冒頭の写真は大手ゼネコンが90年代から、直近では2004年にかけて描いた未来の東京の姿。だが、こんな姿が実現する前に、首都東京はその機能を当然のごとく維持できるのかどうか。より現実的な課題がそこにある。そこで参考までにこの国の首都の話をしたい。
独立後、米国の首都がワシントンに決まった時、既にニューヨークは圧倒的な街だった。にもかかわらず首都はなぜワシントンに決まったのか。建国の父が激突したこの話の詳細を解説するとここでは収まらない。だがポイントとして、入植の歴史からも、街の機能からも、ニューヨーク近郊に首都を置くことを最後まで主張したのがあのAハミルトンだった事が重要だ。彼は金融の重要性を説き、中央銀行の設立でも他の建国の父と対立した。結果、建国において最も優秀な人物の一人でありながら、初代財務長官を務めただけで、大統領になることなく決闘で死ぬ。その彼が妥協の条件にしたのがNYを含めた北部の負債の救済。つまりハミルトンはNYの首都をあきらめる代わりに、他の州にNYの借金を押しつけることで実利をとったのだ。
映画「ウォールストリート2」では、財務省に集まり、リーマン後の処理を議論するWストリートの経営者の合間で、オリバーストーンはこのハミルトンの肖像画を敢えて映す。このシーンの意味を理解できればかなりの通だが、結果的に金融の街のNYを救済し、その負担を平等に全米の納税者に分担させたガイトナーやバーナンケにとってハミルトンは先生である。そしてハミルトンの偉業は10ドル札の顔として報われているが、今のDCの場所は折衷案としても、利便性という合理性にとらわれず、新しい国にはシンボルとして新しい場所の首都が必要であるという考えを実行したGワシントンやJマデスンのフェデラリストの気概も相当なものである。
では、新しい国づくりを掲げる日本に首都機能を東京から移す覚悟はあるのだろうか。何でもかんでも米国のまねをする以上、首都の考え方も真似てほしい。また首都移転に躊躇するなら以下のWEBは必見である。これは昨日のワシントンポスト。ここで米国の科学者と京大の教授は、公式には発表していないものの、あの地震でこれまでに蓄積されたエネルギーは去ったと考えるの間違いで、地震をきっかけに日本の地盤は複雑骨折?の状態になった可能性があり、その場合はこれから10年以上をかけて固まるまで地震を繰り返すとしている。
http://www.washingtonpost.com/national/strain-from-japan-earthquake-may-lead-to-more-seismic-trouble-scientists-say/2011/04/11/AFLGz9KD_story.html?nl_headlines
実は全く同様の分析をブリタニカの科学者が地震当日に米国のラジオで披露していた。実情を踏まえて敢えてその事をここでもブログでも触れなかったが、ワシントンポストがこんな記事を載せた以上は最悪を前提にする覚悟が必要だ。そして上の記事で彼らが心配するのは東京の位置である。詳細は譲るとして、地震で近代建築の耐震強度は証明されたが、あまりにも東京は集中しすぎた。その東京をここでは「日本の最高傑作」としてきたが、首都機能がマヒしたら場合の二次災害のリスクはあまりにも大きい。
そんな中、どさくさの中で石原都知事が再選されていた。個人的に好きか嫌いかで言えば石原氏は好きだ。ただそれは都知事としてではなく、彼の個性が貴重だと感じたからだ。だが石原氏も80歳が目前。現職有利の状況だったとはいえ、東京には他に人がいないとしたら、やはり「東京は売り」だろう。いずれ市場では「東京売り」VS「それ以外買い」が始まるはず。逆に、石原氏に代表される「東京は例外・・」「東京が死んだら日本が死ぬ・・」などとこの期に及んで日本人が考えているなら、それは間違いなく「日本売り」である・・
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