2010年1月28日木曜日

金融を守る人と市場を守る人

そういえばこのイベントも冷戦後の産物。だが昔のオーラは失せてきていると感じるのがダボス会議だ。ただそれでも今年はそれぞれの政府から規制強化の圧力を受けている金融機関のトップが強調戦線を張るべく集まっている。この会議を大手メディアで唯一中継しているCNBCには本日バークレイズのダイアモンド会長が登場し、米国政府に対して米国単独で金融に規制をする愚かさを説いていた。彼は米国だけが規制を強化すれば、米国の市場は細り参加者はロンドンやシンガポールに行くだけ。それは米国の利益にならないと説く。これはグローバル金融機関のトップとして偽らざる本音だろう。そして今までのオバマ政権ならガイトナーやサマーズが同調するはずだ。また国益を考えればそんな愚かしい事を米国がやるはずがないと大多数の金融マンが考えるだろう。だがこのままではダイアモンド氏の意見が通らなくなる可能性を個人的には感じる。その理由は米国の金融の発展の歴史にも起因する。

ソレを紹介する前にまずこの国の成り立ちで多くの人が勘違いしている事を指摘する。それはこの国がその名の通りUNITED STATES OF AMERICAである事。これはこの国が州の寄せ集めであり、今でも中央が州を支配している概念は薄い事だ。先進国でこんなカルチャーを維持している国を他には知らない。米国は英国から独立した13州に多くの場合それぞれの州が民意を確認しながら合衆国に参加していったが、ハワイやアラスカを除いても大陸全体が合衆国になるまでには100年程度かかった。そしてこの過程で金融は地域型になり、全体を網羅する大きな金融組織は出来なかった。幸か不幸かこれがこの国では間接金融よりも直接金融が発展した背景とされている。そして自己責任である以上は過度な規制もしない所謂「WIN BY SWORD, DIE BY SWORD」のカルチャーが育った。だが時代と共に金融の規模が拡大、そしてFRBが誕生後は適度に規制も強化された。ただ規制は遅れがちなり、その度にバブルは生まれては壊れた。だがそれでも原則は維持された。ところが冷戦後の頂点においては適度なところでバブルを崩壊させるこの国の防御作用のDNAが失われた。結果、金融危機ではWIN BY SWORD, WIN BY GOVERNMENTという処置をせざるを得なかった。そしてその最大の理由が世界中に張り巡らされた金融ネットワークだ。

だがこの国には昔のDNAが残っていた。それを簡潔に表現するなら市場と金融を分けて考える事。市場は守るが金融カルテルを守る必要はない。これがTOO BIG TO FAILを否定する根源。だが世界の今のスタンダードからは現実的ではない。ただオバマ政権の救済劇は米国が忘れていた金融に対するDNAを呼び覚ました。そんな中で金融はロビー活動に忙しい。ダボス然り。彼等は金融と市場を同一視させ、株の下落を人質にする事で自らの利益を離さない。そしてそれに踊らされるのがクリントン時代からの民主党議員だ。彼等と保守の差が明確になった今、この先は民衆がその本質に気付くかどうかがポイントである。

ただまだ金融側は有利である。なぜなら既に救済がなされた今、反動としてのこのパージを乗り切れば、共和党が盛り返しても次は規制が少ない天国が待っている。だが神様そんな優しくは無い。流動性過多の今の金融市場はまさにバベルの塔の様相である。




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