2010年1月26日火曜日

偽ゴールデンクロス

ここ数日バーナンケの再任問題で揺れている株式市場ではあるが、昨年3月の大底からこれだけ戻ればこの国でも危機を忘れた言動が出るのも当然である。そしてその回復はバーナンケFRB議長とガイトナー財務長官が主導したものだ。そんな中今日まで私はある重要な事実を知らなかった。それは何か。まず2000年と2010年を比べると、米国の株式指数が全く上昇しなかった事が判る。要するにこの10年間は正しく銘柄を売り買いしないと儲からなかったという事だ。ソレは知っていた。だがソレが米国史上で初めての現象であるという事を今日まで知らなかった。株価が1990年の1/3の水準に留まりながらそれなりに国が成り立っている日本からすれば、この米国の状況は驚くに値しないだろう。だが歴史重視の自分としては重大な見落としだった。

元来変化の激しい現象面にとらわれず、本質を考えるようにしてきた。だが10年という長さで物事を考える事は難しい。そんな事が出来るのは学者ぐらいだ。しかし本日これが米国の歴史で初めて起こった現象である事を知り、これがアクシデントではない事を確信した。これはチャートでいう「偽ゴールデンクロス」である。「短期波」は時の政府やFEDが動けば変えられる。だが10年という長期で起こるモーメンタムは一人の大統領やFED議長によって方向性が変化するものではない。今はバーナンケによって一時的ゴールデンクロスが起きた状態だ。だがこのゴールデンクロスが偽物なら、それは国家として長期低落傾向の前兆でもある。

(注)ゴールデンクロスとは短い周波の平均値曲線が長い周波のソレを上回り、それを起点に実際の株価が上昇するパターンを言う。だが同じ事が起こっても株価が上がらない事があり、その場合(偽ゴールデンクロス)は寧ろ株価の大幅な下落傾向の前触れになる事が多い。

そもそも私自身は2000年を前に「米国の2000年頂点説」を唱えた。しかし結果は間違っていた。振り返るとその要因には9/11とステロイド経済へが挙げられるが、この二つの要因も米国の二つの支配者層、即ちそれは「軍産複合体」と「金融カルテル」の最後の手段だったのかもしれない。そして冷戦後はどちらかのカラーに染まってしまった議員はブッシュのイラク侵攻を止める事はなくまたクリントンが提案したグラスステイーガル法の廃案に賛成をした。しかし事態が失敗に終わると政治はポピュリズムという民主主義の悪癖を抜け出せない。そして建国の父が残した見事な民主主義の形態も、国民の資質が変わると機能しない例が上院のフィルバスター制度だ。60年代まではフィルバスターは法案の6%がその対象だった。だがブッシュ政権後は法案の70%がフィルバスターにさらされる。これでは2大政党制という単純な構図の中、議会情勢は激しく変われど大統領は何もできない。そして国が動く時は9/11か金融危機というショックドクトリンだ。

いずれにしてもこれからも個々の現象に市場は敏感に反応するはず。よってオバマ政権が新たに繰り出す刺激策にも市場は反応するだろう。だが米国がいくら永遠の成長神話を信じたくとも必ず真実を知る時が来る。それは中国や南米の成長を先取りしたバブルが弾ける前の住宅市場の再びの下落が切欠ではないか。この絶望的状況に初めて米国は自らの現実を悟る。この時バーナンケはどうなるだろうか。過去の歴史では国家はそんな時に「全体主義」が「共産主義」の両極端に別れた。米国とて例外ではない。第二次世界大戦ではフランクリンルーズベルトのもとで米国も全体主義に傾いた。ルーズベルトがヒトラーや東條と違う点はその戦いに米国が勝ったという事だけである。








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