2009年7月17日金曜日

GS回廊

本日はブッシュ政権の財務長官だったポールソンが議会証言に立った。理由は金融危機でリーマンに続きメリルリンチが崩壊しかかった時、一旦はメリル買収を表明していたBA(バンクオブアメリカ)のルイス会長の腰が引けたのをみると、ポールソンがバーナンケと結託してルイス会長を脅し、強引に買収を成立させた事が問われたのである。しかし質疑応答は途中から本題のメリルとBAの合併話から外れ、質問は混乱の中で巨額の利益を上げたGS(ゴールドマンサックス)との関係に移った。

ポールソンがGS出身である事で彼の持ち株、またNY FEDの会長と頭取の人事(共にGS出身)更に政権内の重要ポストを占める旧GS関係者の利害関係を議員達は集中的に質問していた。ところでなぜこの様にGSばかりが目立つのか。改めてこのトレンドの起点を思い出してみると、浮かんだ結論はルービンである。

GSは昔から人材面で一流だったにせよ、ここまで躍進したのはやはりクリントン政権でルービンが財務長官になって以降である。ただそのルービンは本来は財務長官の第一候補ではなかった。クリントン政権の最初の財務長官はベンツエン。だが政権発足から高齢の彼が2年で交代する事は既定路線だったらしく、私が渡米した93年には既に次の候補が言われていた。そして確実視されていたのが副長官だったロジャーアルトマンだった。リーマン出身の彼はカーター政権でクライスラー救済等に活躍。その後リーマンとブラックストーンで重役を務めた。そしてクリントン政権発足と同時に財務副長官に抜擢され出番を待っていた。ところが彼は長官就任目前で突然スキャンダルにみまわれる。代わって選ばれたのがのルービンだった。

その後アルトマンは民間で充電、選挙期間中はヒラリーが大統領になった場合の有力な財務長官候補だった。ではもしクリントン政権でルービンでなく予定通りアルトマンが政権に入っていればリーマンの運命は違っていたか。ソレは判らない。だがGSは上場を90年代後半までしなかった事が示す通り、「秘密主義が儲かる」という事を実践した点で明らかにGSはリーマンより上である。逆に90年代は上場商品のトレードでGSが強かったイメージは全くないが、冷戦が終結し世界が緊張から米国型の市場原理への収斂に向かう過程ではGSの力はまさに時を得たといえる。

そして今はその市場原理が揺らいだショックの最中だ。だがここでもGSだけが活躍している。これはブッシュ政権があまりにもイラクに偏りすぎ、金融はグリーンススパンFEDに任せた期間が長すぎた為、GSは「オセロゲーム」を完全に支配してしまい、今は市場原理が揺らぐ事態が発生しても、崩壊を防ぐためには四隅を抑えているGSを頼りにせざるを得ないという自然の成り行きである。

そして勝負は次の段階に入った。今日はオバマ政権がCIT救済を拒否。オバマ大統領自身がその決断をしたという話が流れた。これはWSと自動車の救済が終わり、今後は安易に企業を救済しないという姿勢を示す事で他の重要案件を進めたい意向の表れだ。だがこれでは生殺与奪を政権が決めるという非アメリカ的状況である。

全員を救うと社会主義。ソレは嫌だが生殺与奪を政権が決めるとなると普通は権力に逆らえない。WSでは既に四隅を抑え政権側に立つGSとその変化に素早く対応したダイモン氏のJPモルガンの評価が高い。その意味では政府の意向に背いた先のPIMCOの決断は興味深いが、このまま米国が政権主導の経済を万進すると最後にどこに行きつくか。米国の歴史をどう眺めても、ソレは第二次世界大戦前のフランクリン ルーズベルトの時代しか見当たらない。


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