2009年6月10日水曜日

<迷う組織と迷う相場> <一票の格差>

<迷う組織と迷う相場>
昨日はガイトナー財務長官とサマーズNECが多くの点で衝突している事をNYTIMESの記事を参考に紹介した。だがそんな二人が合致しているのは銀行経営への政府介入を限定する事である。二人ともTARP資金を入れた金融機関のサラリーキャップには反対である。この二人は90年代にWSと歩調を合わせて米国の金融市場をここまで育てた主役。従ってパートナーでもあるWSを弾圧する態度はとれない心情的な影響もあるだろう。だがそれに反対する勢力もある。まずは議会がスポンサーになって政府がTARP資金をどう使うかを見張る機関のエリザベスウォーレン女史。彼女はハーバードの教授だが過去にWSと一緒に仕事した事はない。それどころか映画SHICOやDR.FILL等の番組に反体制派から担ぎ出される事が多い人だ。そして今彼女は FEDと財務省が監査したストレステストは緩すぎるとしてストレステストの第二弾を要求した。

このエリザベスウォーレン女史に感覚が近く、銀行に対する政府の対応が甘いという点で近い立場にあるのがCEAのメンバーであるオーストン グールズビー氏。(Austan Goolsbee)彼はオバマの選挙戦を仕切った経済チームのトップとしてシカゴ大学教授からそのまま政権入りをした。そしてボルカーが担当する経済復興委員会のメンバーとしてサマーズ主導の銀行への「非介入」政策を強く批判しているという。結局オバマの経済チームの面々のアカデミックバックグランドは同等だ。だが以前にWSと一緒に仕事をしたかどうかで現在の方針が異なるという事。

いずれにしても株は一旦ここまで戻った。それは良かったとしても、戻る過程での超法規的な手法に外国からの揺さぶりが入り、「米国の売り」のリスクを目の当たりした政権の経済チームの足並みが乱れ始めたのは確かだ。ストレステストの第二弾があるかどうかはまだ未定だが、この様に方針が定まらない間は流石に能天気な株も影響を受けるだろう。そしてオバマは自分がどうしたいのかもう一度態度を決めるべきだ。彼は当初は金融機関に強い態度で臨み、3月にサマーズの意向を汲んで態度を微調整してからは株が戻るのを横目に殆ど金融と経済に関しては発言していない。だがここで株が下がり出すとそうもいかないだろう。政府が市場の最大のプレイヤーである今市場はこの政府の「迷い」を反映した雰囲気になっている。



<一票の格差>
毎回繰り返される北朝鮮への制裁方法めぐる混乱も然り、一票の格差において常任理事国に拒否権が与えられた国連の安全保障会議ほどバカバカしいモノは無い。それに比べ同じ国際機構でもIOC(国際オリンピック委員会)の一票は平等で民主的である。そしてその一票が平等だとすると、115人で構成されるIOCメンバーの出身においてアフリカ諸国が重要な役割を果たす事は間違いない。

それを前提に昨日こちらで報道された2016年の夏季五輪候補地のレース状況からはやはりオバマの影響力は大きいと認めざるを得ない。東京での開催を期待する日本には悪い知らせだが、アトランタ五輪を仕切り、現在もIOCメンバーと親しいとされるユべロス氏が内部情報として最新の状況を紹介していた。非公式ながらそこではシカゴがトップで2番手がマドリッド。東京とリオデジャネイロが同率の3位となっている。

断わっておくが五輪招致はシカゴでさえも一部が盛り上がっているだけ。全米としてのニュースの価値はない。従ってユべロス氏が米国を喜ばせるために嘘を言う必要は全くない。そんな中で以前ここでではシカゴにIOCメンバーが訪れたのが真冬、それも道がデコボコだった時だったので、思わず「シカゴ五輪危うし」とのコメントを書いた。だがよく考えると、シカゴが不利になる厳しい冬を承知でIOCメンバーが態々シカゴを最初に訪れたのは、彼らの間に「シカゴにしたい」という暗黙の雰囲気がやはりあったのかもしれない。だから東京があれだけ準備したにもかかわらず、メンバーの東京の評価が曖昧だったのはそんな背景ではないか。そして現実的にも開催地を決める平等な一票を握るアフリカ諸国にとってもオバマはヒーローだ。仮にオバマが歴訪とイスラム寄りのスピーチで中東諸国まで味方につけ、そのオバマがシカゴ五輪をプッシュすればシカゴの優位性は揺るがない。ユべロス氏の伝えるところはそんな今の雰囲気ではないか。

そしてそのオバマだが、この二日間は偶然彼を「八方美人」や「ナルシスト」と表現した。だがさすがに彼は状況を読み取り微調整をするのが上手い。今日の発言では、「TARPを返してもFORGIVEしない」と久しぶりに彼自身の強い意志を表明した。この辺りの鋭敏な感覚は盤石な共和党組織に担がれていたブッシュ本人や今の日本の首相からは感じないものだ。組織に迷いが見えた時はトップが指針を示す。当然と言えば当然。だが市場の値動きに左右されず、彼がこの姿勢を貫徹できるかを注目したい。


参考http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_members_of_the_International_Olympic_Committee


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