今のアメリカの金融機関と比べれば、バブル崩壊後に日本の金融機関が受けたバッシングは相当なモノだった。ただ銀行と証券ではバッシングの内容に多少違いがあり、銀行は日本の銀行に期待される社会的責任を果たさなかった事を非難され、一方で証券は4大証券に誘導された日本の株式市場そのものが評論家からは個人投資家を食い物にする「イカサマ博打場」と言われた。そしてガリバーの野村証券はその「胴元」という金看板を背負っていると言われた。しかし相場とは基本的にイカサマ博打だ。その本質は古今東西変わらず、イカサマが定期的に明るみに出ると、誰かが代表で禊を果たす事で人々はその罪を忘れた。そしてまた欲望は同じ事を繰り返した。
ただイカサマは素人がいなければ成立しない。ならば情報とシステムの格差が潰れた今、世界中からの有象無象の参加者が参入する株や債券、また為替等の主力市場では値動きにイカサマを張る事は最早難しい。よって今の時代のイカサマとは国家戦略そのものになった。そうなると最早誰もイカサマとは言わない。そんな中で大量の素人が純粋な相場をイメージして参入したのが昨年までの商品相場だ。特に原油の先物市場は華々しかった。(コーンなどはイカサマというよりは完全にブームだった)
そもそもオイルに関する指標ほど信憑性が疑わしいものはない。以前にBPの米国のオペレーションの関係者の話を紹介したが、元々はBPやシェル等の生産者のサークル、言わばプロ同士が鎬を削った先物市場に素人が参入した事は素人にとって本来愚かしい事だった。なぜならBPやシェルは統計上の数値も提供する立場。例えるなら、FRBが純粋な市場プレーヤーとして牛耳る金利市場でそのままFEDの指標の賭けに突入するに等しい話だ。結果、BPでも$100M(年収100億)プレーヤーが簡単に生まれた。
その原油の先物市場を終にCFTC(米国の管轄局)が規制を始めるという。だが欧州の当局は同じ規制に反対している。この違いは、生産者のサークルといっても先物を使わないエクソンを抱える米国と、トレーデイング収益が重要なBPとシェルを抱える欧州とでは多少立場が異なるのだろう (最大手のエクソンが先物市場を殆ど使わない話は前述のBP関係者の話。また彼によれば、原油先物の4強と言えばBP,シェルにゴールドマンとモルガンスタンレーを指すという) 。またCFTCはスペキュレーターの縦玉を規制する事で異常な価格変動を抑えるとの建前を言う。だが本当の意図は違うはずだ。そもそもCFTCは大した役所ではない。従って不正の実態を承知していてもソレをただす政治力がこれまで無かったのである。
その象徴がブッシュ政権初期のデリバテイブ関連の部分的規制強化だろう。この時規制の対象外とされたのが金融以外では電力とOILだった。OILと電力はまさにブッシュのお膝元に直結していた。結果CFTCはその後に起こったエンロン崩壊や昨年のオイル高騰では全く無力だった。だが政権が変わり状況が変わった。ただしCFTCが主張するスペキュレーションの縦玉を更に規制する案は市場の効果を削ぐとの批判が強い。確かに現状では誰がスペックで、誰がヘッジャーなのかの業際もはっきりしない。ただ一つ言える事がある。それは仮にスペキュレーションを素人と定義するなら、その参入を規制する事で原油先物市場を元のプロ同士の市場に閉じ込める事は出来るかもしれない。プロだけならイカサマはできない・・。
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