英語の言い回しで「CURE WORST ILLNESS」というものがある。この元々の意味は、主語を立てて「病気は一番悪い部分を最初に直せ(取り除け)」という意味だったらしい。だが最近は特に共和党関係者が「CURE(MAKE THE)WORST(OF)ILLNESS」と、CURE(治療)を主語にして別の意味で使うようになった。この言い回しだと「悪い部分に無駄な治療をするとかえって病気の完治を遅せるか、または更に悪化する」との意味合いになる。米国経済はではどちらが正しいのか。この「堂々巡り」に結論が出る時が近づいている・・。
ところで現在の米国は大まかに3層に分けられる。まずは金融危機を引き起こした張本人の金融機関や市場関係者並びにバブル経済の恩恵を受けた人々。これを「A」とする。そして「B」属する人は「A」の人程の恩恵は受けていないがこれまで自己(責任)で固くビジネスを展開し、それなりに繁栄を享受した人々だ。彼らの多くは今苦しくなった。だがそれでも税金やローンを払う原則を守っている。最後に「C」の人々。ここは元々下層だった大多数に、ブッシュ政権で中間層からすり落ちた人の集合体だ。「C」に属する多くは自分を弱者と考え、税金を払っていない。また「A」と「B」の中間もある。強いて言うと私自身とシカゴの同業者はここに位置する。ここを「AB」と呼ぼう。そしてこの区分けを所得税の納税分布から主観で整理する。するとそのイメージは「A 5% AB 15% B 40% C 40%」となる。
そんな中で先週リックサンテリ氏がシカゴ革命を提唱した背景は、彼を含めてシカゴには「AB」か「B」が圧倒的に多いからである。中西部の保守派は自分は苦しくとも我慢する中で、これまでの政権の救済案は弱者の立場を逆手にとる「C」と、混乱の元凶でありながら政府から有利な条件で救済案を引き出そうとする「A」 に対して甘いと考えてきた。だから彼らは「A」と「C」を「米国の病巣」と見下し、怒りを込めて「CURE WORST ILLNESS」と叫んでいるのである。そしてこの怒りに対し、政府は「怒りで問題は解決しない」と言い続けた。これがここまで米国で起きてきた金融救済案をめぐる堂々巡りの本質である。
ただこの「堂々巡り」は相場には適度な刺激を与え、勝てるトレーダーには都合が良かった。また、これまで様子見だった大手インベスターの一部も、市場の材料が「堂々巡り」であると見切ってからは、債券市場でも相場は行ったり来たりするだけである事を見越した取引をするようになった。これが最近の市場の雰囲気だった。だが、本日はこの構図にもおぼろげながら変化点が見えてきた。本日オバマ政権は遂にストレステストの具体的な内容を提示し、其れを期間を定めて実行に移す事を宣言した。 そして その結果一時的に株がどう動こうとも、それで政策が左右される事はない意志を一部の信頼に足るマスコミを通して市場に流し始めたのである。
ただオバマ政権はここまで中途半端だった事は否めない。ではなぜ政権はここにきて覚悟を決めたのか。実はあるイベントが迫っている。それは4月の金融サミットだ。本日NBCのワシントンリポーターは冷静に指摘した。オバマ政権はG20の段階になっても金融問題で今の堂々めぐりを続けていた場合、米国は本当に他国から見放される可能性を意識し始めたという。これは非常に重要なリポートである。要するにオバマ政権が遂に世界に向けてその「覚悟」を表明する時が来たと考えればいい。逆に言うとここから先も市場の周りで同じ堂々巡りを騒ぐ人がいるとすればそれは覚悟が出来ていない証拠。どの道その人たちが生き残る事はない。従って彼らの話に惑わされる事も愚かである。
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