2009年6月12日金曜日

10年に一冊の本

「BLACK SWAN」という本がある。著者はナシームニコラス氏(Nassim Nicholas)。彼はヘッジファンドを経験しながら他にも市場の本を書いているので知る人は知っているといった存在。そしてこの本はあまりにも訳するのが難しく、その日本語訳は不可能とまで言われた。だがついにその日本語版が今月下旬に日本で出版される。

そのナシームニコラス氏は本日CNBCに登場した。そして今の市場は「全く先を読めなかった」アナリストや学者の予想に相変わらず振り回されていると直言。そして続いて米国の財政赤字の話題において、個人的にはこの政権が発足してから水面下で模索されていたはずの歴史的プロジェクトについて、彼は偶然自分の意見としてその可能性を触れてしまったのである。

そのプロジェクトとは以前ここでもふれた。そもそもその情報は保守系の人々が集まるサイトで彼らが民主党の動向をチェックするために様々な意見が持ち込まれる中から拾ったもの。だが早くにダウの8000を予測、また時代は株から債券市場へ、そしてその国債市場では30年を超える超長期債の発行があるだろうと的確に時代に流れを予測していた。その中に2月のクリントンの訪中では現政権はDEBT EQUITY SWAP(米国債の株への転換)を中国に打診したとの情報があったのだ。

ただこんな話が表ざたになると大変だ。なぜなら現在米国債を保有する投資家がその話を嫌気して先に売りに回る。あるいは米国債の過剰流通が解消され思惑で金利が急低下する。そのどちらになっても市場は大混乱する可能性が高い。だが本日ナシーム氏は持論としてその可能性を示唆。番組の他の出演者は目が点になっていた。

では債券を持って安定的に利息を受け取っていた人が、その債券を株に変えてもいいと考えるのはどんなケースがあるか。まず破産すれば株の価値がゼロになり、債券も元金を回収できる見込みは低い。ではその債務者に成長が期待される場合はどうか。この場合はダウンサイドリスク(元金の回収率)に大きな差がない場合はいっそのこと債券よりも株に変えてその債務者の将来の成長に賭けた方がいい事もある。

そう。米国はこのシナリオを狙っているのだ。だが米国がこれからも成長すると現在の債権者に納得させるのは簡単ではない。いずれにしてもこのウルトラCが実現可能かどうかも含め、現政権が今考えている事は大体チェックが可能である。逆にいえばそれだけ今の米国には選択肢が少ないという事だ。それが社会にどんな変化をもたらすか。ヘッドラインに振り回される相場に疲れたら頭を切りえる意味でも次の世界を想像するのも面白い。その下準備に冒頭の「BLACK SWAN」は役に立つかもしれない・・。





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