2011年2月11日金曜日

東京雑感 日本人の景観

今朝シカゴオヘア空港に降り立ってみると、先週の大雪はそのまま。そして日本では気温が氷点下まで下るか否かが毎日話題だったが、シカゴで待っていたのはマイナス28度の世界だった。それでも東京は寒い、と感じたのはなぜだろう。東京では寒さを前提としない・・。そんな覚悟の問題だろうか。

つらつらそんなことを考えながら、日本での数日を思い出すと、最初に印象に残ったのはテレビというメディアの衰退だ。ニュースは連日どこも同じような話ばかり。これでは知への探求心はますますネットに頼らざるを得ない。そしてそんな中で気になったの、はNHKでさえニューヨーク証券取引所の合併話を伝えた際に、重要な本質を伝えなかった点。本質とはこの話は合併でなく買収であること。ニューヨーク証券取引所は合併するのではない。過去200年、世界の資本主義の中心地だったここが、ドイツに買収されるかどうかの瀬戸際に立たされているのだ。

仮に買収と報道されたらどうだ。日ごろ米国の現実に無頓着な日本人にももう少しインパクトがあったのではないか。本来メディアはその切り口にこそ意味があると考えるが、これでは毎日同じドックフードを食わされているだけで満足のポチと同じある。

ところで、そんな中で面白い体験もした。東京駅の丸の内出口の外を歩いていた時のこと、突然視線を感じた。視線はオアゾから道路を渡った反対側から出ていた。そこには二人の靴磨きの男性が座っており、その内の一人がずっとこちらを見ていたのだ。明らかに彼は筆者の靴に狙いを絞っていた。そしてその眼差しに引き寄せられ、こちらが視線を返すと彼は笑った。

いい靴をみると磨きたくなる・・彼はそんなお世辞を言った。そもそも夏も冬もカーフ。ただその時は確かにくたびれていた。長野の雪で黒のカーフは完全に輝きを失っていたのだ。そして途中お決まりのように天気と寒さが話題になり、シカゴの寒さを持ち出すと、靴磨きの男性はシカゴの寒さを知っていると言った。驚いて訳をきくと、彼はミネソタで冬に個展を開いた事があると言う。彼の正体は画家だった。

「赤平浩一」。その場で見せてもらった画集は素人目にもそれなりのレベルであることが判った。彼は目の前のオアゾでも個展を開いたという。父親が同じ場所で靴磨きを初め、場所を受け継いだ彼は50年間靴磨きながら絵を書いてきたという。靴磨きに必要な時間以上の長話はしなかった。ただ今度彼を見かけたら聞いてみたい。丸の内の景観が様変わりした中で、日本人の景観はどう変わったのだろう。



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