、FED自身の信義に対する評価でゴールドはここまで上がってしまった。そしてゴールドが上がると不安は増幅され、せっかくの大量のマネーも効果を発揮しない悪循環になった。言わばゴールドは悪循環の象徴なのだ。ならその象徴をやっつければ良い。つまりゴールドの値段を下げる。まずは其処からだ。

先週のエコノミスト誌にゴールドのバブル論が掲載れた。その時は違和感を感じたが、昨日のバーナンケを観て確信に変わった。これから米国はゴールドの価値を下げる方向で動く。まずはゴールドの値段を正当化している不安には根拠がない事をあちらこちらで訴える。では昨日のバーナンケはなんだ。逆の効果ではないか。その通り。だがだからゴールドは逆に反落する可能性が高い。それはダウの1000ドル説が出た途端に株が反転した事と同じ理屈だ。

またバーナンケ自身が暗かった事に日本の債券投資家が更に自信を深めているなら、一つだけ忠告しておく。バーナンケだけがこの国を動かしているのではない。この国は国家として何を端的にすべきか、毎日優秀な人間が策を練っている。その米国の対し、日本と同じ事が必ず起こると考えるのは、預金量云々の前に、日本の政治家とオバマが同じ能力だと考えているに等しい。(因みに日銀とFEDの個々は大差ないと考えているが)

ただ最後に、だからと言って個人的にこの国に持っている悲観論は全く変わらない事も指摘しておく。なぜなら三種の神器を持つこの国を倒す者は他国ではないからだ。つまりこの国を倒すのはこの国である。

これまでも紹介してきたように、誕生から250年を掛けて構築されたU.S.A.までのこの国の人間のエネルギーは、今、D.S.A.に向かって逆回転を始めた。ティーパーティー等は選挙に向けた演出にすぎず、本質はもっと醜い。ただ優秀なオバマ政権が世界中を掛け回って体裁を整えているのでまだ目立たないだけだ。そしてその実態が出た時が、再びゴールドが買われる時だろう・・。  (D.S.A. Disunited States of America)

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