2010年1月21日木曜日

ドイツ型への回帰

昨秋NBC放送が共催し、著名投資家のWバフェットと、マイクロソフトのBゲイツがコロンビア大学の学生を前に講演した際のビデオがこちらでは何度も再放送されている。昨日もマサチューセッツの上院選挙の結果を待つ間もCNBCではそのビデオを流していた。

個人的にバフェットにもゲイツにも全く興味がないが、しかたなくその再放送を眺めていると、いろいろな質問の後である学生が「米国の資本主義はこれからも大丈夫か?」とバフェットに質問した。そしてバフェットの答えは「米国の資本主義は過去150年も機能してきた。だからこれからも大丈夫・・」だった。何とピュアな反応だろう。この単純な答えを改めて聞くと、あのバフェットをしても結局米国は「経験主義」の国である事が改めて感じる。

さて、その米国よって開国を迫られ、英国から富国強兵の必要性を教わった日本は国家のシステムに関しては「経験主義」を否定したビスマルクのドイツから学んだ。この組み合わせの妙が明治の日本の近代化が成功した背景である事は有名だが、当時のドイツと米国との違いは元々勤勉である国民を健全な官吏官僚が正しく導いた時の成果をドイツが実証したのに対し、超大国への道程にあった米国は民主主義という回り道をしていた事だと考えている。

そして米国の民主主義と市場原理の資本主義は結果的に両輪として機能し大輪の花を咲かせたが、(それを体現したのがバフェット。彼が天才たる所以はバフェットは米国の成長という必然に合わせて余計な事をしなかった点。だから彼が~をしたと、特別な手法を持っているがごとく周囲が書いた本を読んでも意味は無い。)しかし今や先進国で市場原理といえる国家は実質皆無。ならば、結論からすると市場原理を国是としなくなった米国では民主主義は嘗ての様な効果は期待できない。よって日本ここから先にの米国から学ぶものは少ない。むしろ国民の気質が似ているドイツを見よ。そしてその最たるは政党政治の在り方だ。ドイツは2大政党制を敷いていない。

米国民は昨年オバマを選んだ。だがそのオバマが最も力を入れた健康保険法案はオバマ政権が金融救済を優先したために国家財政が破綻寸前になり、その財政を更にに悪化させるとの共和党の宣伝の前に破れ去ろうとしている。ただ実態は国民の大半は複雑なオバマの保険法案の詳細を理解していない(NBCジョンハワード氏)と言われる中、現状への怒りから反発しているのである。

これはオバマにとっては皮肉な結果である。なぜならそもそもブッシュ共和党が規制を怠り、イラクにかまけて彼らを野放しにした為に金融が暴走して危機が起こった。そしてその後始末をさせられたのがオバマ政権のこの1年。しかしオバマ政権にとっては最も大事な改革を目前にしながら、現状に不満を持った国民が敵側 になびいてしまった。見方を変えればこれは2大政党制という多様性にかける政治体制の側面でもある。

この米国の政治情勢の不安定さはバフェットが経験した中長期の成長を前提にした民主主義と資本主義の両輪の回り道姿と同じではない。端的に言ってバフェットはいい時代に生まれたのだ。そして国力が下り坂での2大政党制がどんな姿になるか。これから米国は初めて体験する事になる。これは世界にとっても未知世界だ。その前に日本はこの2大政党の弱点に気づくだろうか。まあ丸の内オアゾの丸善の入り口にバフェットの本が山積みになっている間は無理だろうが・・。



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