2008年12月31日水曜日

<今日の視点>ある遺稿

南九州の制空権
すでに敵の手中にあり
我らが祖国
まさに崩壊せんとす

生をこの国にうけし者
なんぞ 生命を惜しまん

愚劣なりし日本よ
優柔不断なる日本よ

汝 いかに愚かなりとも 
我ら この国の人たる以上
その防衛に 奮起せざるをえず

オプティミズム(楽観)をやめよ
眼をひらけ

日本の人々よ
日本は必ず負ける

そして我ら日本人は 
なんとしてもこの国に
新たなる生命を吹き込み 
新たなる再建の道を
切り開かなければならぬ

若きジェネレーション (世代)
君たちは
あまりにも苦しい運命と
闘わなければならない
だが 頑張ってくれ

盲目になって生きること
それほど正しいモラル(道徳)はない
死ではない
生なのだ
モラルのめざすものは

そして我らのごとく死を求むる者を
インモラリスト(不道徳)とは人は言わん。

<林尹夫 遺稿、文藝春秋09年1月号より引用>

尚、林尹夫氏は京都大学文学部西洋史科在学中に学徒出陣。
昭和20年7月28日、夜間索敵哨戒飛行中に敵の迎撃を受けて死亡。

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