2009年7月21日火曜日

もう一つの投資銀行 

その投資銀行の株主構成が一般に知らされる事はこれまで殆ど無かった。だが昨年あたりから大手メディアのフォーカスが当たるようになり、最早隠す事はできなくなった。そして今日のワシントンポスト紙によれば、今のトップ、GS出身のダッドレー氏は大株主のJPのJMダイモンとGEのイメルトが推薦したようだ。ただこの投資銀行が他と違うのは株主に配当を出さない点。利益は国庫に入る。だから一般的にはこの投資銀行は政府系機関と勘違いされている。だがそこはやはり「投資銀行」だ。実際にマンハッタンのWS近隣にあり、構内にはバーもある。コロンビア大などのMBA出身、30歳前後のスタッフがWSのトレーディングルームさながらの緊張した部屋から解放されるために集う。

確かに他の投資銀行に比べ少しばかり給料は低いかもしれない。それでもオバマ政権の閣僚の大半の年収が20万ドル以下である中、200人前後のスタッフの給料は20万ドルを超える。彼らはWSと直結して任務を行うのでそこにあまりの給料格差があると支障をきたすのだろうか。そしてこの投資銀行はワシントンで決まる政策を実際に遂行する要である。だからワシントンに向けて現場の立場に立った意見を述べる事もある。その際は実務経験のないワシントンは黙るしかない。ただ学者達はそれでは結果的に視野が目先の利益にとらわれ過ぎると批判する者もいる。実務の現場の意見を優先するのか、あるいはあくまでも机上の論理を追求するのか。どこの組織でも繰り返された議論。個人的にはここまでのその投資銀行の役割は否定しない。だが最近の人事の歪さとこの状況下でその投資銀行にレギュレーターとしての役割まで任せる事には無理を感じる。

お判りだろう、その投資銀行とはNYFEDの事だ。そして今米国では、オバマ本人への評価はともかく、各政策に対する支持率が軒並み低下している。金融のGDPが全体の4割を超えた米国では、実はNYFEDを取り巻く構造は米国の縮図でもある。言い換えるとこの銀行を探っていくと今の米国の本質が見える。だから今までは隠れていた話をメディアもするようになった。理由は二つ。国民が知りたがり始めた事。そして今の米国にはとりあえず危機を脱したという余裕がある事だ。

金融危機を脱するために様々な手段を講じたFEDは助かった金融機関からすればヒーローだったはず。だがそのFEDに対して同じ米国人でもは逆の怒りをもつ人々も大勢いる。そんな風を受けて今FEDは永年あのエンロンを擁護した著名なロビイスト雇って議会対策をしている。FEDが真に国家機関ならなぜそんな事をする必要があるのか。これも永年に渡る自民党と官僚による中央集権体制と単一のメディアの論調に慣れてしまった日本人には判りにくい米国の民主主義の一面である。






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