本日オバマ政権は米国の歴史上とてつもない重要な変革を発表した。変革とはズバリFEDの位置づけである。ただ発表された内容はあくまでも政府案。議会の承認を経なければならないものあり、金融市場がこの変革案に反応する事は無いだろう。
そして変革だが、簡単に言うとFEDに金融市場を管理する上で必要な殆どの権限、即ちこれまでの金利調節と紙幣発行の権限に加え、市場参加者である金融機関を取締る役割まで持たせる内容となっている。この内容では米国が市場経済の看板を下げない限り実質政府より強権を持つといっても過言ではない。ただ議会にはそもそもFEDのここまでのオペレーションを良しとしない向きもある中、これ以上の権限をFEDに与える事には反対の意見が民主党からも出ている。
確かに今回の事態はFEDの怠慢が原因との意見が政権の外では聞かれる。従ってそのFEDに権限を集中させる事は政権として道義的なリスクがある。そんな中議会きっての「役者」であり、議会の金融委員会の中心人物バーニーフランクは「FEDにはどちらかというと新しい任務である取締強化を期待しており、これまでの通貨幣管理(流通量の裁量)に関しては役を緩める余地もある・・」などと、よく考えると大変な発言だが、彼のキャラクターだと今のところ意味不明で済む発言をしていた。
ところで、ここでこれまでFEDを攻撃してきた米国の保守派の立場をもう一度整理しておく。そもそも米国の保守派は米国建国の精神を今も大事にしている。その精神とは政治はジョージ3世からそして経済は当時欧州を支配していた金融カルテルから独立する事であった。当時本国英国に中央銀行は存在したが、「中央銀行」とは現代の表現であって紙幣発行を独占するBANK OF ENGLANDが元々は私企業であるがゆえに結果的に特定金融のカルテルに優位な状況を作り出していると建国の父は考えたのである。
そして米国は世界の頂点を極めるまで成長した。だがその達成において紆余曲折はあったものの中央銀行は必要としなかった。ここがポイント。彼等はこの事実から中央銀行が米国にとって絶対に必要な機関として考えてはいないのである。しかしあのロンポールでさえも現代の米国人が西部劇に出てくるコインを持ち歩いて生活する様は想定していない。保守派でさえも中央銀行の存在意義は認めている。だが保守派が主張する中央銀行は特定の人々を利さず、あくまでも国家の為に存在する「真の国家機関」であるとの条件付きなのだ。
そこで現状を確認すると、FRBはワシントンにいる議長を含めた理事は大統領が任命し議会が承認する手続きをとる。だが実質FOMC以外でそのオペレーションの根幹を握るNYFEDの人事権に議会は介在しない。そしてNYFEDの形態は民間組織のままでその株主にWSの金融機関が名を連ねる事は今は公になった。(NYTIMESが報道)この構図を今回の危機を参考に保守の主張をそのまま解説すると次のようになる。
「そもそもFEDは自らの失態で過剰流動性を創り、その結果経済が崩壊して国民は困窮した。だがその改善策は金融システムを守るという御旗の元、実質はNYFEDが中心となって株主である金融機関を救済しているにすぎない。その手段は過剰なドル札の発行であり、顛末としての通貨価値の変動を金融機関の様にはヘッジできない庶民はドルの下落(インフレ)で苦しむ・・」。保守派はこの主張をグリーンスパン時代から叫んでいるが、実際にこの通りなった事に個人的には正直驚いている・・。
そしてこの「悪行」を大統領の立場で容認、容認どころか本日オバマはバーナンケに対して最大の賛辞を送った。恐らく保守派にとって現政権は「アメリカをアメリカでなくした」悪魔の様な政権に映るだろう。だが私からすればそれはあのブッシュへの反動でもあり、今の状況はブッシュを担いだ保守派の自業自得である。そしてバーニーフランクは相変わらず食えない。共和党を懐柔させる「呟き」をわざと残した。ただ彼もこのままでは済まない事を承知している。もしかしたら米国はFEDに権限を集中させる代わりに先輩である欧州の道程を模索するのではないか。それは、英国は1946年に、そしてフランスは遡って1936年にそれぞれBANK OF ENGLANDとBANQUE DE FRANCEを完全に国営化した事である。
いずれにしてもアメリカ人ではない私からすれば、CITIとGMを国営化しただけではオバマは保守派が呪う「悪魔の様な男」で終わってしまうリスクを感じる。それでは彼をシカゴ時代から見守ってきた立場としては残念だ。だがら是非ともFRBの完全国営化を達成し、保守派に糾弾される後顧の憂いをなくす事を進言したい。
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