2011年4月28日木曜日

金融GDP (顧客レターから)

英国の貧農だったジョンラルフがタバコで一儲けをたくらみ、命がけで大西洋を渡ってから、この国は世界中から豊かさを求めて集まった人々によってここまで来た。だからリスクテイクは国是である。そして多くの屍を越えて英雄が現れた。その成功を近年この国の庶民が共有した言葉がアメリカンドリーム。この国で家を持つ事は、そのまま消費社会の豊かさへの切符だった。だが昨日の各レポートでもこのアメリカンドリームが死語になった事が明確になった。庶民が持ち家を望まなくなったのだ。 「今住宅は買えないし買っても儲からない」 消費を前提とした彼らに家は明るい未来を感じさせない。この事実はどんな経済済指よりも重い意味を持つ。

一方でマネーを扱うマネーマネージャーが突出する時代が始まった。彼らは中央銀行が自ら市場に参入し、株や債券を買い支える異常性に便乗した。そして今は己が宇宙の支配者のような自信に充ち溢れている。だが彼らの多くは過去この国に登場した資本主義の英雄とは異質だ。例えばジョンラルフから数えて250年後、この国では株が暴落する最中、カーネギーが大規模な鉄工所を作り、その鉄でバンダービルドが鉄道を整備し、整備された鉄道を有効に使いロックフェラーが巨万の富を築き、また発展していく流通網を目の当たりにした駅員のシアーズはカタログ販売を思いついた・・。彼らは大きな賭けをした。だが誰も中央銀行の保証の元ではない。個性は様々だが全員が厳格な市場原理の中の真の英雄だった事は間違いない。

振り返ると今の米国の原型が完成したのはレーガン時代だ。直前に挫折があり、その挫折を克服することでレーガンがこの国を変えた。それを身近で感じるは学校やスポーツクラブで会う米国人の親たち。彼らは子供の弱点を許し、良いところを強調する。多くの日本人には甘すぎると感じるだろう。だがこれを米国の伝統と考えるのは間違いだ。彼らと話していると判るが、恐らく彼らは自身はそこまで甘やかされて育ってはいない。ではなぜ。それがレーガン時代の経験である。レーガンは厳しさを国民に要求したカーターを破った。レーガンのキーワードは単純だった。「米国には明るい未来が待っている・・。」まずは国民にこの気持ちを浸透させ、後はフリードマンなどの専門家を使い、新しい時代も演出した。そこでは実態はどうでもよい。その象徴が彼の掲げた「小さな政府」。今の共和党は金太郎飴のように言う。だがレーガンの事実は、軍事など、彼は近代で政権組織を最も拡大した大統領である。

そしてレーガンからクリントン時代にかけて家を買い、子育てをしたベービーブーマー。筆者も遅ればせながら99年に家を買い、日本人でありながらこの時代の意味を実感した一人である。この人達はどちらかと言えばリベラルでありながら、二期目のレーガンに投票し、当時はレーガンデモクラティック、今はクリント二アンとも言わる世代だ。今この世代が中心となって米国のかじ取りをしている。バーナンケもその一人。彼の今日のスピーチでこの国の歴史が代わるほど彼は大物ではないが、この世代がこの国をどうしたいのか、その象徴にはなる。

そんな中で米国は別の意味でも初めての経験を迎えている。ソレは他国から抜かれる事。既に製造業では中国に抜かれたといわれる中、最新の調査ではGDP全体でも2016年に中国に抜かれるかもという意見が出た。ただそれでも金融は余裕だ。CNBCで自信満々のマネーマネージャーは、中国の金融GDPは今の時点で世界の2%に過ぎず、世界の金融GDPの40%を仕切る米国は安泰だという。「金融GDP」。コレでわかった。レーガンが今の世代に残した未来の希望は金融GDPだ。この尺度なら米国の優位は揺るがないし、また中央銀行が存在する限り、理論上そのGDPには上限がないのではないか。そしてこの世界の尺度ではまだまだモノはCHEEPである。ならば今の米国が主導するこの世界を生きるためには発想の転換が必要。ちょうどそれはレーガンが登場した時の様な・・。


<レーガンとは誰か>

シカゴから車で西に2時間、デイクソンという町がある。レーガンはそこで育った。少年時代から酒を知るちょっとしたワルだったが、一方でライフセーバーとして7年間に77人の人を救った。そして最初の仕事はカブスのお抱えキャスター。ところがカブスがキャンプでLAに滞在した時、ガールフレンドの紹介でハリウッドを訪ねる。転換点だった。そしてここからが彼自身が自分を「変節の男」と認めるコンバージョン人生が始まる。俳優としてはハンサムすぎて?二流どまり、愛国心は十分だったが近眼すぎて米兵と日本兵の見分けができず戦場には行けなかった。代わりに軍による戦争映画の主役になることでハリウッド映画にはない意図、つまり大統領に向けて演技の人生が始まった。そして変節は、戦争が終わり俳優協会の委員長になってから顕著になる。ハリウッドに赤狩りの嵐が吹いたころ、自分は協会代表を務めながら実はFBIのスパイとして国家に協力した。また政治家としてもニューデイール政策に共鳴して民主党員としてスタートしている。その彼が一貫して変わらなかったのが反共の姿勢だ。変節を厭わない彼のこの拘りが、やがてトルーマン アイゼンハワー ケネデイー ジョンソン ニクソン フォード カーターの誰も達成できなかったソ連打倒の米国の目標を実現させる。また経済面で彼に多大な影響を与えのがGEの専属セールス俳優として新商品のTV広告に出続けた事。彼はここで演技を通して「消費者との対話」の重要性を学んだ・・。(HBOレーガン参照)では一体レーガンとは、どこまでが演技どこが本当だったのか。身近にいた誰もが判らないまま魅了されたという。まあそれが米国の大統領の本質なのだろう。だから今彼の顔はマウントラシュモアの次の顔の候補である。だが、レーガンによって楽天的への変節の効果を知った今の米国が目論む変節の先は、ソ連を倒した後のあの時の様な明るいモノだろうか。この見極めは、米国を追随する日本にとっても非常に重要な課題である・・。





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