2010年1月20日水曜日

余裕の言葉の復活

今日の株高の後、株式市場からは久しぶりに「GRIDLOCK」(物事がからまって停滞した状態)という言葉を聞いた。ブッシュ政権2期目の中間選挙で民主党が大躍進した後、国家体制が政権は共和党、下院が民主党になった時、金余りの金融市場では債券のイールドカーブを「コナンドラム」(グリーンスパンの言葉)そしてジリ高が止まらなかった株式をこの言葉で表現した。という事は、今日のマサチューセッツの選挙結果に関わらず、11月の中間選挙で共和党が躍進する事を市場が織り込み始めたという事でもある。

2004年以降、過剰流動性が顕著になる中、金融市場はクレジットに「サブプライム」の魔物を生みだす一方で株式相場にはジリ高の正当性を求めた。その一つの答えがこの「GRIDLOCK」だ。そして今、最高値を更新中のメキシコや南米の株式市場にサブプライム同様のバブルを感じる一方、危機から僅か1年で再びこの言葉に正当性を求め始めた金融市場をみると、バーナンケがバランスシートを3倍にしてまで生みだしたこの流動性の価値が一体何だったのか。それを問われないまま米国がこのまま済むとはどうしても思えない。

そして政治が「GLIDLOCK」である事に危機意識を持たない米国はあまりにも歴史感覚が無さ過ぎる。何度も言うが、国力が右肩下がりになってしまった後の民主主義は醜い。政治は衆愚政治にならざるを得ず、何も決まらないまま右往左往するだけだろう。チャーチルは「民主主義という政治形態は決して理想的ではない。だが、独裁体制や共産主義よりもましだ・・」との有名な言葉を残した。今の米国にはチャーチルほど達観した政治家は見当たらないし、また民間もこれまで優秀とされた人はまだ「金儲け」の領域を抜け出していない。それがこの国の最大のリスクである。

ところで、社会的インフラがある先進国なら何も決まらず停滞する妙を「GLIDLOCK」などと言っていられるが、貧しい国はそうはいかない。そして何も進まない状況が稀に見る危険な状態になりつつあるのがハイチだ。ハイチではこれ以上援助が遅れると被災者は人から獣に変わるリスクがある。この危険性は四川省やスマトラ沖の大地震後の災害では感じなかった事だ。日本の報道からは「神戸の経験」を活かしてなどと悠長な言葉が聞かれるが、今の状況ではハイチへ派遣された医師団やNPO関係者は小泉首相によってイラクに派遣された自衛隊員の10倍の危険がある事を認識しなければならない。そしてその危険性を感じた米国が本日物資よりもまず海兵隊2000人の派遣を決めた事が示す様に、日本も一刻も早く援助団の安全を守るための自衛隊派遣団を増員すべきだろう・・



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