2011年4月13日水曜日

ウォール街の妻たち

4月15日を前に、今年はCNBCで少し変わったCMが流れている。朝のショーを担当するベッキーは、派手な女性が多い同局のキャスター陣ではどこかインデイアナの田舎臭さを残す。そのせいかバフェットは彼女がお気に入り、彼女なら同行取材OK、どこにでも連れて行く。そのベッキーがCMで視聴者、つまり市場関係者に訴えているのが「税金をきちんと払いましょう」という事。4月15日はその期日だ。ただこんなCMは他局では見ないし、CNBCでもこれまで流した事はない。まるでこの局の視聴者は税金をごまかすのが当然との前提が窺われるが、国家財政が苦しい中で、彼女は毎年米国でごまかされる税金は$300B(25兆円)に上ることを紹介している。

そういえば、偏見かもしれないが、東北の被災地への米国からの募金で目立つのは金持ちではない一般の米国人の好意や或いはあまり金の本質に詳しくないスポーツ選手などだ。逆に日頃一緒にCNBCを見ている周りの米国人の市場関係者の中で募金をしたという人を誰も知らない。あの日彼らは私の日本の家族のことを気にしてくれた。だが、皆それなりに金を持っている一方で(メンバーシップだけで数億円)、今の興味は日本の復興で儲かるポジションである。ずばりこれが現実。そして世の中は、全体を見渡す立場で、人の命とマネーを割り切れる人が動かしている。つまりマネーにたけた人。ただそれは陰謀などと言うものではなく、これまでの人間の歴史が証明してきた社会の安定のために必須な格差だったといってよい。

だが今この国ではその格差はさらに拡大し、おそらく許容範囲の域を超えた。そのサンプルを金曜日発売のローリングストーン紙が取り上げるという。そこではモルガンスタンレー会長のジョンマックの妻、クリスティーの事が載っている。少し紹介すると、彼女はジョンマックの同僚の妻たちと危機後に15Mでファンドを設立。同ファンドは金融危機後にFEDが行ったTALFから220Mを調達した。そしていまだに150Mは返済していない状態だが、ここで問題なのはTALFの異常性である。

そもそも議会を通したTARPとは対照的に、財務省とFEDが行ったTALFプログラムは発足当初からデタラメさを危惧する声はあった。だが金額の大きいTARPばかりが話題になり、結局このTALFがどうなったかを今だメディアは殆ど触れていない。だがそこにローリングストーンはメスを入れた。ローリングストーン紙がこの種の話題にメスを入れたのは2度目。一度目はGSを世界に巣くう蜘蛛として糾弾した2009年だ。その記事は金融改革法案など、その後の世論に影響を与えたが、今回のジョンマックの妻の話もかなりの内容である。これもいずれ影響を与えるだろう。(参考)

http://www.nydailynews.com/gossip/2011/04/12/2011-04-12_rolling_stone_magazine_writer_matt_taibbi_unveils_unfair_investment_practices_by.html

ところで、ローリングストーン紙は1970年前後にUCバークレーの学生が始めた雑誌らしい。同校はハーバードなど名門私立が中心の全米国大学リーグの第一次メンバー。(公立ではバークレー、ミシガン ウイシコンシンの3校だけ)つまり名門だ。私事だが、そのバークレーに知り合いの米国人青年が合格した。その青年は数年前から娘の友人として家に遊びに来ていた。学業優秀なのは聞いていたが、妻が見たら卒倒するであろう場面にも遭遇し、日本人の父親としては正直困った存在だった。今年彼はバークレー以外にもシカゴ大学やスタンフォードなど、軒並み名門から入学を受理されたが、実家が学費を払えないという事でまずは海軍に行き、そのプログラムの延長でその後でバークレーに行くという。その話を聞き、自分の中で彼の評価が一変した。お金に苦労しても、彼のような青年がいずれのこの国のエリートになり、金融に支配されておかしくなったこの国を救う事を願っている。(逆のリスクもあるが・・)





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