2011年2月25日金曜日

2012年への布石

こちらで相場をやっていると、今が大変な時代になった事を感じる。たとえば本日、米国や欧州の株が一番下った時間帯では、直前にリビアで追い込まれたカダフィーが化学兵器を使うという情報が流れた。ところがすぐに今度は彼が撃たれて死んだという情報が流れた。この間マーケットは乱高下。だがどれもこれもデマだった・・。

このようなデマが金融市場を支配するようになって久しいが、最近はその手段に新しいツール(道具)が加わった。それはFACEBOOKである。これまでは似たような道具に金融のプロの間ではブルーンバーグのチャット機能があった。だがFACEBOOKは写真なども掲載しながら一般の人をも巻き込む。事実ならともかく、意図的に嘘を流されたらどうなるのか。こんな金融市場に振り回され、実体経済が影響受けることも十分ある。まさに恐ろしい時代が始まったということだ。

ところで、この様なFACEBOOK時代を演出しているのは何を隠そうオバマ政権である。そもそもオバマ政権はFACEBOOKの威力で生まれたといってもよい。だからオバマ政権がFACEBOOKを自分のために使おうとするのは当然だろう。

そんな中本日オバマ政権は、住宅ローンの書類不備で居住者と銀行の間で訴訟になっていた騒ぎを、銀行側に2兆円の罰金を支払わせることで終結さえる強引な手段に出た。そしてその延長で銀行には住宅ローンの元本の減免までを迫っているのである。

これは家を買う時は保証人を立て、仮にローンが払えずその家を売っても借金が残るのも当たり前のリコース社会の日本の価値観からするととんでもない行為である。だが解析すると次のような効果がある。

まずこれでオバマ政権は、本来は自己責任でありながら住宅ローンを抱え返せない庶民(弱者)の味方になる。だが実際はFRB(中央銀行)が今のゼロ金利政策を続ける事で、不良債権化した住宅ローンを時間をかけて銀行のバランスシート上で償却させる事が可能だ。また昨日も触れたように、一般企業は超低金利政策の恩恵で自らはタダ同然の安いコストで資金が調達できることから、インフレのマイナス面はできるだけ消費者物価には転嫁しない体力が生まれる。

つまり、中央銀行が今の量的緩和を続ける限り、少数の金融関係者や大企業の経営者と、大多数の庶民のどちらにも受け入れられる政策が打てるというとである。ならば中間選挙では敵だったビジネスと金融界も味方につけ、2012年の選挙は勝てるという事ではないか。

このスキーム(手法)は真に96年に予行演習を経験したクリントンチームが演出しているのは間違いない。ただその時は米国も世界経済藻上げ潮だった。だが今は違う。米国は衰退し一方で後進国は勃興国になった。

この状況ではインフレは米国では抑えられても、他国(日本を除く)ではそうはいかない。そんな中で米国の共和党はこのまま指をくわえ何もしないで終わるのか。だとすると米国は新たテロの対象になる可能性を感じる。まあそのあたりじっくり観察したいところである。







2011年2月24日木曜日

熱い人



オイルに220ドル説が出ている。仮に自分が相場でオイルを仕込んだならば、世の中がどうなろうと220ドルになってほしいと願う。マネーとはそういうものだ。だが実現すればガソリンは今の2倍である。

子供の頃、母親がトイレットペーパーを探し歩いていた記憶がかすかに残っている。市場関係者の多くが若くなり、そのほとんどが実際のオイルショックの知らなくなった頃に歴史が再現されるのは運命かもしれない。

ただ米国の中央銀行が人間のそんな行為を助長する時代とは、歴史を後から振り返ると、FRB議長のバーナンケは後世でどんな評価を受けるのだろうか。

そして中東ことミドルイーストの更なる混乱を願っているのはミドル(ミッド)ウエストと呼ばれる他ならぬこの米国の中西部である。そこではブームが去り、下火になっていたエタノールブームが復活した。 やはり「誰かの災難は誰かの幸運」という構図は生きている。

そして結局このアフリカと中東の騒ぎで今一番被害を被っているのはどうやらドバイだ。バブルの象徴だったドバイは金融危機で壊滅しそうになった。だが各国の金融政策のおかげで金持ちが復活し、危機の前からの開発をすべてそのまま続けていたらしい。

おかげで建物は続々完成しているが、今ドバイの平均的な建物の稼働率は40%だという。油田を持たないドバイはオイルが値上がりしても恩恵はない。ここは巨額な借金を返せるのだろうか。

さて、それにしても今の世界情勢の主役として、アフリカからイランにかけてと、欧州ではギリシャあたりの人間が熱い。「人間が熱い」というのはエネルギーの証明だ。(冒頭の写真は本日のギリシャでのデモ)

この現代の人間の熱の構図を世界史にあてはめると、ペルシャ(イラン)とスパルタ・アテナイ(ギリシャ)が中東からアフリカ、欧州にかけて覇権を争った紀元前500年前後がふさわしい。

その頃は中国は春秋戦国時代ですでに文明国家。しかし北米には原住民しかおらず、日本や今の欧州の先進国のエリアはみんな洞穴で暮らしていた・・。

この熱は、これから輪廻として順番にそれらの地区にも移っていくのではないだろうか。


2011年2月23日水曜日

神への冒涜



カダフィーが叫んでいた。28歳でクーデターで政権を奪手してから40年。内部の裏切りを切り抜け、70年代はミュンヘンオリンピックのテロリストを受け入れ、パンナム爆破をやってのけた。

この間一度も米英と妥協せず、汎アラブ主義を貫いたのは彼だけだった。しかし米英の工作で息子を殺され、90年代に入るとトレードマークだったサングラスもあまししなくなった印象だ。そして2000年以降はまるで平和を愛する別人になろうとした・・。

この妥協があってもなくても彼の命運に変わりなかったかもしれない。ただ老人になったといえそこはカダフィー。このまま引き下がるとも思えない・・。

ところで、そんな中東情勢を踏まえ下ったのが株式市場だ。一方で暴騰したのは原油。ただ米国はリビアに大したレバレッジを有していないが、一方で利権もほとんどない。つまり一日で原油先物が5ドル高にもなったのは、米国が休みだった時の欧州の一人相撲だ。

だがオイルはこのまま下がらない可能性が高い。なぜなら、米国にとって厄介なのはリビアよりもバーレーン。バーレーンの王室が崩壊すると、サウジは多大な影響を受ける。オイル市場にとってはその方が重大である。

そもそも中間層の多さからいっても、バーレーンやサウジの王室体制は簡単には揺るがないとの見方が支配的。だが今サウジ王室は米国がどの程度バーレーンの王室に対してコミットするかに注目している。

専門家は、仮に米国のコミットが中途半端に終わり、バーレーン王室が崩壊すると、サウジは第二次世界大戦直後からの米国との友好関係を大転換せざるをえないとみている。そんな事態は今の現役の市場参加者の誰もが知らない世界である。

ところが、そんな市場に対して、本日市場専門番組のCNBCに登場した多くのファンドマネージャーが同じことを言っていた。「VOLATILIYで株が下がるのはMORE THAN WELCOME ・・」。つまり、バーナンケFEDが播いた大量の資金を抱え、運用先を探している彼らからすれば、調整(下落)こそが待ちに待っていた天の恵みなのであろう。誰も中長期の米国の株式市場に懸念を抱いていなかった。

そんな中でひねくれ者の筆者が個人的に待っている次のチャンスは「バベルの塔の崩壊」。これは旧約聖書の創世記で、大洪水を箱舟で助かったノアの子孫が、気分で天災を起こす神を侮り、神を超えようと塔を創っていく話だ。

塔は神が住むとされる高さまで迫り、塔の中のノアの子孫は勝ち誇る。だがそこで神が与えたのが複数の言葉だった。すると塔の中ではみんなが別々の言葉を話すようになり、逆に意思の疎通ができなくなると塔は簡単に崩壊した。結果、人々は散りじりになり、あちこちに国家が生まれた・・。

膨大なマネーに埋もれるファンドマネージャーの話は、そもそも米国は中東とは別次元の世界であり、中東の混乱はチャンスであるという発想である。確かに米国は中東とは違う。だが、では米国がそんなに優れているなら、今ウイスコンシンやオハイオでプラカードを持って格闘している彼らは何者なのか。

筆者からすれば、今の金融は国家と中央銀行によって救済されたにもかかわらず、FRB(米国の中央銀行)がQE(量的緩和政策)を続けるしか選択肢がない事を先取りし、完全に世の中を侮っている状態にみえる。

恐らく彼らからすれば、旧約聖書で神が与えた言葉とは、今の時代のFACEBOOKになるのだろう。ならばここでもそれは金もうけになる発想だ。だがそのFACEBOOKを使い、オバマ政権はついに神への冒涜を始めたかもしれない。

購読する共和党新聞によると、FACEBOOKによって誕生し、その力を熟知しているオバマ政権は、ホワイトハウスに常駐する4人のFACEBOOKチームに新しい使命を与えた。それは外部のネット業者と結託し、膨大な架空のFACEBOOK口座を開設するプロジェクト。目的は2012年に向けて世論をコントロールする事らしい。

共和党新聞の記事なので多分にバイアス(偏見)がある。だが個人的にはこの政権には最初からこの種のスキームの存在を否定していない。それをも含め、今の米国には己で全てをコントロールできると錯覚している事に、「バベルの塔」を感じざるをえない。

少なくとも、今の超大国米国を築いた過去の米国人には、もう少し謙虚さがあったことを筆者自身は知っているつもりだ・・。






2011年2月20日日曜日

アーティフィシャルの限界






まず添付した上の二つの写真はホワイトハウスが金曜日に発表したモノ。そして一番下は、タブロイド紙がその前日に掲載したアップル社のスティーブジョーブ会長と思われる写真である。タブロイド紙は其の日ジョーブ氏がスタンフォード大学の癌専門治療センターに入るところをすっぱ抜いたと報道した。そしてその写真をみたある医者は、映っている人間の余命は2か月とのコメントを出した。しかし翌日、政府はオバマが西海岸でハイテク関連会社のトップと会う事を報道、そこにジョーブ氏も来ると発表したのだ。そして皆が注目するなか、ホワイトハウスが発表した写真が上の二つである。

この写真を見て明らかなのは、オバマ政権はものすごい気づかいをしていること。写真はスチィーブジョーブ氏を入れているが、意図的に映していないようだ。(一枚目はオバマのすぐ左に座り乾杯の手をだし、2枚目ではオバマの肩越しに頭だけ見える)

これは本人に気を使っているのか、あるいはジョーブの健康を相場の材料にする株式市場に気を使っているのか判らない。だが政権がここまですることで米国の株式市場は今の上げ相場が保たれているのは確か。ただやはり痛々しさは隠せない。全体が上がる中で本日アップル株は大幅下落した。

ところで、米国内では政治家は仲良しごっこを続けているが、ウイスコンシンをみても、民衆には火が付いている。そしてその動きはオハイオにも広がる気配。このように、世界が騒がしい分、この国は不思議にアーティフィシャルにコントロールされている。だがソレはこの国の本当の姿(DNA)ではない。どこまで続けらるか見ものである。

2011年2月18日金曜日

続、考えるヒント

今日のNYTIMESでは、オバマは昨年の8月に特別任務を政権内の中東チームに命令していた事が報告されている。任務とは、現地の民衆の不満が爆発し政情不安が勃発した際の中東情勢をシミレーションする事。その最初の18ページの極秘リポートの存在がNYTIEMSにすっぱ抜かれたのである。そこではエジプトを筆頭に、事が起こった場合のイエメンなどへの影響が書かれていたという。同紙は既に起こったエジプトに関する資料はすでに入手している模様。だがリポートは現在も作成中で、エジプト以外は極秘だという。一見スパイ映画の世界、ただ当然記事はこの動乱が米国主導の陰謀であるような示唆はない・・。

ところで、昨年8月と言えば、金融改革法案やフラッシュクラッシュ云々で我々が騒いでいたころだ。株も下がっていた。我々がバーナンケのQE発言に集中していた時にオバマ政権はこんな命令も出していたのはさすが。比べて日本はどうか。そのころから小沢問題をやっているが、いまだ同じ話題がトップニュースである・・。

そもそもエコノミスト誌にすっぱ抜かれた小池百合子議員の総理大臣職に対する「ティシュペーパー発言」は米国ではありえない。たとえ与野党で敵対関係にあったとしても、国家元首(総理大臣は元首ではないが)の職務を政治家が蔑む事は何の国益にもならない。こちらではエコノミスト誌は必ず政治家のスタッフは目を通す。こんな事を書かれては日本の総理大臣にまじめ会う外国の政治家はいなくなる。

一体この差は何か。答えは意外にシンプルではないか。個の能力の差ではない。国家に「戦い」をしている意識があるかないかである。これが全ての出発点。逆に、それを国民に示唆できない政治では、どの政党が政権を担当しても結果は同じだろう・・。



2011年2月17日木曜日

ベースボールの異常性

カージナルスの主砲 アルベルトプーホスは、本日同チームからの8年間/180億円(保障)の契約延長の提示を拒否した。一方カブスは、日本で投げたとしても、せいぜい二流と三流の間のピッチャーであるカルロスマーマルに3年で18億円を払うという・・。

前者は他のスポーツと比べても相変わらずのベースボールの異常性を、後者はカブスの相変わらずの脇の甘さを表している。そしてこの様なベースボールに対するイメージは真に2007年ごろの再現である。

2011年2月16日水曜日

価格原理(上昇)主義 (顧客レターから)

昨日をもって米国の株式市場は2009年3月の安値から2倍なった。この間日経平均は7100円の安値が1万円をやっと超えただけ。この差は大きいが、米国ではこの間に過去の常識や原理原則にとらわれず米国の柔軟性を信じた者は、日本人がおよそ実感できない巨万の富を手に入れた。その代表はヘッジファンドのジョンポールソンという人である。

そもそも彼が注目されたのは金融危機の2008年。それまで彼は全く無名だった。ところが、金融危機では米国の住宅市場の崩壊をいち早く悟り「売り」に回った。結果、彼は多くの人が大損をした中で、個人で1000億円を荒稼ぎした。

だが驚くのは速い。2010年、彼が個人で市場から稼いだお金はなんと4000億円。この金額は、近代の金融市場が整備されてからは、会社ではなく個人が1年で稼いだ金額としては米国でも史上最高と言われている。ではどうやって彼はこの金額を稼いだのか。答えは、彼はここでも「崩壊」を予想し、的中させた事だろう。ただその崩壊とは、米国が建国以来いちばん大事してきた市場原理そのものだったのである。

ここで確認だが、市場原理とは一体何だったのか。まずそれは市場(いちば)のごとく適正価格を探る機能。そして延長で、必要の無くなったモノは消え、価値があるモノだけが生き残る新陳代謝が市場原理の本質だった。ところが、多くの日本人が知らないうちに、金融危機後、米国の金融市場ではこの市場原理が事実上終わっていた。彼は(ポールソン)はその終焉を誰よりも早く悟ったのである。

この変化を、米国は「市場原理主義」から「価格上昇(原理)主義」になったと認識している。簡単に言うと、「価格原理主義」とは値段を下げない事。つまり、フェアヴァリュー(適正価格)など関係なく、どんな時も買い注文が売り注文を常に上回る人工的な環境を整える政策を「国家が実行」する事である。

米国の株が安値から2倍になったのはこの政策の賜物だが、実践は中央銀行のFEDによって施された。その方法は量的緩和政策で国債を買い、その資金を民間の金融機関から株式市場に断続的に流す。(公式にはFEDはこのスキームの存在を認めたわけではないが、市場参加者の間では常識)多くの市場参加者は、市場原理の番人でもあったFEDが自分自身でその本質を否定し「上がるだけの市場」を作り出す事に確信を持てなかった。

ポールソンはそれ察知し、まず国家が救済しなければならない大手銀行の株を買い、また中央銀行が資金をじゃぶじゃぶにした場合の副作用でもあるゴールドを仕込み、結果的にドル安になることを見越して新興国に大量の資金を投下したのである。

恐らく、平均的な市場参加者がこの国家の方針を確信したのは昨年QE2(量的緩和)が発表され、別のヘッジファンドのDテッパー氏に触発されてからだろう。だがそこからでは4000億円を稼ぐことはできない。この様に、ポールソンとは要するに限界を見極めた人だ。彼は住宅市場の限界を見極め、それが終わると今度は米国の市場原理の終焉を見極めた。同じシナリオを頭で描いた人は彼だけではないが、相場でとことん実践したのは彼だった。

そんな中で最新のエコノミスト誌で菅総理が取り上げられていた。小池百合子議員の「日本の総理大臣はティッシュペーパーと同じ(摘まんでポイ捨)」発言が紹介され、総理大臣の権威は落ちるところまで落ちた・・としながらも、TPPへのコミットは勇気がある。と評価していた。

天下のエコノミスト誌に褒められている事を知ったら総理もさぞ喜ぶだろう。だがその日本ではGDPが縮小している。これは米国の様に、「とにかく株を上げる」目的のためには過去を否定する柔軟性とは対照に、日本が常識を打ち破れない結果だろう。だが個人的にはそれが悪いと決めつけるつもりは毛頭ない。

GDPが増えなくても、株価が2倍にならなくとも国民が幸せならいい。米国は手段を選ばず目先の目標は達成した。だがそのツケは必ずやってくる。ならば日本は他国の評価など気にするよりじっくりと国家としての方向性を見極める時。

国民は何を求めているのか、国民自身が迷っているなら、まずは世界がどうなるのかを「リスクを取って」予想し、その上で日本の総理大臣は何を目指すのかを明確にする事が重要。その上で米国に追髄するのを日本人が選択するならそれはそれで日本の運命であろう。


2011年2月15日火曜日

革命の三種の神器(顧客レター)

ムバラク大統領の隠し財産が5兆円を超えるというニュースが流れている。これはエジプト国民からすれば許せない蓄財金額だろう。だが石油が出ないエジプトで、国内の富を不正に搾取するだけでこれだけの蓄財が可能だろうか。この金額の背景には、先進国のバブル経済(不動産)にエジプト大統領の立場を利用して参加していたという話がある。だとするとどこかまでが彼の正当な資産で、どこからがエジプト国民のモノなのかの判断は難しい。

ところで、似たような名前で似たような立場だったのがパキスタンのムシャラフ元大統領だ。今ブット女史暗殺で彼にも逮捕状が出ているが、これもエジプトの動乱と無関係ではあるまい。ただ冷静に考えると、この二人が過去20年に米国に貢献した度合いは計り知れない。考え方によっては二人の貢献は、今の先進国バブル度からすれば十分に5兆円に値するかもしれない。

そして先進国の金融市場ではソーシャルメディアファンドなるモノがあちこちで立ち上がる気配。GSによるFACEBOOKに続き、ビジネスに特化したKINKEDLN と、個人的に最も使用度が高いPANDORA RADIOはすでに上場申告済み。

そんな中でこちらでは今回のエジプト革命はTWITTER/YOUTUBE/FACEBOOKの三種の神器によってもたらされたという扱いである。ムシャラフもムバラクもFACEBOOKに自分のページを持っている事は何という皮肉だろうか。

この皮肉はこの種のメディアにいずれ弾圧の形で跳ね返らない保証はない。その時は、投資家が飛びついている今がソーシャルメディアバブルの天井という事になるだろう・・。



2011年2月12日土曜日

攻撃と防御

ボクシングの井岡選手が7回目の試合で世界チャンピオンになった。知らなかったが、今日本には世界チャンピオンが7人もいるという。我々が「あしたのジョー」を見た時代が70年代。時代は貧困時代の白井義男やファイティング原田から具志堅洋高へと移っていた。ただそのころの日本はまだ豊かさへの挑戦が背景にあった。そして豊かになった時代を象徴するかの様に、バブル前後の日本のボクシングは弱かった。

その後日本のボクシングは、社会の標準からはみ出しそうな個性が活躍した印象だ。そして気がつくと、再びあしたのジョーがブーム。世界チャンピオンも7人も出ていた。まあ昔はWBAとWBCの二組織だったのが今は同じ階級に4人の世界チャンピオンがいる時代。単純に昔と比べる事は出来ない。ただ、ハングリー精神の象徴であるボクシングが強いというのは、やはり日本は貧しくなっているのだろうか。

ところで、日本には「攻撃は防御なり」という言葉がある。だが米国では同じ意味の事を言う場合表現は逆になる。「the best defense is good offence(防御を極めれば攻撃と同じ) 」間違って逆を言う人もいるが、楽観論や前向きさが強調されるこの国で、賢い人は本当は防御を重視している事の表れだろう。

つまり諺とは、その国のスタンダードをあえて逆から突く事で、正常性へ警告を与えているのである。これは相場で言う逆張り。ただソレは自分の立ち位置を知らずして使い分けることはできない・・。



2011年2月11日金曜日

東京雑感 日本人の景観

今朝シカゴオヘア空港に降り立ってみると、先週の大雪はそのまま。そして日本では気温が氷点下まで下るか否かが毎日話題だったが、シカゴで待っていたのはマイナス28度の世界だった。それでも東京は寒い、と感じたのはなぜだろう。東京では寒さを前提としない・・。そんな覚悟の問題だろうか。

つらつらそんなことを考えながら、日本での数日を思い出すと、最初に印象に残ったのはテレビというメディアの衰退だ。ニュースは連日どこも同じような話ばかり。これでは知への探求心はますますネットに頼らざるを得ない。そしてそんな中で気になったの、はNHKでさえニューヨーク証券取引所の合併話を伝えた際に、重要な本質を伝えなかった点。本質とはこの話は合併でなく買収であること。ニューヨーク証券取引所は合併するのではない。過去200年、世界の資本主義の中心地だったここが、ドイツに買収されるかどうかの瀬戸際に立たされているのだ。

仮に買収と報道されたらどうだ。日ごろ米国の現実に無頓着な日本人にももう少しインパクトがあったのではないか。本来メディアはその切り口にこそ意味があると考えるが、これでは毎日同じドックフードを食わされているだけで満足のポチと同じある。

ところで、そんな中で面白い体験もした。東京駅の丸の内出口の外を歩いていた時のこと、突然視線を感じた。視線はオアゾから道路を渡った反対側から出ていた。そこには二人の靴磨きの男性が座っており、その内の一人がずっとこちらを見ていたのだ。明らかに彼は筆者の靴に狙いを絞っていた。そしてその眼差しに引き寄せられ、こちらが視線を返すと彼は笑った。

いい靴をみると磨きたくなる・・彼はそんなお世辞を言った。そもそも夏も冬もカーフ。ただその時は確かにくたびれていた。長野の雪で黒のカーフは完全に輝きを失っていたのだ。そして途中お決まりのように天気と寒さが話題になり、シカゴの寒さを持ち出すと、靴磨きの男性はシカゴの寒さを知っていると言った。驚いて訳をきくと、彼はミネソタで冬に個展を開いた事があると言う。彼の正体は画家だった。

「赤平浩一」。その場で見せてもらった画集は素人目にもそれなりのレベルであることが判った。彼は目の前のオアゾでも個展を開いたという。父親が同じ場所で靴磨きを初め、場所を受け継いだ彼は50年間靴磨きながら絵を書いてきたという。靴磨きに必要な時間以上の長話はしなかった。ただ今度彼を見かけたら聞いてみたい。丸の内の景観が様変わりした中で、日本人の景観はどう変わったのだろう。



2011年2月3日木曜日

雷雪


「雷雪」という言葉が日本でつかわれるかは知らない。だが、昨晩のシカゴはまさにこの状況。大雪だけでなく、視界が効かない中、空では雷による稲妻が光っていた。そして地表では風速何十メールの風。これでは除雪作業もできない。

この間街の機能としては、昨日の午後3時から高速道路でトラップ状態になった人々を救出する作業が行われただけである。結果、一晩明けたシカゴは全体がスキー場の様相。そんな中でもCME(取引所)はオープンするらしいが一体何人が到達できるのだろう。

いずれにしても、スノーモービルを自宅に置いていない自分は最寄りの駅までも行く事が出来ない。そして今晩は気温がマイナス25度Cまでさがる。明日の日本行きのフライトは飛ぶのだろうか・・。



2011年2月2日水曜日

続き

昨日触れたサダト(大統領)暗殺は今でも生々しく覚えている。その時は子供、背景は良く判らなかった。だが今になってみると、暗殺を予想し、それを前提にした自伝なども書き終えていたサダト氏の最後の一年はどんな毎日だったのだろうか。ムバラクはサダトを副大統領としてずっと支えたはずだが、その人生に対する潔さはサダトには劣るようだ。

本来人間は必ず死ぬ。だが世界中で2000万人が死んだ第二次世界大戦反動として出現したベービーブーマー世代は、言うならば死の概念から最もかけ離れた人々だ。つまり今の先進国の政治経済の基盤には、大なり小なりこのコンセプトがある。そして歴史の綾で、この世代はそのまま逃げ切れる可能性もある。ただその時は、次の世代には苦難が待っている可能性が高い。逆にもし逃げ切れない場合、相場の鉄則からするとジワジワとした苦しみではなく、一瞬にして床が抜けるようなリスクだろう。まさにフラッシュクラッシュのような。

ではどうしたら株ではそのリスクがヘッジできるだろうか。投資家はそれを承知して着いていくしなかない。そんな中、日本で遊園地で悲惨な事故があった。彼はなぜ自分のシートベルトが完全には締まっていない事を告げなかったのか。落っこちたら死ぬかもしれない、まあ大丈夫か・・。もしそんな気持ちがあったなら、まさに「正常性バイアス」が裏目に出た事になる。まずは皆の中にある正常バイアスを消し去る事から始めるしかない・・。




2011年2月1日火曜日

遠い夜明け(顧客レター)

カタールでの決勝戦、知らなかったが、日本とオーストラリアの熱戦を2000人以上がスタジアムの外で待たされたまま試合は終わってしまったという。中にはサウジから1000マイルをドライブし、ホテル代に2000ドルつぎ込みながら最後まで中に入れなかった人がいた。その最大の原因は表彰式に現れたカタールのロイヤルファミリーの警護だという。中東では特別な存在の王族と世界でサッカーが持つパワー、このバランスを中東初のワールドカップ開催国のカタールは2022年までマネジ出来るのだろうか。NYTIEMS紙は同国のアジア大会運営を酷評した。

ところで、チケットを持ちながら2000人がスタジアムに入れないなど、ヨーロッパならそれこそ暴動が起こってもおかしくないが、エジプトの暴動に一番頭を痛めている国はどこか。それやはりイスラエルだ。過去25年イスラエルはムバラク政権から天然ガスの供給を安定的に受けてきた。ムバラクの前任のサダトがカーター大統領の誘いでイスラエルと妥協してから中東の軸は変わり、そのコストをサダトは自分の命で払ったが、後を受けたムバラクがサダトの方向を変えなかった事が西側とイスラエルにとってどれほどありがたかったか。

それだけ当時のエジプトは民主主義を受けいる許容力がすでにあったという事かもしれないが、今の混乱が落ち着いたとしても、混乱の前に一番勢力を持っていた政党が反イスラエルだっただけにイスラエルとして今の状況は緊急事態である。何よりも今回のエジプト急変は、年初にエコノミスト誌が予見した、ヒズボラの軍備拡大によるイスラエルとの衝突の可能性が高まる中での事。そこに先の選挙でレバノン政権が実質ヒズボラに支配される事態となっていた。

そしてイスラエルはエジプトの影響がヨルダンに飛び火する事を一番恐れているという(NYTIEMS)。確かにモハメッド以来の血筋を誇る同国の王政が崩壊すれば、サウジやシリアを含め、中東全体がイラン化してしまう恐れさえありうる。まあその前にイスラエルにとって全ての軍事作戦の前提がムバラク政権の安定だったことからすれば、作戦の立て直しにイスラエルが時間を取られる事が凶か吉か。興味はその一点である・・。