2009年6月24日水曜日

米国の最大の敵とは

エコノミスト誌 が毎年発表する様々の指標の一つに世界の人々の健康度がある。国民一人当りのエイズや栄養失調の割合等、アフリカ諸国が突出する項目に並んで高血圧や糖尿病などのいわゆる贅沢病の割合で突出する国がある。それはどこか。因みに米国は4位。答えはアラブ首長国連邦、クエート、サウジなどが首位争いをしており、近年はアラビア半島の産油国が上位を占める。

彼らの特徴は石油収入で税負担は少なく、国民はガムシャラに働く必要がない。労働者といえばアジアからの出稼ぎだ。だからと言ってオリンピック等の結果からも国民に積極的にスポーツをする習慣がある様子もない。そういえば今その国々ではスシがブームだというが、そんな生活習慣からは高脂血のイメージが浮かぶ。いずれにしてもそんなアラブ人とイランを構成するぺルシャ人では民衆のエネルギーは大分異なる様だ。この観点で北朝鮮やイランの情勢が騒がしくなる中、超大国として国民が消費する豊かさを享受してきた米国にとっての最大の敵を考えた。そして出した結論はそれは「国家」ではなかった。

確かに消費文化に慣れた「アラブ」に比べてイランは将来強敵になる可能性はある。だがイランをテロ国家と騒いでいるのはイランに噛みつかれた経験とイスラエルの影響を受けた米国の過剰なプロパギャンダである事は同盟国で日本人が一番知っているはずだ。ではロシアはどうか。ロシアも一度は消費からの豊かさを知った。だが金融危機でその限界が見えるとプーチンは嘗てのソ連時代の超大国のプライドの復活を目指している。それはそのまま反米感情を促進する可能性はあるだろう。だが現状のロシアはまだソ連崩壊からの復活の途上であることが今日の共和党新聞に紹介されている。

具体的には共和党は今のロシアは核兵器を実際の使用する国家として最も可能性が高いと警戒している。背景は、プーチンがどれほどの勢いでソ連復活を目指そうが、一旦崩壊した国内軍事産業の技術力の遅れは米国との間に埋められない溝を残したまま、そんな中でロシアは若者に愛国心を復活させて軍事エリートを育てるソフト面に力を入れているものの最先端の兵器の拡充はいつになるかわからない状態だからだという。だとするとこの様な状況下で決定的事態が起こればロシアは核兵器の選択をする可能性があると共和党は騒いでいる。だが論理的に違和感はないがこれも私にはプロパギャンダにすぎない。

結局米国の敵はどこかの国家ではない。最大の敵、最大の脅威はやはり「米国売り」というコンセプト(観念)が世界を支配する事だろう。この場合物理的な勝者を強いて挙げれば代替としてのGOLD。そしてソレを支配した集合体や個人がそのメリットを受ける事になる。だが具体的に米国売りのコンセプトを世界に広める力を持つのは言うまでもなく金融市場である。最近の相場から窺えるのは金融市場に再び増築された過剰流動性を現在誰も完全に制御できていない事。そしてその力が米国の敵になった場合、米国は最大の危機を迎えるという事だ。

米国は「グリーンスパンの流動性」に端を発した危機を「バーナンケの流動性」で食い止めた。そしてそれが過剰かどうかの判断は食べてからの塩加減と同じだ。バーナンケの流動性で株をここまで戻したところまでは良かったが、今はそのインフレが病み上がりの米国の消費力を減退させる脅威になった。そんな中で米国とFEDは盛んにEXIT POLICY(出口政策)を言いたがる。ただソレを受けて市場がインフレ効果かデフレ恐怖かで揺れている間は米国はそれほど心配してはない。恐らくそのコントロールは昨日紹介したPIMCOを筆頭にした「四銃士」で何とかなると考えているはずだ。米国が一番心配しているのはバーナンケの流動性が先導し、新しく生まれたグローバルの流動性が一斉に「米国売り」に回る事。その時は四銃士も自分が助かるためには逃げ出すしかない。その最大の仮想の敵に比べれば、北朝鮮やイランというプロパギャンダ上の敵国はむしろ米国には味方となる可能性もある。今日からのFOMCはその外部環境の中で粛々と進んでいる・・。


0 件のコメント: