2009年7月11日土曜日

ワイマール共和国

私事だが妻は時より洋菓子教室を開く。そこに昨日は珍しい中国人の女性が来たという。40歳前後らしいその女性はメーカー勤務の日本人男性の妻として今は「駐妻」をENJOYする立場。だが幼少の頃は普通の中国の生活を経験したという。そして彼女が妻に話した普通の中国の生活は非常に興味深かった。まず母親は動物園の飼育係だったらしいが、その動物園では飼っていた動物が死ぬとその死体を切り分け、スタッフで持ち帰って夕飯のおかずにしたという。おかげで彼女は幼い頃からクマやサルは当然の事、トラの肉まで食べたという。そしてその動物園では毛沢東や鄧小平等の国家主席級が亡くなると、彼らに因んで名前が付けられていた動物たちもみな殉死させられたという。

そんな話を聞きながら最近の米国を改めて眺めると、大底を確認したはずの経済の雲行きが怪しくなり、ここまでに使った大金に対する責任やこれからの処方箋に対して喧々諤々の議論が始まっている。FED議長の再任を巡る話が今から出ているのはその一端だが、米国と中国のG2体制が出来上がりつつある中米国の民主主義の伝統と中国の一党支配国家主義は今後の国際情勢の中でどちらにどんな影響を残すのか。

まず米国ではワシントンに足を向けられない金融や自動車関連と、古き良き保守をめざす西地区がミシガン湖を挟んで割れている事を紹介した。現状ワシントンは東の富を守る政策と、その既得権益を守る勢力が議会では重要なポストを占めている。その政府の意向に対してバッシングを承知でPIMCOが自己の利益を優先した。私には同社は仮に国家として米国が沈んでも、自分は沈まない選択をしたと考えているが、ソレが可能なのが米国である。だが民主主義は時に国家として纏まりの弱さを露呈する事もある。ただソレは米国が未経験の民主主義だろう。ざっくり言いうと、これまでの米国は資本主義との両輪で究極的には「右肩上がりの民主主義」を経験した。そしてこれからは「右肩下がり」の民主主義がどんなものになるか。その実験段階に入ったと個人的には考えている。

ところで繁栄の象徴としての資本主義と民主主義が鼓動をはじめた頃、国家主義が一番強い瞬間があった。いうまでもなくそれは第二次世界大戦前の日独だ。だが先週シカゴにオープンしたホロコースト記念館に行き、そこの資料から当時の日独は似ている様で実は似ていない事が改めて確認された。言い換えるとヒトラーは当時世界で最も民主的とされたワイマール憲法下で民主的に選ばれたが、東條内閣は同国の優れた憲法を土台にしながらも統帥権という付属物の結果として生まれた。ヒトラーはこの民主共和国の憲法下で徐々に議席を拡大、国民の意思で権力を手中にした。そして大統領の死後、権力を統合してドイツ帝国を誕生させたのである。

ではなぜ民主主義体制だったワイマール共和国はナチスドイツへと変貌したのか。理由は困窮である。敗戦(第一次世界大戦)からのハイパーインフレと世界恐慌からの失業はドイツ国民を民主主義などどうでもよいところまで追い込んだ。道は二つ、共産(社会)主義か国家主義だった。ドイツではヒトラーを擁した後者が勝利、そしてこの国は強かった。スペインを除く欧州大陸の殆どを支配、残ったのは英国だけ。その過程で教養も理性も優れていたはずのドイツ人はヒトラーに陶酔した。そうだ。私にとっての「右肩下がりの民主主義」の象徴がこのワイマール共和国である。ただたとえ米国がワイマール共和国の苦痛をこれから味わったとしてもこの国がドイツ帝国化する事はない。寧ろ可能性としては無意識の内に「非」資本主義国家へ変貌してしまう可能性は残る。一方でその米国に組みしながらも嘗てドイツの強さ源泉だった国家主義を捨てないが中国ではないだろうか・・。


最後に、妻の話を聞いていた米国育ちの子供たちは改めて中国に対して嫌悪感を現わしていた。彼らは日本人がクジラを食べる事もいやだという。しかし思想も自由、何もかも恵まれたこの米国という環境で育った彼らが最後中国の支配下に入る可能性を私個人はどうしても否定できない・・。




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