2009年2月21日土曜日

シカゴ革命

経済専門のCNBCの債券リポーターのリックサンテリ氏は彼が日系ハウスに在籍した頃からの知人である。そして今も我々のスタッフの送別会に出席してくれる気さくな男だ。その彼は昨日からCNBCという枠を超えて米国のメディア全体で話題の人となっている。理由は昨日の 債券市場リポートの中で、今回の住宅救済案に対し「大統領よ聞いているか。我々は収入を超えた豪華な家を建てそれでローンが払えなくなった隣人のため生きているのではない。これ以上社会主義政策を打ち出すなら、我々シカゴ人は6月に資本主義信奉者を集めてシカゴでTEA PARTYを開催する。」と叫んだからだ。ただこれはどう考えても本来の彼の仕事である地味な債券市場の報道からすれば完全な逸脱行為。また救済案の内容と照らし合わせても反論内容は事実より感情論に近い。しかしその反響を見てNBCは何度もそのシーンを流して意図的に反響を広げだ。結果本日はNBCとは無関係の新聞まで彼の叫びを取り上げている。

遂に米国でも逸脱行為がウケる時代が始まった感がする。そしてこれは予想した危険な兆候の始まりだ。オバマ政権が始まってちょうど一か月。しかし既に不平不満が爆発寸前になっている。結果市場はこの混乱においてGOLDが主役。よってGOLDがホットな限り株の反転は無理だ。ただそのGOLDも本日1000の大台は確実。ここで利食いが出れば株は反転するだろう。

ところでリックが「CHICAGO TEA PARTYを開く」とのレトリックを用いたのは勿論米国独立の切欠となったBOSTON TEA PARTY(ボストン茶屋事件)を意識しての事。レボリューション(革命)は大袈裟だが、オバマがシカゴから出たにもかかわらず、リックに代表される強硬なシカゴの保守派の存在は何を意味するか。それはシカゴの特徴である個人でリスクをとる人々の怒りだ。ご存知の様に金融の街としてのシカゴの本質はマーケットメーク。そしてこの機能を担っているのは基本的に個人である。彼らはボストンのファンドやNYの大銀行のように最後に損失を投資家や国家に転嫁できない。ただ現実それが起きているのが今の政府主導の救済案である。

そんな「他人のふんどしで相撲を取る連中」に対して一線を画すプライドがリックサンテリの怒りだ。一方でCNBC自体もこれまでウォールストリートを中心に報道してきたので今は矛盾を曝け出している。なぜなら金融業界全体としては好調時は資本主義の原則を掲げて規制緩和の旗振りをし、今は逆に政府の救済案は物足りないとゲイトナーに噛みついている。この矛盾を己で認めない様を見ながらあのザッカリーカラベラは「実はCNBCの時代は終わっている」と評した。彼は正しい。いずれにしてもこの彼らの時代の自己否定(反省)が完成しないと株の復活は無理だろう。

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